魔法少女が好きだけど悪役になってしまったからあえて敵の幹部として愛でようと思う 作:天性悪徳令嬢
「マギストライカー見ッ参!」
変身を終えた少女は壁を蹴り破りつつ名乗りを上げる。
蹴撃少女マギストライカー。
サッカーの魔法少女である彼女のコスチュームは、サッカーのユニフォームを意識したものとなっている。
S県のユニフォームの意匠が組み込まれた制服には所々羽のような装飾がついており、
特に脚部には
そして私はスマホのカメラを起動させつつ、アーケードの屋根や壁の突起等を足場に素早く建物の屋上へと上がる。
ここまで手馴れてきたものだ。
魔法少女を守れるようにと日々の鍛錬を。
魔法少女を撮るためにと実戦経験を。
そんなこんなで私は軽いアスレチック程度ならなんなくクリアできるうようになっていた。
いっその事マスクとシルクハットで変装して魔法少女をサポートでもしようかと考えたが、
それだと明らかに不審者なので今の見守るスタイルに落ち着いたわけだ。
今回の相手はカマキリのような怪人。
魔法少女と言うよりかはヒーロー物の悪役っぽいデザインをしている。
「喰らいやがれっ!」
先に攻めたのはストラちゃん。
ブースターの加速と共に怪人の腹部に向けて蹴りを放つ。
が、怪人は冷静に体を捻って躱し、着地後の隙を狙って両手の鎌を仕掛ける。
というか怪人の方は一言も喋っていないな。
一方ストラちゃんは着地に合わせて左足を軸に回し蹴り。
これには怪人も攻撃を止めざるを得ないようで、
怪人は両腕を使って攻撃を防ぐ。
だが、これはまんまとハマったわけだ。
ストラちゃんは脚部ブースターで急激に加速し、そのまま足を振り切って怪人を蹴り飛ばす。
そして余剰エネルギーで数回回った後にブースターを使って再加速。
蹴り上げた怪人に向けて
ストラちゃんの得意技である「ブースト・トルネード」が完璧に決まる。
「これが愛の力だッ!」
会心の手応えにストラちゃんも満面の笑み。
そして今の発言はその正体がさっきの少女である事を証明する。
「これで一件落着ってとこだな!」
戦闘が終了してストラちゃんが撤退したので撮影を止めてスマホをしまう。
後はストラちゃんの情報資料を集めるとしよう。
屋上から壁伝いに飛び、
変身解除したストラちゃんの後を追いかける。
「さぁて、さっきのオッサンみたいに生身でも技を出せるようにしなくちゃな!」
カバンからボールを蹴りだし、ドリブルしながら裏路地を移動するストラちゃん。
すると私はストラちゃんの他に別の影がある事に気が付いた。
夕暮れの影、
建物の上に佇むあのフォルムは...
思わず身を隠し、こっそりと建物の上を見ると、そこにはさっき倒したはずの怪人が立っていた。
2020/9/5
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