死柄木と黒霧を前にしてオールマイトは口を開いた。
「どうした?来ないのかな?クリアとかなんとか言ってたが....出来るものならしてみろよ‼︎」
(なんだって...?もう一体いるだと...?ふざけるなよ!一体倒すだけで精一杯....ぶっちゃけもう一歩でも動けばこの姿は維持できん!なんとか、子供たちだけでも....!)
「黒霧...出せ......」
「わかりました....」
その言葉と共に、黒いモヤから先ほどと同様のタイプの脳無が姿を現した。
「おい、これって結構やばい状況なんじゃねーの?流石のオールマイトでも...」
いくら平和の象徴がいると言えど、脳無の脅威を先程の脳無で嫌と言うほど味わった生徒達には、否が応でも不安がよぎる。
「やれ.....!脳無....
緑谷は脳をフル回転させて考える。
(あれは虚勢....!オールマイトは限界だ!他の先生達は...今どこに!?いや、間に合わない...!今できる最善を....!)
脳無がオールマイトの前に立ちはだかり拳を上げる。いち早くそれに気づいた緑谷は、スタートを切る。
!!
(速い!!)
死柄木が視線を横に写すと、先ほどまで離れた場所に居た緑谷が、脳無に飛びかかりあと一歩という所まで迫っていた。
「オールマイトから....離れろ!」
「黒霧‼︎」
死柄木の一言で、黒霧が緑谷の前に立ち塞がる。
「二度目はありませんよ!」
黒霧のモヤが緑谷の体を包み込む。完全に動きを封じられた緑谷はなす術なく周りを見渡す。
「くそっ!離せ!」
(かっちゃん達は...!駄目だ!遠い!先生達はまだ来ないのか....?これじゃ...オールマイトが...!)
緑谷の心配虚しく、脳無の重い拳がオールマイトの体へとめり込む。
「ガハッ!!!」
ドォォォォォオォン‼︎‼︎
「「「オールマイトォォォ‼︎‼︎」」」
物凄い勢いで吹き飛ばされたオールマイトは、血を吐きながらもなんとか受け身を取り意識だけは残っていた。
(僕の所からしか見えないけれど...土埃にまぎれて....体が半分変身しかかってる....‼︎)
吹き飛ばされたオールマイトを見て、死柄木はこの上ない笑顔を浮かべる。
「無様だなぁ...オールマイト....平和の象徴とも呼ばれたお前が....今やなす術なく眺めるだけ....そこで見てろ...お前が守れなかった子供たちが...殺される瞬間を....!」
「やめろ....敵...共...子供たちには手を出すな....ゴホッ‼︎ゴホッ‼︎」
「まずはお前からだ....」
死柄木は緑谷に向かって指を指す。
「さっきのスピード....オールマイトじみた何かを感じた...ヒーローの芽は....今の内から詰んでおく....!」
平和の象徴として、ヒーロー社会のトップに立ち続けたオールマイトが立てない姿は、爆豪を始めとする1-A生徒の足を竦ませた。
「やれ!脳無!」
黒霧に動きを封じられた緑谷に脳無の拳が襲いかかる。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
オールマイトの叫び虚しく、緑谷に拳がぶつかる........
その時だった。
ブォォォォォン‼︎ガシッ‼︎
爆風と共に、脳無の拳が止まる。いや正確には
「お前達....愚かでかつ運がない......」
!?
「わざわざ死ぬためにこんな、辺鄙な場所にやってきたのだから。」
この男の存在を。
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《太陽side》
〜数分前〜
トイレから出たばかりの太陽は上手く状況を掴めないでいた。
(あれは...敵!?いやもし本物だとしたらプロヒーローが沢山いるこの学校にわざわざ来るか?目的は...それになぜこの時間に...駄目だ!わからないことが多すぎる‼︎)
太陽がそうこう思っている内に、もう一体目の脳無が黒霧のモヤから姿を現した。
「なんだ....あの化け物...」
太陽は思わず冷や汗を垂らす。
(仮に....あれをオールマイトが倒せたとして、残りの敵はどうするつもりなんだ!?いや、ボロボロのオールマイトと戦わせるあたり、あの化け物が確実にオールマイトにとどめをさせるという自信があると考えた方が妥当だろうか....あっ‼︎)
太陽の不安通りに、脳無の拳がオールマイトを吹き飛ばす。
(なん...だよ...あの強さ....オールマイトは....No.1ヒーローだぞ...!それを...あんな簡単に....他に誰かヒーローは.....)
そこまで考えて、太陽は考えるのをやめた。
(誰か...じゃない。僕だ。僕がやらなきゃ。)
太陽は唇を強く噛みしめ、意を決する。
「よ、よし!いざとやるとなったら、なんかやれる気がしてきたぞ!」
太陽は大きく深呼吸する。そして、
「こ、個性発動!........あれ?」
いくら念じても太陽の体にはピクリとも反応がない。
「なんで...!こんな時に!」
(入学試験の時だって....戦闘訓練の時だって!上手くやれてたはずなのに!なんでこんな時に限って!)
死柄木の声がわずかだが太陽の耳に入る。
「子供たちが......殺される瞬間を......!」
(なんだって....?殺....す?)
