神の気まぐれ(ヒカルの碁逆行コメディ)     作:さびる

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13.親、おや、張り切り過ぎかな

春休みの家族旅行から帰ってきたあかりはビックリしました。

 

「ヒカル君、囲碁、習ってるんですか?」

 

ヒカルといると、驚くことが多いよね。

お習字の時も驚いたよね。もっとも、おかげでお茶とお習字は、私も得意になったわ。

それでも囲碁でしょ。ヒカルのおじいちゃんがやってるあれでしょ。それって面白いの?

でもおばさん、何か張り切ってない?

 

美津子はあかりの母親に話していました。

「碁をやると集中力がついて、学習能力が増すらしいのよ。それにヒカルもやり始めたら、嵌ってるみたいなの。」

 

あかりはヒカルの部屋を覗きました。

「ヒカル。碁やってるの?あれ、それって碁盤?」

「うん、折り畳みの碁盤。貰ったんだよ。」

 

ヒカルは少し古びたそれに、石をペたっと押し付けました。

「今何してるの?」

「うん。石ってさ、こうやって、この指とこの指でもってこうおくと、かっこいいんだよ。」

 

あかりにはあまり格好良く見えませんでした。

「ちょっと私にもやらせて。」

あかりは石をつまみあげました。なかなかいい感触でした。

「こう?」

ピシッと、あかりは碁石を打ちつけました。

 

「うん。すげえ。あかり。そうだよ。」

「私、ピアノやってるし、指動くからかな。ねえ、ヒカルは何で碁をやることになったの?おばさん、張り切ってるよね。」

 

「じいちゃんにできないって言われてるからな。今にじいちゃんをコテンパンにやっつけて、あっと言わせてみせるよ。」

 

そうなんだ。

あかりはあっさりと納得しました。

ヒカルって負けず嫌いのところあるもんね。

 

ヒカルはとりあえず、あかりと石取りゲームを始めました。

「何だか、単純なゲームじゃない?これって。」

「うん。そうなのかな。これはまだ碁じゃないけれど、こうやって石や盤に慣れていくといいんだってさ。」

 

そのうち、あかりは毎日ヒカルの家に通って、碁盤で遊ぶようになっていました。

 

 

今日は、囲碁教室の日です。

白川は、機嫌よく家を出ました。

囲碁教室を引き継いでから、一年半経ちました。

 

「君は、結婚しているし、きちんと時間の決まった仕事はいいんじゃないか。」

先輩はそういう、何かよくわからない理由で、この仕事を譲ってくれたのですが。

要するに阿古田さんを扱い兼ねて、僕に押し付けたんだ。

僕はこの仕事は好きだ。楽しいよ。

 

二点を除いてね。

阿古田さんを何とかして下さい。

若い人も教えたい。もちろん中年熟年も悪くないけれど…。

 

白川が講師になって初めて若い子が入会してきたのです。

三か月前のことです。

よくよく話を聞いてみると、親が押し込んだのでした。

 

あの時はがっくりきたけれど、でも違った。僕は運が良いんだ。

 

白川は、大人と対局しているヒカルを眺めました。

 

進藤君のおじいさんは、一体どんなやり方で碁を教えようとしたのかな。

さじを投げられた子どもと聞いて、心配していたけれど、とんでもない。

呑み込みは早いし、恐ろしく勘のいい子じゃないか。碁に対する相性がこんなにいい子は滅多にいないんじゃないか。

たった三ヶ月で、もう結構様になる碁を打てるようになっているし。

 

そうなのです。ヒカルの進歩の速さは、教室の中で際立っていて、中年のおじさんおばさんのやる気を増幅させていました。

 

「進藤君は、もう、おじいさんと打ってみたのかい?」

「ううん。まだ。」

「きっとびっくりするよ。打ってみたら。おじいさんは強いの?」

「分からないけど、老人会とかいろんなところの優勝カップ持ってるよ。」

「おじいさんと打つと、もっと強くなるよ。その結果を教えてくれないかな。」

 

じいちゃんと打つ。もう打てるのかな?

何となくヒカルは楽しくなってきました。

 

そんなヒカルに白川は聞きました。

「おじいさんは、君にどうなふうに教えてくれたのかな。碁を。」

「うん、実は俺その時のこと覚えてないんだ。」

 

ヒカルはあっさりと、小学校に入りたての時、落ち着きのある子になるように碁を教えてもらった話をしました。

 

そうなのか、正座しろとか言われたのかな?それで碁がやになったとか?

 

ヒカルは、“昔の未来で”プロ試験に受かった頃の力をまだ覚醒できてはいませんでしたが、もともと持っていた素質を素直に伸ばし始めていました。

その上、囲碁をとても面白いと思い始めていました。

 

碁は俺が探していることとは違うと思う。

でもそれとは別に、楽しいよ。これって。

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