これは、約5年前の事だ。
8月くらいだっただろうか。その日は稀に見るほどの猛暑日で、ギラギラと光る太陽が校舎を照らしていた。
教室での昼休み。
ふと、母さんに駄目と言われていたのに、なぜか個性を発動してしまった事があった。好奇心だろうか。はたまた反抗期か。そしてそこからの記憶はない。
僕が目を覚ました時、目を疑った。
なぜなら、友達が血を流して倒れていたから。女の子が泣いていたから。窓が割れていたから。目の前の机が粉々だったから。理由はいろいろあったと思う。
だけど、何より驚いたのは自分の拳を見た時だ。
僕の拳はガラス片でできた切り傷や返り血がいっぱいついていた。それを見た時、この惨状は僕がやったんだと理解した。
その後、回復系の個性を持つ先生のおかげで、死人や重傷者が出なかった事が幸いだったが、僕は校長先生を含めこっぴどく怒られた。そして母にはもっと怒られた。
その日家に帰ると、母さんに大事な話があると言われた。
いつになく真剣な顔だった事を覚えている。
僕の個性についてだった。
僕の個性は
母さんの話によれば、今まで言っていなかっただけで幼稚園の頃、つまり個性が発現してまもない頃に同じような事があったらしい。
その時は、なんとか個性持ちの先生何人かで抑えられたらしい。
あいにくの所、僕は個性を使うと記憶が無くなってしまうらしい。
病院の先生の話によると、まだ力の方が大きすぎて理性が抑えられないから暴走すると言っていた。
しかし、この騒動のおかげで母さんが僕に個性を使ってはいけないと言っていた意味がわかった。そして、個性は今後使わないと決めた。
それなのに、それなのに....
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〜現在〜
「一体なんなんだあの子は!」
「さっきとはまるで様子が違う!」
周りの受験者が騒ぎ出す。それもそのはず、まばゆい光が消えた先には大男が立っていたのだから。
身長は....3mはゆうにあるだろうか。鍛え抜かれた上半身とそれを支えるたくましい下半身。盛り上がった僧帽筋は男をさらに大きく見せる。はち切れんばかりの大胸筋と、小っちゃい重機を乗せたような三角筋、丸太のように太い腕は戦わなくとも、男の強さを物語っていた。
個性を発動し、以前とは全く別人のような肉体をした太陽が、超巨大敵に向かってまるで野原を歩くかの如く、鼻歌交じりでスタスタと歩いて行った。
それを見た他の受験者が声を荒げる。
「危ないぞ!何してるんだ!早く逃げろ!」
ピタリと足を止めると、その受験者に向かってゆっくりと振り返る。
「黙れ。誰に向かって指図してる。俺はこの世界の頂点、早乙女 太陽様だぞ。」
そう言って太陽は、そのまま超巨大敵の真下まで来ると、「ウェーイ」が止まらない金髪の少年を担ぎ、近くにいた他の受験生に投げ飛ばした。
その時だった。超巨大敵が真下にいる太陽に気づいたのだ。
標的を変更した敵は、太陽に向かって、その大きな腕を振り下ろした。
いち早くそれに気づいた他の受験者が叫ぶ。
「あ、危ない!上だ!」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!
時すでに遅く、ものすごい爆音と共に太陽に向かってその腕は振り下ろされた。そして、その場からものすごい砂煙が舞う。
「あ、あの子、金髪の子を助けるために、自分の事を身代わりにするなんて...ん?え?ぇぇぇぇぇぇぇ!」
その光景を見ていた受験者全員が目を見張った。
砂煙の奥には人影。そして、その真上には巨大な影。
砂煙が晴れてようやく影の正体がはっきりした。
潰れたと思ったその少年は、片腕で超巨大敵が振り下ろした腕を止めていた。そして、もう片方の腕でゴミでも払うかの様に敵の腕を薙ぎ払う。
「機械風情が..誰に向かって拳を振り下ろしてるんだ....?」
そして太陽は、軽く膝を曲げた、かと思うと爆風と共に太陽の姿はそこで消えた。
受験者は太陽の姿を探す。一人の受験者が叫んだ。
「.....っ!上だ!みんな上を見ろ!」
受験者が一斉に顔を上げると、視線の先には超巨大敵の眼前で、左腕を引く太陽の姿があった。物凄い速さで、空中にジャンプしたのだ。
"メリットは一切ない"
"だからこそ色濃く浮かび上がる時がある"
そして、太陽は軽く引いた腕を超巨大敵に向かって振り下ろした。
「戦う相手を間違えたな。デカブツ。」
ドォォォォォォォン!!!ボガァァァン!!!
"自己犠牲の精神ってやつが‼︎"
超巨大敵の体は大きく吹き飛ぶ。そして、激しい音と共に勢い良く爆発した。地面が揺れる。大気が震える。受験者は皆、度肝を抜かれた。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
一斉に辺りが湧く。それ程までに、現実離れした動きだった。
太陽は、数十mの高さからスタッと地面に着地する。
「......!?体が....持たないか....,」
その瞬間、ガクッと膝が崩れたと思うとそのまま意識を失い倒れ込んだ。
早乙女 太陽 得点 現在0p
会場がどよめく...
