《被服控除》・・入学前に「個性届」と「身体情報」を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる素敵なシステム!「要望」を添付することで便利で最新鋭のコスチュームが手に入る。
〜約3週間前〜
一枚の紙を前に、太陽は頭を悩ませる。
「もう!太陽ったらいつまでそうしてるの!もう3時間はそうしてるわよ!いい加減パパッと決めちゃいなさい!」
「えぇ...でも母さん?ヒーローコスチュームだよ!僕が将来プロヒーローになったら、高校時代のコスチュームとしても、テレビに映るかもしれないし....ここはちゃんと考えなきゃ!まぁ.....プロになれたらだけど....」
自分で話を広げといて、自分で落ち込む太陽の姿を見て、母は深くため息をついたのは言うまでもない。
「要望かぁ...まずは伸縮性が良い素材で...それと武器なんかも欲しいなぁ.....それに僕の個性は体から熱を発するらしいから、その熱を吸収するようなすごい武器をできればお願いします、と。あとは...とりあえず、かっこよくしてください、と。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜現在〜
「始めようか!有精卵共‼︎戦闘訓練のお時間だ‼︎」
オールマイトの声が、グラウンドβに高らかに響き渡る。
「ムムッ!まだ何人か来てないようだが....」
オールマイトが辺りを見渡すと、太陽は3mはあろう斧を他の男子生徒数人と運んでいた。。おそらくコスチュームと一緒に頼んだ武器だろう。
「おーい君達!授業始まってるぞー!!」
「はぁ...はぁ....ずびばぜん....はぁ...」
すでにクタクタになっている太陽は返事をした。
「でもマジで重いぜこの斧!数人がかりでやっとだ!だけどよぉ!斧っていかにも漢って感じで憧れるよな!つか早乙女、そんなヒョロイのにこんなん振れんのか!?」
「はぁ....あ、ありがとう鋭児郎君。たぶん要望に沿って作ってくれたからだと思うよ。そ、それにしてもお、重すぎるよこの武器。持つだけで精一杯で振ることなんてとてもとても...しかも柄が短すぎて片手用じゃないか!しっかり要望に書いておくんだった!こんなのオールマイトでも振れるかどうか...」
斧を一旦壁に立てかけると、太陽は辺りをキョロキョロと見回した。
「えっーと出久君は、どこかな...ん、たぶんあれだ!」
太陽はエメラルドグリーンを基調としたオールマイトのような二本の触角が生えたコスチュームに話しかける。
「出久君....だよね?その頭って、オールマイトを意識してるの?超かっこいいよ!」
「早乙女君!?そうだよ!ありがとう!でも早乙女君も似合ってるよ!本当のヒーローみたいだ!」
僕のコスチュームは、いたってシンプルだ。
黒を基調とした上下に、白の手袋と膝当てそして、膝下まである特製の白ブーツは、ピッタリと足にフィットする特別仕様だ。激しい動きでも脱げないらしい。おまけに、オレンジ色のマントを羽織っている。少し恥ずかしいけど、ヒーローっぽいからOKだ。
「あと....さっきから気になってたんだけど、後ろにあるのは....斧?」
出久君の視線が、僕の後方にある斧へと映る。
「あぁ..,あれね。一応....斧。でも重すぎるから、戦う時は置いていくよ。」
僕達は一旦話をやめて、オールマイトから戦闘訓練の内容を聞く。
まとめると、2対2の屋内戦でヒーロー組と敵組に分かれるらしい。ヒーロー組は敵組が隠す核兵器を捕まえれば勝ち、敵組は、ヒーロー組を捕まえるか核兵器を守れば勝ちだという。建物は5階建てだ。核兵器は最上階の5階に配置されてある。
「コンビ及び対戦相手はくじだ!」
次々とペアが決まる。
そんなこんなで僕は、
「猿夫君よろしく!今日は頑張ろう!」
「よろしく。それと、呼びづらいと思うから俺の事は尾白でいいよ。」
