あの日以来、束が自分のラボから出歩く事は、以前よりも少なくなっていた。
流石に、心配になっていた箒は前に教えてもらっていた住所に直接様子を見に行く事にした。
本当なら一夏と一緒に行きたかったのだか、理由までは言わなかったが、家庭の事情があるらしい。
と言うとり、千秋が死んで以来お互いに何も言わないが、皆は必要以上に顔を会わせない事も多くなっている。
そんな事を考えている内に、束の秘密のラボへ到着した。
箒「姉さんいるの?いるのなら、顔を見せて欲しいのだが・・・!!」
入った瞬間直ぐにわかったのが、鼻にこびりつく程の血の臭いだった。
まさか、あの束の身に何かあったのか。
考えうる最悪の状況が頭の中に浮かんでしまった。
今までならそこまで至れないが、千秋の死を間近に見てしまい、簡単に人が死んでしまう事を痛感していたのである。
箒「まさか!!そんな・・・!」
急いで臭いのする場所へと箒は向かってみた。
そして、立ち入り禁止と書かれた扉の前に立ち、少しだけ息を整えた。
意を決して扉を開けてみると、そこには想像もしていない光景が広がっていた。
束「くーちゃん、この前の子はどうなったの?」
クロエ「32番は、右膝を壊した時点で死にました。」
束「そう。じゃあ、そのゴミはさっさと捨てといてね。」
目の前で繰り広げられる会話、恐らく返り血を浴びたであろう赤く染まっている束。
そして謎の液体に浸かっている千秋の死体と、鎖で縛られている“千秋そっくりの子供”が数人いたのだ。
あまりの光景に、箒は我慢できずに嘔吐してしまった。
束「あっ、来てたんだ。見てみて、束さん頑張ってるよ。」
箒「姉さん!貴方は一体何をしてるんだ!!」
箒がそう聞くと、どこから話そうかなと言いながら束が歩いてきた。
束「あの日、あーくんが死んで文字通り生きる意味が無くなった。私も後を追おうとも思ったけど、ふと閃いたんだよ。」
束「私は科学者、しかも世界一のね。無くなったなら、また作れば良いんだ!って、名案でしょ?」
まるで、テストで満点を取った子供が親に誉めて欲しがっているかのように、束は満面の笑みを浮かべていた。
束「あーくんのクローンを作って、また同じ状態をつくる。言葉にすれば簡単だけど、意外だったのが、すぐに死んで使い物にならないんだよね。それには束さんもびっくりだよ。」
箒「そんな、そんな事は、許されない事だ!千秋の死体までも冒涜する気なのか!!それにそんな事をしても、千秋は帰ってこない!!」
束「そう。帰ってこない・・・。なら、より高性能で私好みのあーくんを作れば良いだけ。妄想の世界に逃げたちーちゃんや、忘れさろうとしてる世間の屑と比べたら、建設的でしょ?」
不思議そうな顔をしている束の目には、既に光が無く文字通り壊れてしまっていた。
箒(すまない。本当にすまなかった千秋。私が守ってあげられなくて・・・。せめて、お前を愛した姉さんだけは救ってくれ!!頼む千秋・・・。)
一人の男の子が死んだ。人並みに愛されず憎悪を向けられ続け、傷つき続けた悲運男の子が死んだ。
地球の営みの中で見れば、なんて事もない小さな染み以下の出来事なのかも知れない。
だが、その死によって全てが狂い全てが歪み、全てが手遅れとなってしまった。
これが、男の子が望んだ結末なのかはもう知る事は出来ない。
だが、液体の中に浸かっている千秋の表情は、今までの誰よりも幸せそうな顔つきなのであった。
これにて、一応の完結です。まぁ、幸せそうなら、ハッピーエンドなのかも知れませんね。
こんな終わりでしたが、もし要望が有れば世間一般的なハッピーエンドも書く予定ですので、ご意見下さい。
ここまで長い間、作者の性癖にお付き合いしてくださり、本当にありがとうございました。
また、作者の性癖を垂れ流しにする作品をつくる予定ですので、優しい読者がいましたら、そちらも読んで戴けたら幸いです。
それでは、ここまで本当にありがとうございました。