「一体なんだったんだ..,あいつは。」
「急に別人みたいになったと思ったら、あのデカイのぶっ飛ばしやがった.....」
「始まる前は肩ぶつかっただけでへこへこしてたじゃねぇか...演技だっのか....?」
「でもあの子なんでか焦ってた....ポイントあんまり取れてないんじゃない..,?」
「まあ、とりあえず.....ぶっ飛んでる奴だってのは間違いねぇよ」
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〜一週間後〜
試験当日の事を振り返る。
目を覚ました僕の前には、知らない天井があった。
どうやら試験の最中に僕が倒れた所を、誰かが保健室に運んでくれたらしい。怪我はなかったみたいで、目を覚ますとすぐに返された。歩いてる途中に知らない人からたくさん褒められたけど、全く覚えてなかった。
(僕は何をしたのだろう....金髪の子を助けようとした所から、上手く思い出せない.....)
後々話を聞いた所、僕は本っ当にありえない話だけど、なんでもあの超巨大敵をぶっ飛ばしたらしい。
真下にいたあの子は助かったのだろうか。全く覚えていない。おそらく個性を発動してしまったのだろう。
家に帰った後、母さんにこの話をするとこっぴどく怒られるかと思ったら、怪我はしていない事、誰かを助けたい事、でも0pだった事、その話を聞いた母さんはものすごく褒めてくれた。
そして最後に「太陽の為なら、どこの学校でも応援するわ!」と言ってくれた。
お母さんが言うのも無理はない。筆記は自己採点で合格ラインだったけどそれを帳消しにする、圧倒的0pだからだ。
雄英に受かるっていう目標は途絶えたけど、でも僕は、正しいと思う事をしたんだよ....
その時だった。
「太陽!郵便きてるわよ!雄英からみたいだけど....?」
ビクッ!
「あぁなんだ母さんか....ビックリしたよ...」
「シャキッとしなさい!雄英受けただけでも凄いことよ!」
母さんから封筒を受け取る。もちろん差出人は雄英高校。
落ちるとわかっていて、受け取るのは勇気が必要だった。
けれど、これを受け取らないと前に進めないと思った。
僕は意を決して通知を受け取る。僕は自室にこもると、大きく深呼吸して封を開けた。
すると、中に入っていた小型の機械に目が止まる。スイッチを押すと
信じられない人物の映像が映し出された。
「私が投影された‼︎」
この人.....まさか...,
「オールマイト!?」
映し出されたのはNo.1ヒーローオールマイト。ヒーローを志す者、僕を含めてみんなの憧れだ。
「これを見ている君....!驚いているだろう.....!実は春から雄英高校に勤めることになってね!」
「本当に!?あぁ..,受けたかったな...オールマイトの授業...」
悔しい気持ちが溢れ出す。
「早乙女少年!君、すごいね!あのパンチ!モニターで見てたよ!物凄いパワーだった!私にも劣らないほどね!」
「あのオールマイトが......僕の事を...!」
それだけでうれしく泣きそうだった。
「それに...ええ?なんだい巻きで!?彼にももっと話したいことが...わかったよ!」
「筆記は取れていても合格ラインだ....しかし、実技は0p..残念だけど当然不合格だ。」
わかってたけど..悔しいっ..!涙が溢れそうになった。これ以上聞くのが辛かった。
映像のオールマイトは話を続ける。
「それだけならね!私もまたエンターテイナーー!!こちらのVTRをどうぞ!」
そう言って映し出されたのは、超巨大敵に立ちはだかる大柄の少年。そしてその少年は真下にいるあの少年を助けるというVTRだった。
「あぁ....なんだ、結局僕は助けられずにこの人が代わりに助けてくれたのか..」
「先の入試!!見ていたのは敵pにあらず!!」
「人助けした人間を排斥しちまうヒーロー科など、あってたまるかって話だよ‼︎」
「きれい事?上等さ‼︎命を賭してきれい事実践するお仕事だ‼︎」
「救助活動p‼︎しかも審査制‼︎我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力‼︎」
《早乙女 太陽70p》
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
「なんで!?なんで!?僕なんかやったっけ!?」
「合格だってさ。おめでとう!早乙女少年!雄英が君のヒーローアカデミアだ‼︎あ、あとちなみに覚えてないらしいから言っておくけど、この映像の大柄の少年って君だぜ?それでは春にまた会おう!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」
部屋中に響き渡る声を聞いて、母さんが駆けつける。
「太陽!どうしたの大声出して...何かあったの..!?」
「母さん....なんか雄英受かっちゃった......」
母さんはにこりと笑って僕を抱きしめる。
多くの救けを受けて・・・
僕の人生は変わってく...
そして夢の高校生活が始まる‼︎