神の気まぐれ(ヒカルの碁逆行コメディ)     作:さびる

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39.願いが叶って

春休みの間、ヒカルが武者修行に出かけている間、あかりはあかりで忙しくしていました。

平八の家で、碁の特訓を受けていたのです。

 

あかりは特訓と思っていましたが、平八は楽しみに打っていました。

わしは本当に運がいい。ヒカルのような孫がいて。おかげで、塔矢名人や白川先生のようなトッププロに指導を受けることが出来て、その上、あかりちゃんのような可愛い子と碁を打つ楽しみまでできた。

 

あかりは、お茶を飲みながら、やっと、パソコンが来たという話をしていました。

「お姉ちゃんと私の入学祝だって。でも二人で一つじゃつまらないわ。入学祝は一人ずつもらうものの気がして。」

平八の妻はニコニコ頷いていました。

「そうねえ。でもパソコンは高いものだし、きっとお姉さんが大学に行く頃には、一人づつ持てるようになるんじゃないかしら。」

「わしはヒカルに脚付き碁盤を送る約束をしてしまった。まあ、パソコンほど高くはないのをな。」

 

「新しいのですか。」

「まあ、わしの家にも二つ脚付き碁盤があるが、それぞれ思い出深いものでね。置いておきたいからねえ。ひとつは碁の大会の副賞でもらったものだ。もし兄貴の碁盤があったら、ヒカルにやっても。」

「いやですよ。本当に幽霊が出たらどうするんですか。」

「幽霊って?」

あかりは不思議そうに聞きました。

「あかりちゃんが怖がっちゃいますよ。」

「いいじゃないか。どうせここにはないのだし。」

 

そう言って、平八は烏帽子をかぶった幽霊が出るという碁盤の話をしました。

「わしの兄貴というのが変わったものが大好きというもの好きだったんじゃよ。ヒカルは赤ん坊の時から、毎年、兄貴のところへ遊びに行ってたから、その碁盤で遊んどったがな。碁をやるのじゃなくて、何か違うことをしとったんじゃないかな。ヒカルは一人っ子だから、兄貴の孫たちと遊ぶのが楽しかったんじゃなあ。もしかしてその幽霊も楽しくて、一緒に出てきて遊んだかもしれんな。ヒカルがまだ幼稚園に行っていたころの話だよ。」

 

その時、塔矢家の碁盤のことは頭から抜け落ちていたあかりです。

ふーん。幼稚園の子達と一緒に遊ぶ幽霊って、なんか可愛くないかしら。もしかして座敷童みたいなのかもしれない。

勿論、あかりは座敷童を見たことはありませんが、たまたま可愛い座敷童の出てくる絵本を持っていたのです。

 

 

春休みが終わる頃、ヒカルは戻ってきました。

中学入学のための制服やら何やらの用意で忙しく、あかりはヒカルとあまり話はできませんでした。当然、座敷童のような幽霊の話をすることは、ありませんでした。

 

 

めでたく中学生になったヒカルは、当然のように、筒井に囲碁部へ誘われました。大会には出ないことを条件にです。

夏目はすぐに入部したのですが、三谷は全く寄り付きませんでした。

とうとう夏目と金子が無理に引っ張ってきたのですが、たまたまヒカルは、居ませんでした。

 

夏目と筒井が打ち始めたのを見ながら三谷は言いました。

「こんな弱いのばっかりなんて、詰まんねえ。」

 

三谷が、そう言い捨てた時に、火のついたたばこが理科室に放り込まれました。

筒井は慌ててそれを踏みつけました。

煙草に続いて、窓から加賀が飛び込んできました。

「火事になるじゃないか、というより。」

話は途切れました。

加賀は窓際の壁にしゃがみ込み、そこへ、生活指導の勝俣がきて、筒井に聞きました。

「君たちは理科室で何をしているんだ?」

「囲碁部の部活です。理科室を使っていいと言われてます。」

勝俣は分かったというように頷いて言いました。

「加賀を見たら、知らせるように。」

教師の姿が見えなくなると、加賀は立ち上がり、伸びをしました。それから理科室にいる面々を見回しました。

「男子と女子、両方とも大会に出れる人数じゃないか。」

「俺、囲碁部じゃねえよ。」

ぶすっとして言う三谷に、加賀は座れと言いました。

「つべこべ言わずに、囲碁部に入れ。お前、打てるんだろ。俺様に勝ったらまあ好きにしていいが、勝てるわけはねえからな。だから入部決定だな。」

三谷は当然に頭にきて、打ってやると言いました。

 

さて打ち始めてみると、加賀の強さは相当なものでした。

三谷は愕然としました。

強いよ、こいつ。一体何なんだよ。

勝負は間もなくつきましたが、負けた三谷は言いました。

「でも強い奴が居ねえところで打ってても面白くない。加賀は囲碁部じゃないんだろ。」

 

加賀は、筒井に聞きました。

「進藤はどうしたんだ?」

「今日は、用事があって遅れるとか言っていたけど。三谷君。僕たちはいつも、みんな進藤君の指導を受けてるんだ。」

「誰?進藤って?」

「最強の中学生だな。俺も歯が立たねえ奴だよ。」

その時です。

「遅くなっちゃったけど、これ、碁盤。」

折り畳み碁盤を持ってきたヒカルがいました。

「あれ、これヒカルがずっと使っていたのじゃない?」

「うん。この間じいちゃんに碁盤もらったから、囲碁部に寄付。三面あれば、かなり効率良いじゃん。」

こいつが進藤?こいつが指導してる?ずいぶん子どもっぽい奴じゃないか。

「お前、一年だな。」

「うん。やっと会えたね。三谷だろ。」

「お前、強いの?だったらお前が大会に出ればいいだろ。」

「そう言われると困るけどさ。俺、一応、プロ目指してるからね。大会とか対外試合は禁止なんだ。」

「じゃあ、加賀が出ればいいじゃん。」

「俺は将棋部だからな。大会の時期は大体重なるんだよ。俺も進藤も幽霊部員だな。言ってみれば。だから、お前が出るのが筋というもんさ。お前は俺に負けたんだから、もう囲碁部員なんだよ。」

ヒカルが幽霊って。小さい時に、もしかして幽霊さんと遊んだからかな。ここに可愛い座敷童さんがいたら、一緒に碁を打ったら、楽しいかも。

あかりは平八に聞いた話をふと思い出しました。

 

 

こうして、取りあえず筒井の囲碁部は、加賀が強引にかじ取りをしてくれて、ぎりぎりの船出をしたのでした。良かったね。

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