あれから数ヶ月、一夏達の前に千秋が姿を現すことは無かった。
いくら行方を探してみても、所詮は子供。
出来ることにかぎりがある以上、それ以上進展する事は無かった。
千秋に会えずに、目に見えてよわってきている千冬を、一夏は見てられなかった。
そして千冬は、まるで何かに取り憑かれたかの様に千秋が写っている写真に毎日話し掛けていた。
そして気がつけば、一夏は四年生になり幼馴染みであった箒の転校により寂しさを感じていた。
千秋の事は心配だったが、どこか諦めてしまっている自分がいた。
いや、諦めて欲しいのは千冬にだったかも知れない。
千冬にばれないように千秋の写真を捨てたり、千秋の話題は一切口にしなかった。
いつか、昔の凛々しくて格好いい千冬に戻って欲しい一心で一夏は千冬の中から千秋を消し去ろうと頑張っていた。
自分を心配してくれる弟に、弱い所を見せたくない千冬も半分、千秋は死んだ存在だと諦めてしまった。
そしてさらに時間は過ぎ、一夏は中学に進学し千冬もISの世界でその名を知らしめていった。
自分達の忙しさもあってか、二人はすっかり千秋の存在を忘れてしまっていた。
だが、そんな時一夏は学校で秘かに噂になっている話を耳にした。
とあるアパートの一角に、言い値でやれる女のような男の子がいること。
そして年齢は、一夏と同じだと言うこと。
それを聞いた一夏だったが、興味は全くわかなかった。
自分には関係の無い話。そんな見知らぬ誰かのどうでも良い事なんて気にも止めなかった。
そんな噂は、どんどん広がっていきその内に千冬にまで届く様になった。
千冬も一夏と同じで特に気にも止めなかった。だが、心の奥底で何かが引っ掛かっていた。
そして自分の親友にして、天才と表現するしかない女。束に電話をかけてみた。
束「なになに?まさかちーちゃんから束さんにお電話だなんて!!嬉しすぎておかしくなっちゃうよ。」
千冬「おかしいのは元々だろ。それよりも、聞きたい事があるんだ。」
千冬は事の経緯を束に全て話した。
電話越しで聞き取りにくかったが、千冬は束が笑っている様に感じた。
束「ごめんね。そんなの束さんは全くわかんないよ。」
千冬「そうか・・・。そうだよな。すまん、もし何かわかったら電話してくれ。」
電話を切った束の目の前には、大きなモニターが写し出されていた。
そこには、あのボロアパートで犯されている千秋が写されていた。
束「それにしても、ちーちゃんも酷いよね?あんなに好意を出してたのに、少しいなくなっただけで忘れるなんて。」
束はこのモニターで、ずっと千秋の事を観察し続けていたのだ。
束「左腕は切られ、右膝はぐちゃぐちゃ。耳は殴られ過ぎて聞こえない。右目の失明、左目の弱視。消えない大きな火傷跡や、刃物での切り傷・・・。」
束「はぁ・・・、やっぱあーくんは、ボロボロな姿が良い!!」
モニターを見る束の瞳には、常人としての感性や輝き、そしてハイライトが全く無くなっていた。
束「でも、そろそろどうにかしないと、あーくんも死んじゃうか。しょうが無いな・・・。」
そう言って束は、千冬に折り返しの電話をかける事にした。