フランの異世界召喚記 作:松雨
「さてと、採取系の依頼は……ないか」
「ないね~」
ミアとパーティーを組んだ後、当初の予定通りに採取依頼を受けようとクエストボードを見てみた。しかし、昨日に続いて採取系の依頼が1つもなく、あったのは魔物の討伐依頼ばかりだった。
「思ったんだけど、このギルドに来る依頼って大体が討伐系だよね。そんなに魔物が出るのかこの王都周辺って」
「人が沢山居るからじゃないの? 仮にもここ、一国の中心だし~」
確かに言われてみれば、討伐系の依頼の場所は王都周辺であることが多い。ミアの言う通り、安全確保の為だろう。
今日は1日中のんびり過ごすか、討伐依頼をまた受けるかの2択で迷っていると、ミアがこう言ってきた。
「迷ってるなら王都の中を見て歩かない? わたしとフランちゃん一緒なら楽しそうじゃん」
「そうだね。確かに良いかも!」
王都を回る事自体は1人の時にやってはいたが、まだ全部を見て回れた訳ではない。それに、今日は仲間になったミアも居る。2人で見て回る王都は少し違って見えるかもしれないと思ったので提案に乗り、王都観光をする事にした。
ワイバーンレストラン方面に行った事はあったので後回しにして、反対側に歩き始める。
時折、召喚初日に私が一撃で気絶させた人たちを見かけてお互いに目があうも、向こうが速攻で視線を反らした上に逃げていった為特に何も起こらずに済んだ。
「フランちゃん、あの人たち何で急に逃げていったの?」
「あはは……何でだろう」
まさか王城内部で身を守る為とは言え、あの人たちを殴って気絶させたり威圧したなどとは流石に言えなかったので、分からないふりをした。
そうして大通りをのんびり歩いていると、噴水広場に差し掛かった。何かイベントでもやっているらしく沢山の屋台があり、人が集まっていた。まるで雰囲気は幻想郷の人里でやったお祭りみたいだ。
気になったのでそばに居たおじさんに聞いてみた所、1年に1回やる『王国建国祭』と言う祭りらしい。
それならきっと楽しいものだろうと思い、祭りに行ってみない? とミアに聞いてみた所、目を輝かせながら頷いたので行くことに決めた。
「凄い人だよね~! フランちゃん!」
「うん、確かに凄いよね! こんなに人が居るお祭り私初めてだし」
雰囲気は人里のお祭りにそっくりだったけど、そこに居る人たちの量が半端ではない。何とか日傘を差しながら歩く位は出来るものの、どこの屋台も沢山の人が並んでいてかなり待つことになりそうだった。
「この『クモダコ焼き』屋台なんかどう? わたしこれ好きなんだよね~」
「クモダコ焼き? 何それ? 蜘蛛みたいなタコって事?」
「違うよ。空にある雲の方。隣の国に雲が出るくらいの高度を泳いでるタコがいてね、それを捕まえて焼いて食べるんだ~」
「へぇ~。分かった、じゃあ並ぼう!」
確かタコって海の生き物だったっけ? だとしたらなぜ空をタコが飛ぶことが出来るのだろうか。霊夢や魔理沙みたいなタイプで飛ぶのかなぁ。
幻想郷には海がないのでそう言った類いの生物は居ない。なので当然知識も殆んどない。
たまたま読んだ海に関する本に書いてあったのを覚えていなければ、タコが海の生き物であると言う事は絶対に分からなかっただろうし、そもそも海と言う存在すら知らなかっただろうと思っていた。
が、しかしこの世界には空飛ぶタコと言う、海ではなく空に住む奇っ怪な奴が存在するらしい。そうなるとあの本に書かれていた、『タコは海の生き物』と言う記述も怪しくなってきている。本が本当は空を飛ぶ生き物だと書こうとして間違え、海の生き物と書いてしまったのではなかろうか。
そんな事を考えながら40分、ようやく私たちの番が来た。
「おじさん、クモダコ焼き2つ下さい!」
「分かった。じゃあ2つで銀貨1枚だ」
「は~い」
後ろが詰まっているのであまりモタモタするのは良くない。商品を受け取るとすぐに列から抜け、噴水広場に備え付けてある食事用の席に座って食べる。
