束はこの時をずっと待っていた。
普段は面倒に感じる徒歩も、今は幸せに感じていた。
目の前の道が全て花畑に見えるほど浮かれ、スキップをしながらとある場所へと向かっていた。
そして目的地につくと深く深呼吸をした。
束「迎えに来たよあーくん。ここまで待たせてごめんね。」
そう言って千冬の部屋を開けた。
中には柱に首を繋がれ、疲弊している千秋しかいなかった。
そして千秋は、束を見つめ首を傾げた。
なぜ束が来たのか。それが理解出来なかったのだ。
束「もう!相変わらずちーちゃんはひどいね。これじゃペットの犬扱いだよ。」
束は千秋に近づいて首輪を外した。
そして千秋を強く抱きしめ、頭を撫でた。
束「今まで辛かったよね?苦しかったよね?でも、もう安心して。束さんがあーくんを救いに来たんだよ。」
その束の暖かさに千秋の目からは大粒の涙が溢れていた。
自分では理由は分からなかった。
だが、その涙を止めることは出来ずに、この感覚を永遠に味わいたいとすら思ってしまっていた。
すると部屋に向かって足音が聞こえてきた。
千冬「千秋大丈夫か!!」
急いでいたのか、息が上がっている千冬が扉を壊す勢いで入っていた。
そして目の前の状況を見たとたんに、表情が険しくなっていた。
千冬「束、今すぐ私の千秋から離れろ!!」
束「何言ってるの?今まで酷いことしといて私の?ふっ、相変わらず冗談が苦手だねちーちゃんは。」
煽るように笑うと、千冬の怒りはより沸いていた。
束「それにあーくんが、私を選ぶんだよ?しかも、自分の意思でね。」
千冬「ふざけたことをぬかすな!さぁ、千秋。さっさとそいつから離れろ。」
千冬はそう言って手を伸ばした。
だが、今の千秋には千冬の事を今までと別の想いで見ていた。
自覚がないが、それは恐怖だった。
そして束の体に隠れる様に、千冬から距離をとってしまった。
その瞬間、千冬の表情は絶望に染まっていた。
束「だから言ったでしょ?あーくんが束さんを選ぶって。まぁ、これまであーくんの為に・・・違うか。束さんの為に行動してくれて、本当に感謝してるよ。やっぱり、持つべきは親友だね。」
そう言って束は、千秋を抱き上げた。
千冬「ち、違う!騙されるな!そいつは危険なんだ!お前をまもってやれるのは、私だけなんだ!」
束「はいはい。良い歳した大人が見苦しいよ?じゃああーくん、行こっか。」
束は千秋を抱えたまま、窓の外へと出ていった。
千冬は、膝から崩れ落ちその場に倒れこんだ。
千冬「・・・ざけるな。ふざけるな!!私の千秋が、私の千秋が!!許さん。絶対に許さん!!」
そして千冬は涙を流し始めた。
千冬「返せ、私の千秋を返してくれ・・・。私の、私の千秋を!!」
怒りと哀しみからか、握りしめた拳からは、出血していた。