神の気まぐれ(ヒカルの碁逆行コメディ)     作:さびる

22 / 58
21.きらきら星も悪くない

佐為の望みは果たされていましたが、佐為には不満でした。

 

 

でも、それより最悪なのは明子でした。自分の楽しみで打ったときは楽しかったのに。

私は何でこんなに疲れるのかしら。

もしかして幽霊さんに、体力を吸い取られてるのかしら???

4月も半ば、小学校の用事の帰りに、明子は、久しぶりにヒカルの家を訪ねました。

「今日はPTAの集まりがあって、その帰りなんですけど、ちょっとお寄りしたの。ご無沙汰してましたでしょ。今日はすぐ帰らなくてはならなくて、お玄関先で失礼させて頂きますわ。」

 

 

明子は、時間を見計らいながら、公園に向かいました。

公園の前で、明子はヒカルに会いました。時間を合わせたと言うべきでしょうが。

ピッタリね。

明子は憂さ晴らしに幽霊の話をしたかったのです。

その話が出来るのは、ヒカルしかいませんでした。

 

 

「あれ、おばさん。偶然だね。」

「そうね。今、お宅に伺ってきたのよ。その帰りなのよ。ちょっと歩きましょうか。」

いつもに似ず、寡黙に歩く明子を見て、ヒカルは思いました。

「おばさん。もしかしてネット碁、上手くいってないの?」

 

 

明子は目を見張りました。

「なぜわかるの?」

「えっ、だっておばさん元気ないし。よくわかんないけど、おばさんがそうなるわけで俺が考え付くのは幽霊のことだからさ。」

 

 

そこで明子は幽霊のためにネット碁を打つことが、なぜかとてつもなくストレスになっていることを話しました。

「ネット碁自体は楽しかったのよ。ネットカフェで自分のために打ったときはね。でもねえ、幽霊さんの顔を見るのが負担なのよね。幽霊さんは満足していない気がするの。

私にはもう、これ以上何もしてあげられないわ。

つくづく思うのよ。何で、私にだけ見えるのかしらね。」

明子はため息をついて、続けました。

 

 

「もっと碁を打てる人だったら、幽霊さんに何かしてあげられるのかもね。でも私は主人と緒方さん二人との対局と、たまにお昼時のネット碁におつきあいする以外に何もできないわ。家事やらなにやらいろいろあるし、一応母親業もあるのよね。今日みたいに学校の用事も。なんだかもう疲れちゃって。」

 

 

「塔矢は、幽霊のこと本当に全然気が付いてないの?」

ヒカルには、それが疑問でした。

「もし気が付いていたら何か言うかするかするでしょうから。」

 

 

うーん。どうなんだろう。子どもって気にしていて言わないってこともあるんだよな。

俺のお母さんもそうだけど、やっぱおばさんもそこのところは分かってないかもなあ。

 

 

「俺、思うんだけど。塔矢に隠しているから余計に疲れるんだと思う。

塔矢のお父さんだって、話せばわかるんじゃないの?塔矢に言うべきだよ。

そうしたら、少しは軽くなるんじゃないかなあ。おばさんの気持。」

 

 

明子はふっと笑いました。

そうかもしれない。家族が隠し事をしてるっていうのは。

もちろん、大人の事情は言わないことはいろいろあるけど、幽霊さんはそういうのとは違うわよね。

「そうね。でも私からはやっぱり話せないわ。今更だけど。誰かに話してもらえれば。幽霊のことを知ってるのはあと、緒方さんだから、彼に頼もうかしら。」

それから、ヒカルの方を見て言いました。

「進藤君に話したら、少し楽になったわ。いつもありがとう。お話聞いてくれて。」

 

 

ヒカルはそこで話を切り替えました。

「今度、俺、ネット碁をやるんだ。」

「パソコン、解禁?」

「うん。それも、もう少ししたらあるかも。でもしばらくはそうじゃなくて。」

そう言ってヒカルは高野の話をしました。

 

 

明子は驚きました。

「まあ、進藤君。歩道橋で事故を?二年生の時?本当に良かったわね。その子も進藤君もどちらも大したことなくて。」

「その子、拓っていうんだけど、この間一緒に公園で遊んだんだ。やんちゃでちょこまかしててさ、何か小さい時の俺に似てる気がしたよ。」

 

 

大人びた様子でそういうヒカルに、明子はクスリと笑いました。

進藤君もまだまだ子どもなのにねえ。

「そうだわ。進藤君は登録名は何にするの?」

「俺?考えてないけど、ヒカルでいいかなと思って。」

「ヒカルは、結構ありそうかもよ。同じ名前でもいいみたいだけど。そうだわ。」

 

 

明子はバッグからメモ用紙を取りだし、書きつけてヒカルに渡そうとしました。

「閃いたのよ。はい。これ。」

 

 

その時でした。

「ヒカル?まだ帰ってなかったの?あら、おばさん。」

あかりでした。

「あら、あかりちゃん。ちょうどさっき、進藤さんのところへお寄りしたのよ。頂き物の御裾分けで。その帰りに進藤君に出会ったの。ネット碁のお話をしてたのよ。高野さんのお話を伺って。あかりちゃんもネット碁されるの?」

 

 

あかりは頷きました。了解は取っていませんでしたが。

「私もネット碁やってみたいし。お姉ちゃんが高校生になったら、パソコン買いたいって言ってたし。いろいろ教えてもらうの。」

明子はにこやかに頷きました。

 

 

「私もね、どんなかと思って一度ネットカフェに入ってやってみたのよ。面白くてはまるかもね。あなたたちは若いから。それで、さっきの続きだけれど。」

明子は改めてメモを差し出しました。

 

 

「はい。これ。差し上げるわ。」

ヒカルはメモを受け取ってみました。あかりも覗き込みました。

「英語?読めないよ。」

 

 

「それはね、twinkleよ。二人とも知らないかしら?きらきら星って歌。

きらきら光る、お空の星よっていうの。英語の歌詞で、きらきら光るがtwinkleなのよ。

進藤君には、お世話になってるから、何かして差し上げたいと思ったの。

それで、ネット碁の登録名、どんな名前がふさわしいかしらって。

どうかしら。お名前のヒカルにもかかるでしょ。

もちろん、自分の登録名ですものね。好きなのを考えればいいのよ。でも、もし気に入ったら使ってみてね。」

 

 

ヒカルは少し胸が詰まりました。少女趣味ではありますが、明子の気持が分かりました。

悪い名前じゃないよね。

「ありがとう、おばさん。少し難しい気もするけれど。」

「あら、パソコンやるなら、英語も大切よ。それに、すぐに中学生になるんですものね。」

 

 

明子が帰って行くのを見ながら、あかりが言いました。

「おばさん、いい人ね。本当に、そのアキラ君って子は、おばさんがいろいろやっていること、何も知らないのかなあ。」

「うん。どうなんだろう。気づいてるかもしれないな。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。