そんなこんなで自己紹介を終えた所で、最初の試合が始まった。
みんな浮かれ気分でこの試験を受けようとしていたけど、それは最初の組み合わせによってかき消された。
初戦は、出久君とお茶子ちゃんのAコンビと勝己君と天哉君のDコンビだった。出久君と勝己君は幼馴染らしいんだけど....どうも仲が悪いらしくて...演習中も何か熱が入ったように言い合っていた。
途中、勝己君が籠手の爆撃で建物を破壊するパニックがあったけど、出久の奇策で激戦の末ヒーロー組のAコンビが勝利した。次はいよいよ僕達の番だ。
場所を移して行われた2試合目、対戦相手は推薦入学者の轟焦凍君と障子目蔵君のBコンビと僕と尾白君のIコンビの試合だ。僕たちが敵、焦凍君達がヒーローだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「屋内対人戦闘訓練開始‼︎」
どこからともなく開始のゴングが鳴る。
太陽は、開始と同時に階段をかけ降り、3階についた所で態勢を整える。
(ふぅ...始まった!一体どこから来る!核は尾白君に任せた!僕の役割は二人の無力化..,.でも僕に出来るのか...?いや、やるしかない!相澤先生に言われた通り、ここで個性の練習も...
と思いかけた所だった。太陽はある異変に気付く。
「空気が冷たくなって....,っ...!これはまずい!」
時すでに遅く、急速に冷えた冷気は地面を這うように凍らせる。辺りを見渡すが、あまりにも広範囲の冷却に逃げ場など無く、為すすべなく僕の足首は完全に地面に固定されてしまった。
「これは....氷?てことは、これは焦凍君の!くそっ!やられた!」
焦凍君の個性は《半冷半燃》。右で凍らし左で燃やす。範囲も温度も未知数だ。
するとタン、タン、タンと誰かが階段を上って来る音が聞こえる。そしてゆっくりと目の前のドアが開くと、左半身を氷に模したコスチュームを纏った轟君が現れた。
その顔からは、喜びも楽しさも何1つ感じられない。
「............!」
「動いてもいいけど...足の皮剥がれちゃ満足に戦えねぇぞ」
(いやだ...嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!せっかくの戦闘訓練...こんな所で終わりたくない...!でも僕にはどうする事も!)
「ここが3階で核がねぇとなると、尾白と核は5階か?まあ、凍って動けねぇだろうがな。」
轟はそう吐き捨て一歩また一歩と、太陽の方に近づいてくる。
(負けたく...ない!こ..んな..ところで...!僕は....まだ....何も!)
悔しがる太陽には見向きもせず、すれ違い様に一言。
「悪かったな。レベルが違いすぎた。」
その時、太陽の中で何かが切れる音がした。
「負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!!)
その瞬間、入試でも見せたまばゆい光と熱が太陽から放たれる。その熱は、冷えた空気を熱気に変えた。
轟が目を開けると、太陽の居た場所にはまるで別人の大柄な男がそびえ立っていた。
顔は太陽と同じ...だがどこか自信に満ち溢れ、普段からは想像すらできないゴミを見るような目。伸縮性の良いコスチュームがはち切れんばかりの肥大化した筋肉。そしてなにより全身を包むオーラが先程とは別次元である事を意味していた。
「お、おい早乙女のやつ、なんか様子おかしくねーか!」
「これが試験で見せた個性というやつか。」
「先生!これ止めた方が!」
(くそっ!教師として止めるべきだ..止めるべきだが..これは早乙女少年にとって必要な事!)
一筋の汗を垂らしながら轟は聞いた。
「それが....それがお前の個性か、早乙女。いや、お前は本当に早乙女なのか?」
「口を慎め。轟。」
口調が...変わった...?