入学してからまだ僅か、少し前まで中学生だった太陽には、死という事に対してまだそれほど身近に感じていなかった。
ヒーローとしての自覚すら芽生えていない現状で、ましてや敵に殺されるなど考えたことすらなかっただろう。
だからこそ、その一言は太陽の心を大きく動かすきっかけとなった。
「そんなこと.......させない。させて....たまるか!」
(この際、僕はもうどうなってもいい。後の事は考えない!心配かけるけどごめんなさい母さん!だけど僕は!ここで頑張らないと!)
「
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《現在》
爆風と共に現れた太陽が、緑谷に振り下ろされたと思われた拳を片手で止める。
「遅くなった.....緑谷....今の時刻と状況は?」
太陽の姿を見て、緑谷の目から涙が溢れる。
「雰囲気は違うけど....分かるよ....ありがとう....太陽君!ズビッ...」
「早くしろ」
「ご、ごめん!じ、時間?えっと...13時30分くらいだよ!それと太陽君!助けに来てくれた所悪いけど、今すぐ逃げて!こいつはオールマイトでさえ手こずる強さ...僕らなんかじゃ歯が立たない!」
緑谷の焦りを気にもせず、太陽は悠々としている。
「もう....昼を過ぎたのか....では
(60%...?太陽君は一体何を...)
「ん?誰だお前?もういい!やれ!脳無!お前が犠牲者第一号だ!HAHAHAHA!!」
死柄木の笑い声に太陽も笑顔で返す。
「フハハハハハ」
ドンッ‼︎
「は?」
あまりの出来事に、緑谷を始めとする生徒は勿論のこと、敵達ですら言葉を失った。
ドンッという鈍い音の後、静寂を破ったのは死柄木のその一言だった。
その死柄木の眼前には、腕を高々と掲げる太陽と下半身のみ残された脳無の姿があった。
「おい....待て...黒霧...今何が起きた....」
上手く状況を飲み込めない死柄木は黒霧に問いかける。
「すみません死柄木弔...私にも何がなんだか....脳無が襲いかかった直後、瞬きの間に....」
「あの脳無を一撃で....」
「おい脳無!早く再生しろ!何そこで寝てる!」
その一言で脳無の体が再生し始める。
太陽は喜び混じりの声で言う。
「そうでなくては面白くない。」
「死柄木弔...おそらく今のは何かの間違いかと....オールマイトですら手こずった脳無を....」
再生した脳無が、太陽に襲いかかり激しい連打を叩き込む。
オールマイトに叩き込んだ乱撃と同様の攻撃が太陽を襲う。
ドドドドドドドドドッ‼︎‼︎
「早乙女!」
切島の声をかき消す程の衝撃音が辺りに響き渡る。
激しい振動が収まると同時に、切島が膝から崩れ落ちる。
「なんで...行かなかった...これじゃ....
切島の頭に過去がよぎる。
「いや......まだ終わっちゃいねぇ!」
「早乙女の仇、取ってやる!もうブレねぇ!たとえ俺一人でも....!必ず...!」
切島の後ろから声が聞こえる。
「待てやクソ髪。俺も殺る。さっきはビビっちまったが、それはさっきまでの俺だ!今の俺はさっきと違ぇ‼︎」
爆豪をきっかけに、轟以外の全員が太陽の仇を取るために名乗り出た。
「よし!土埃が晴れたらGOだ!行くぞ!」
その時だった。
「勝手に殺すな鋭児郎。俺を誰だと思っている。」
「「‼︎」」
土埃が晴れると脳無の拳を体で受け止めながら平然とする太陽がいた。
「早乙女!おめーダメージは.....それに今名前....」
「おいおいおいおいおい聞いてないぞ聞いてないぞ。」
死柄木は目を見開きながら、首を掻き毟る。
「こいつは一体何なんだ!オールマイトですら手を焼く脳無を...!」
「はぁ.....どんなものかと食らってみたが....こんなものか....がっかりだ。では、そろそろ終わりにするか。」
そう言うと太陽は、
「さようなら、ゲームオーバーです。まあ、もうコンテニューは出来んがな。」
ドォォォォォォォォォン‼︎
眩い光と共に、太陽の拳が脳無を襲う。
光が収まるとすでにそこに脳無の姿は木っ端微塵に消し飛び、その代わりにもといた地面に影が焼き付いていた。
「では、次はお前たちだな。うっ‼︎」
エネルギーを使い果たしたのか、プシューという空技が抜けるような音と共に、太陽の体が元の状態に戻り、そのまま倒れ込む。そしてそれと同時に、玄関から声が響く。
「1ーA学級委員長‼︎飯田天哉!ただいま戻りました!」
飯田の後ろには雄英教師、もといプロヒーロー数十人が立ち並ぶ。
「ああ...来ちゃったな...ゲームオーバーだ。帰って出直すか黒霧。」
死柄木は消え入る瞬間、ものすごい形相で太陽を睨む。
「オールマイトは想定以上のダメージを与えられた..だが.....!覚えたぞ...今度は必ず殺してやる.....早乙女...太陽.....」
ズズッ‼︎
その一言を最後に敵達は、完全に姿を消した。
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プロが相手にしているもの....世界。
それは....僕たちにはまだ早すぎる経験だった。
この襲撃はのちに起こる大事件の始まりだったんだけど
この時の僕らには知る由もなかったんだ。
第一部 入学編 完
※多少の違和感は伏線だと思って流してください。
USJとUFJは言い間違えないように気をつけましょう。来年も引き続きご愛読よろしくお願い致します!