「ん~! 美味しいねこれ!」
「でしょ~」
初めて食べる異世界の空飛ぶタコの味・食感は、私にとっては新鮮なものだった。例えようがないけど、とにかく美味しかった。
じっくり味わった後、他の屋台の食べ物も食べてみようと思った私たちは、再び歩きだした。照りつける太陽は雲によって隠され、降り注ぐ日光が大幅に少なくなったので日傘を差す必要がなくなったので畳む。
正直この人混みの中を日傘を差しながら歩くのは結構大変なので天気が曇りになったのはありがたい。
そうして次に並んだのは、さっきまでもの凄く人気で待ち時間が驚異の2時間超えだったらしい『ラシューエンの肉と野菜炒め』た。
先ほど通ったときに比べれば並んでいる人の数はかなり少ないが、それでもまだ多い。
待つこと50分、もう並ぶのやめようかと思った時に私たちの番がやって来た。
「おじさん! 肉と野菜炒め2つお願い」
「あいよ! 銀貨1枚と銅貨5枚だ」
「分かった!」
肉と野菜炒めを2人分受け取り、再び食事用の席に向かうが案の定、座るところがなかったので仕方なく立ちながら一緒に食べる事になった。
そうしてじっくり味わいつつ食べ終わると、容器を返却場所に返し、噴水広場周辺を歩き回る事にした。
その途中、有名らしい魔導師が魔法を披露するイベントがやっていたの発見し、興味をそそられたので見ていた。そうしたら何故か壇上に上がる事になってしまった。観客に聞いてみたら、このイベントはそう言う事があるらしい。
「魔法使えるかって聞いて来たのはそう言う事だったわけね。弾幕とスペルカードで大丈夫かな?」
「凄いじゃん! フランちゃん頑張ってね~」
イベントスタッフの誘導の元壇上に上がって軽く自己紹介をした後、通常弾幕にほぼ全種類のスペルカードを披露した。あの魔導師の後だったので不安だったけど、この世界には存在しない為かかなり良い感じの雰囲気になった。
「あんな魔法見たことないよ! あれが弾幕ってのとスペルカード?」
「そうだよ。あれで魔物と戦ったりするんだ。さっき見せたのは威力をかなり控えた奴だけどね」
ミアにも満足してもらえたので良かった。
そうしてイベントが全て終わったので、再び王都を見て回り始める。
1時間位、道中にある店に寄りつつのんびり歩いていると、あの怪しい雰囲気の建物が見えてきた。1周回って来たようだ。
「ん、お客さんかな? 誰か入っていったね」
「どうしたのフランちゃん?」
「あの店にお客さんが入っていくなんて珍しいって思ったんだよね……でも何か妙な予感がするのは何故だろう?」
「良い事なんじゃないの? もし気になるなら行ってみたら?」
「うん。そうする」
お客さんらしき人がワイトのお父さんの店に入っていったのを見計らって私たちも後に続いた。
そうして店に入ろうとした時、ワイトのお父さんと恐らくさっき入って行ったお客さんとの言い争いが聞こえてきたと思えば、突然ドアが吹き飛び、それに巻き込まれて私とミアは怪我を負ってしまった。
「っ! ミア、大丈夫!?」
私は自前の再生能力があるので、かすり傷程度の傷なら直ぐに治るが……
「フランちゃん、大丈夫。このくらいならどうってことはないよ~」
そう言うとミアの腕のかすり傷がみるみるうちに塞がっていき、10秒程で完全に治癒した。とんでもない再生能力だと思った。
「わたし、攻撃力も防御力も弱いけど、回復力なら物凄いあるから。今くらいの軽い傷なら『常時中回復』の能力のお陰で回復魔法すら要らないんだ~」
そんな会話をしていると、今度はワイトのお父さんが壊れたドアから吹き飛ばされてきた。
「ぐぅぅ……」
「な!? ミア、回復魔法をお願い!」
「任せて『エクスヒール』! ん? 毒の状態異常……『メディカルナス』」
そうやってミアが治療を行っていると、店の中から杖をもった嫌な雰囲気を醸し出している白髪のおじいさんが出てきた。
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