「お前ごときが気安く俺の名前を呼ぶな。俺は全世界の頂点に立つ者、早乙女太陽様だ。」
その言葉を聞いて轟は鼻で笑う。
「フッ、頭でもおかしくなったか?何言ってんだか知らねーが、少しばかり体格が良くなっただけで、この状況が変わったとでも思ってるんじゃねーだろうな?」
轟がそういうのも無理はない。轟の個性はいわば特殊故非常に強力。一対一という状況を鑑みればまず負ける要素などない。ただ、相手がこの男でなければ、の話だが。
「轟。お前は先程俺に言ったな。レベルが違いすぎた、と。それはこちらの台詞だ。」
太陽は軽く笑みを浮かべながら、自分の胸をトントンと叩いて挑発した。
轟は、この一言に苛立ちを覚えるのと同時に、あまりの自信に少しの畏怖の気持ちを抱いた。
「調子に乗りやがって....後悔してもしらねぇぞ...最大出力だ!」
その気持ちを振り払うため、授業である事を忘れ全力をぶつける。轟は右手を太陽に向かって広げるそしてその瞬間、巨大な氷塊が太陽を襲った。
「.....!」
ドゴォォォォォォォン‼︎
氷塊により建物が半壊する。物凄い振動と砂煙が辺り一帯を包む。
「おい、これ太陽やべぇんじゃねぇの!?」
「いくらなんでも轟やりすぎだろ!」
モニターを見る生徒の誰もが、轟の勝利を確信する中、張本人の轟だけは砂煙の中をじっと見つめていた。
「!!!」
煙が晴れて轟は絶句した。轟が出した氷塊は、太陽からわずか数cmずれていた。
「なんだよ!やっぱり流石推薦入学者!ギリギリずらしてやがったんだな!」
「全くヒヤヒヤした...。もし当たっていたらどうなっていたか....」
(違う.....違う...やっぱり....これは....こいつが...,)
轟はゆっくり太陽の方を見る。その顔は驚きの表情を隠せずにいた。
轟の驚きは、目の前に無傷の太陽が立っていた事ではない。
自分が見たものが、本当の出来事であったという事についての驚きだ。
「ウォーミングアップは、終わったか?早く来い。」
轟は太陽の目をジッと見る。
「早乙女...。お前...この氷、どうやって避けた....?俺は当てるつもりで.....!」
「?おかしな事を言う奴だ。無論、ずらしただけだが?」
「!!!」
轟は2度目の絶句をする。
(本当....だったのか。氷がぶつかる瞬間、早乙女が左手で氷を弾く瞬間が一瞬見えた。見間違いだと思ったが....)
轟の焦燥など知らず、太陽はさらに煽る。
「今のは右だけだったが、次は左も使って来い。」
その瞬間、轟は一瞬だけ太陽を睨んだがすぐ心を落ち着かせて言った。
「戦闘に於いて、熱は絶対使わねぇ。」
「はぁ。ならばこれが今のお前の本気というわけか。正直拍子抜けだ。仕方ないクラスメイトのよしみでお前には選ばせてやろう。降参か敗北か。」
「降参も敗北も負ける事に変わりねぇじゃねぇか。」
「降参は自分で選べるだろう。だが敗北は俺が手を下さねばならない。まあ、加減はできんがな。」
轟は太陽の目を見てわかった。この男は本気で言っている、と。
「はぁ。わかった。降参だ。」
それを見ていたオールマイト達。
「先生!あいつら試合やめちまったぜ!?どうすんだよこの場合!」
(ルールにはないが...仕方ない!)
「ヒーローチーム...戦意喪失により!敵チームwiiiiーーn‼︎」
「ふぅ...どうやら終わったよう...くっ‼︎」
その瞬間以前と同様、太陽は膝を崩しそのまま気を失った。
感想・お気に入りありがとうございます!褒められると伸びるタイプです。モチベーションにも繋がるのでどんどん褒めてください!..........ごめんなさい。(既視感)