フランの異世界召喚記 作:松雨
「ヤノークさん……あのミアって女の子、我が病院の呼んだどの回復魔導師がなし得なかった事をやり遂げましたよ……」
「ああ、僕もまさかここまでとは思わなかった。魔力崩壊の呪い『モタプルカス』の多重掛け、王都の回復魔導師ですら匙を投げたそれの解呪をたった数分で成し遂げるとは……」
ミアがワイトの母のメイにかけられた呪いを解いた後、周りに居た王都病院のスタッフやヤノーク、別件で来ていた他の魔導師が近づいてきて彼女を称えた。
「貴女凄いわね! 一体どこでそれほどの回復魔法を得たの!?」
「師匠に教わったり、魔導書を漁ったりして得たよ。後はひたすら練習して回復力を上げたり、略詠唱や詠唱破棄でも発動出来るようにしたりかな~。オリジナル回復魔法も1つだけどあるし」
「オリジナル!? どういうのか使って見せてもらえないかしら?」
「呪いを解くのに魔力ごっそり使ったから今日は無理。明日ギルドに来てくれれば良いけど……あ、立ってるのも辛い」
質問されている途中、ミアが立っているのも辛そうにしていたので、2人の間に割って入って話を中断させる。そして側に居たヤノークに頼んで背負ってもらい、全員で病院を後にした。
何処に運べば良いのか聞かれたので、王都のギルドの2階にある宿泊施設までお願いした。
ギルド内に入った時にミアは、既に魔力を多量消費した事による疲れから、ヤノークの背中で眠っていた。
「あ、すみません。今5人分の部屋空いてますか?」
「え、ヤノークさん!? あ、はい。空いてますよ」
「そうですか。じゃあ、銀貨5枚で」
宿泊費用はヤノークが全て出してくれたので、私たちは先に宿泊施設に向かい、眠っているミアをベッドに寝かせた。
外はもう暗く、特にやることもなかったので各自部屋に戻って寝ることになった。私も同じで、夜に出歩くつもりはなかったので寝ることにした。
そして次の日……
「フランちゃん……起きて……」
「ん……あ、おはよう。体調は大丈夫?」
「うん! お陰様でこの通り、絶好調だよ~」
昨日の魔力を多量に消費してフラついていたのが嘘のように回復していたミア。それどころかほんの僅かだが、魔力が増えている気がした。
「ミア、その青い腕輪って何? 昨日は着けてなかったけど」
「これ? フランちゃんが寝てるときに、王国の回復魔導師連合って組織の人が来てね、その人からもらったんだ~」
綺麗な装飾の施された腕輪を着けていたので何なのか聞いてみたら、王国の回復魔導師連合と名乗る組織からもらったと言う。見せてもらったら、腕輪には『王国1の回復魔導師ミアに送る』と刻印があった。
確かに、数々の回復魔導師が匙を投げた呪いをあっさり解いたのだからこの扱いも納得だ。
「ねえミア、突然なんだけどさ、今日王都を出て他の町に行きたいなって思ってるんだけど良い?」
「他の町に? わたしは良いよ、任せるね! じゃあお世話になった人に挨拶しないと」
「確かにそうだね。もちろん挨拶してから行くよ」
そんなようなやり取りをしていると、私の居る部屋に扉をノックする音が聞こえ、ギルドの受付の人が入ってきた。何でも、全身傷だらけの女の人がミアに用事があるらしく、呼びに来たと言う。
「その用事ってなに?」
「オリジナルの回復魔法を見せてくれるってミアさんと約束したから来たらしいですよ。それにしても、そんな物を開発するなんてミアさんって凄いんですね」
そう言えば昨日王都病院でそんなような事を言っていた女の人が居た気がする。まさか回復魔法を見せてもらいたいから、わざわざ傷を作ってきたのだろうか。いや、流石にそれはないか。
とにかく理由はどうであれ、全身傷だらけの人を放っておくわけにはいかないので、その治療の為に下へ向かう。
ギルド1階に降りると、早速その人が座る席の方に私たちは行った。
「あ、ミアさん……どうか私にオリジナル回復魔法をお願いします!
「分かったけど、その傷一体どうしたの?」
「それはですね、考えてみたら回復魔法を見せてもらうにはダメージを受ける必要がありましたので、自分で傷を作ってきました!」
「えぇぇ……」
「……」
まさかの予想通りにわざわざ回復魔法を見たいが為に傷を作ってくるなんて人が存在するとは思わず、衝撃を受けた。
「まあ、取り敢えずオリジナル回復魔法で治療するね~。『ホーリーヴェール・リジェネ』」
ミアがそう唱えると、薄い白色をした光の衣が傷だらけの女の人を優しく包み込んだ。すると、時間が経つにつれて全身のあらゆる所に出来た傷が徐々に塞がっていき、5分も経つとすべての傷が綺麗さっぱり消えてなくなっていた。
「これがオリジナルの回復魔法……」
「そうだよ~。瞬間的な回復力は既存の物に劣るけど、この魔法は持続するようにしてあるから、効果が切れる1時間の間ずっと回復するよ。おまけで状態異常を回復させて、新たに防ぐ効果も付けておいたし」
これほどの凄い魔法を開発してしまうとは、やはりただ者ではない。努力もそうだが、才能がなければこれほどの事は出来ないだろう。
そうしてミア独自の回復魔法をその身で体感した女の人は満足しながらギルドを出ていった。
「よ~し。ミアの用事も終わった事だし、皆さそって朝食取ろう! それに、お別れの挨拶もしないと」
「うん。じゃあわたし、皆を呼んでくるね!」
ミアは2階に行って皆を呼びに行き、私はレイゼとスーファを呼びに行った。少し経って皆が集まると、もう王都を出ようとしている事を話す。
「という訳で、今日私たちは王都を出て他の場所に冒険しに行こうと思ってるんだ」
「そうか。まあ冒険者だし、色んな場所を見て回りたいと思うのも分かる。ただ、どこに行くか決まってるのか?」
「いや、実はまだこれから……」
王都を出ることは決まっていたが、次にどこに行くのかは決まっていなかったので、正直に話す。すると、レイゼが王都から近い町をいくつか候補にあげてくれて、更に地図まで用意してくれた。
それらをよく見て考えた結果、一番近い『シャーム』と言う町に決めた。それでも歩きで行ける距離ではない為、荷馬車を依頼して行くことを勧められたのでそうすることにした。
「よーし! ちょっと待ってろ。今から荷馬車と運転手を借りてくるからな」
「分かった。ありがとう!」
そう言ってレイゼは外に出ていった。待っている途中、何回も断っているのに、こんな女の子2人だけじゃ危ないから俺が護衛してあげようなどと言ってくる面倒な人たちが居たので、仕方ないので殺気で威圧して黙らせた。そのせいで気まずい雰囲気になっちゃったけど。
30分程経った頃、レイゼが借りてきた荷馬車が到着したので乗り込む。
「皆ありがとうねー!」
「「頑張ってなぁ! 死なないでくれよーー!」」
こうして皆の見送りの元、次の町のシャームに向けて出発した。
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