多数の代表候補生や千冬、束が負傷させられた事件は、歴史的テロリスト千秋の自殺により幕を閉じた。
千秋を除く当事者達は、最悪の状況を無事に乗りきったとしてより、世界中からの称賛や尊敬の対象として扱われていた。
あの日から数日後、一夏はある病院の集中治療室に来ていた。
理由はあの日、アインの攻撃により廃人となってしまったラウラの見舞いである。
辛うじて呼吸はしているが、常に目は開き瞳孔は死んでしまい、食事もマトモに摂れず、直接胃に流し込んでいる状態である。
そして時折、アインに埋め込まれた千秋の記憶が甦るのか、酷く苦しみ、暴れ、悲しんでいる。
これでは、素直に死んでいた方が幸せなのではないかと、一夏は思う程であった。
空を見ているラウラに話しかけられず数分が経ち、一夏は立ち上がった。
一夏「ごめんなラウラ。そろそろ帰らなきゃ千冬姉と・・・、いや千冬姉が心配するから。」
そう言って一夏は病院を後にした。
そして帰り道、スーパーによって一応“3人”分の食料を買っていた。
一夏「千冬姉帰ったよ。今から晩ごはん作るから。」
千冬「遅かったじゃないか。心配したんだぞ。なぁ、“千秋”」
そう言った千冬の腕には、千秋がいた。
いや、正確には雑に作られたボロボロのぬいぐるみが抱かれていた。
あの日以来千秋を失ったショックから、千冬はそれを認めないかの様に、ぬいぐるみを千秋と認識してしまっていた。
その表情は、全てがおかしくなる前の、幼い頃の千秋に向けていた優しく素敵な笑顔があった。
千冬はまさしく、壊れてしまったのだ。
夕食が食卓に並ぶと、千秋の量を見て千冬は激怒していた。
千冬「おい一夏!なぜ、千秋の量がこんなにも少ないんだ!!千秋は育ち盛りなんだぞ!!」
一夏「いや・・・千秋は食が細いって昨日言ってたから・・・。」
千冬「そうなのか千秋?」
ぬいぐるみに語りかけるが、当たり前だが何も答えは返ってこない。
だが、満足そうに千冬は笑いぬいぐるみを抱き締めた。
千冬「そうだったのか。千秋、そうなら先に言ってくれ。全く、お前は相変わらず、物静かだな。さぁ、夕食にしよう。」
千冬はぬいぐるみの口に食事を運ぶ。
ボロボロと溢れ、ぬいぐるみの口を汚しながら千冬は嬉しそうだった。
千冬「そんなに美味しいか。そうか、ならもっと食べさせてやる。やはり、お前は愛しい存在だな。」
あの日以来、こんな状況を見せられて一夏の心は、哀しみに包まれて・・・、いやその逆だった。
一夏は、こんな状態の千冬を前にして喜びに震えていた。
一夏(千秋が家に来て以来、千冬姉は千秋に構いっぱなしだった。だが、今では俺が千冬姉を支えてる。俺がいなきゃ、千冬姉は生きていけない!そうだ。千冬姉は、俺だけの千冬姉なんだ!!)
今日も織斑家は、互いの理想の想いを抱きながら素敵な毎日を過ごしていたのだった。
全ては、あの日があったから。いや、あったせいなのか。
それは、当人達にか理解できないのであった。
これは、ハッピーエンドですね(笑)
一応予定では、次回で最終回です。
次回は束の現状の報告です。
そちらも、ハッピーエンド(笑)になりますので、お楽しみに