フランの異世界召喚記 作:松雨
「着きました皆さん。王都守備隊の待機所ですよ」
アイシェに誘導されて到着したのは、王城の側にある比較的大きな教会のような建物のある場所だった。普段は守備隊待機所の関係者しか入れないらしいが、今回のように事情聴取をする際等は特別に入ることが出来るとのこと。
建物の中を進み、大きめの綺麗な装飾の施された部屋に案内される。
「豪華な部屋だな。事情聴取するにしてはずいぶん好待遇だと思わないか?」
「確かにね。もっと狭いかと思ってた」
「まあ事情聴取と言っても貴方たちが犯罪を犯したわけではないですから。ただ何があったのか詳しく話を聞くだけですし、そもそも今日使える部屋がここしかないというのもありますね」
なるほど。確かに私たちは魔法で戦闘をしたものの、助ける為に戦っただけであくまでも被害者の立場。フォウン会長のように加害者ではない。
それに、そう言う事情がなくても使える部屋がここしかないならここを使うしかないだろう。
なんて事を考えていると、アイシェが隊長を呼んでくると言ってこの部屋を一旦出ていった。
15分後、隊長らしき若い男の人を連れたアイシェがこの部屋に戻って来た。その時剣をもった若い男の人と目が合った一瞬、ゾクッとするようなプレッシャーを感じた。仮に戦うことになったら、剣での戦闘はやめた方が良いだろう。
「あーどうも。僕はえっと……この王都を守る守備隊の隊長してるヤノークと言います。君たちが今回の騒動に巻き込まれたって言う?」
「うん。 私はフランドール・スカーレット、フランって呼んで!」
「わたしはミアです。フランちゃんと一緒にパーティー組んで冒険者やってます」
「俺は今回直接被害を受けた者で、魔導師やってるヴァーレだ」
「僕はワイトです!」
一通り隊長のヤノークとの自己紹介を済ませた私たちは、本題に入った。
「なるほど。フォウン会長がそんな事をしていたのか……」
「ああ、今日だっていきなり店に入ってきたかと思えばヴェノムインフェルノを放ってきて、息子を守る結界を張る代わりに俺がまともに受けて死にかけて、フランたちが偶然居なかったらどうなっていた事か……」
ワイトの父ヴァーレが、今までフォウン会長による策略により受けた事についてを全て洗いざらい話していた。その途中、目に涙を浮かべながらヤノークに対して訴えかける姿を見ると、私なんかが想像出来ないほど辛かったのだろうと言う事が分かる。
何せヴァーレの妻、つまりワイトの母がフォウンの手の者による『モタプルカス』と言う、身体の生命維持に必要な魔力が崩壊していく呪いを多重掛けされて重体に、素早く魔力を供給しながら王都病院に駆け込んだおかげで今も何とか死んではいないが、呪いの術式が複雑怪奇かつ強固な為誰も解除出来ず、常に危険な状況にいると言うのを聞いたからだ。ちなみにそれを掛けた術者は死んだらしい。
「本当に申し訳ない。僕たちがもっと早くにフォウン会長を捕まえていれば……証拠を早くに掴んでいれば!」
「ヤノークさん、あんたのせいじゃない。だから、大丈夫だ」
それを聞いたヤノークは、もっと早くに証拠を掴んでいればこんなことにならずに済んだと悔しがっていた。
少し経って落ち着いた後、ヴァーレがこう質問をした。
「話を変えるが、捕まったフォウン会長はどうなるんだ?」
「うーん。恐らくだけど、今までやらかしていった人たちへの賠償金が白金貨150枚以上、王都内での破壊・殺人未遂に魔道具店に対する恐喝等で多分死ぬまで投獄されると思う」
「そうか……」
ヴァーレが話を終えた後、私たち2人もありのまま起こった事を全て話し、ワイトも言える事は全て話した。
「ヴァーレとワイト。辛い中話を聞かせてくれてありがとう。あ、そうだ。皆もし何か要望があるなら言ってくれ。僕に出来る事があれば何でもしようと思う」
「じゃあヤノークさん、病院の場所を教えて! もしかしたらワイトのお母さん、ミアが何とか出来るかもしれないから!」
「分かった。今から教え……いや、その程度なら僕が案内しよう」
こうして事情聴取を終えた後、もしかしたらミアの回復魔法によってなんとかなりそうな希望が出てきたので、ヤノークに病院まで案内してもらった。
「ちょっと良い?」
「はい。なんでしょうかヤノークさん」
「この病院に魔導師ヴァーレの妻メイが入院しているよねおたほ」
「してますね。それが何か?」
「依頼により、腕の立つ回復魔導師を連れてきたので、どうかメイの元に連れていって頂けないだろうか」
「俺からもお願いします!」
「分かりました。ヴァーレ様がそう言うのであれば」
病院の門をくぐり、受付の人にヤノークがお願いして更にヴァーレもお願いをすると、すぐにメイの元に連れていってもらえた。
そうしてそこにいた寝込んで苦しむ彼女をミアが見たその瞬間、長々と魔法を唱え始めた。どうしたのかと聞くと、これだけ物凄い呪いが多重掛けしてある為、普段使う略詠唱の回復魔法では太刀打ちが出来ないから詠唱をしているとのこと。
「かの者を蝕む呪いよ消え去れ。安寧を与えよ……『ピュリファイ』」
魔方陣が発光し、辺り一面を眩い光が包み込んだ。そうして光が収まり、メイの方を見ると、苦しみで歪んでいた顔が穏やかなものに戻っていた。ミアもそれを見て安心したらしく……
「冗談抜きでキツいよ~。もう魔力がほぼ空っぽだし」
そう言ってきた。確かに、最上級浄化魔法を使っても疲れを見せなかったミアが、冷や汗を垂らしながらフラフラしているところを見ると、今回の呪いを打ち消すのに相当な魔力を消費したのだろうと言う事が分かる。
「メイさん、分かりますか? 苦しみは消えましたか?」
「大丈夫か!? メイ、俺だ!」
一時の沈黙の後……
「……ヴァーレ? 大丈夫、苦しみは消えたから……」
「よ、良かったあぁぁーーー!!」
こうして、数々の回復魔導師が匙を投げた呪いを解除することにミアが成功した。
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