フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、助けた冒険者に二つ名をつけられる

「嬢ちゃんたち、シャームの町には何の目的で行くんだい?」

「特に何かしに行くわけじゃないよ~。ただ単に行ったことのない場所に冒険しに行くだけだし」

「そう。行ったことなくて王都から一番近い町に行こうって考えてて、そこがたまたまシャームの町だったってだけなんだよね」

「なるほどね」

 

 王都を出発した私たちはとある森の、比較的荷馬車が通りやすい森道を進んでいた。運転手の人に聞いたら、魔物がわりと出やすい森ではあるけどここが一番シャームの町に行く近道になるらしい。

 

「あ、そうだ。魔物とか盗賊が出たら金髪の……確かフランちゃんって言ったっけ? よろしく頼むよ。レイゼさんに聞いたけど、Eランク冒険者とは思えない程滅茶苦茶な強さって聞いたからね。仮に怪我したとしてもミアちゃんだっけ? 王国一番の回復魔導師って言ってたし」

「なるほど……もしかして、わざわざ魔物が出やすい森を選んだのって……」

「もちろん、レイゼさんの言っていたフランちゃんの強さを信じてるからだ。でなきゃCランク以上の冒険者数人連れてかないでこんな森通らないぞ」

 

 なるほど。レイゼが私たちの情報をあらかた伝えておいてくれたから、普段は危険で通らないような場所を通っている、つまり魔物が出て来ても大丈夫だと期待されていると言う事だろう。

 

「そう言うことならもちろん、魔物とか出たら任せて!」

「怪我しないのが一番だけど、その時が来たらわたし頑張ります!」

 

 そんな感じで運転手と会話を交わしていると、後ろの方から何かが複数近づいてくるような音がしたので見てみると、イノシシのような生き物が5頭こちらに向けて走ってきていた。獲物か何かだと思っているのだろう。

 このままだと荷馬車に大きな被害が出そうなので弾幕で討伐することにした。

 森に余計な被害を与えないように、1頭ずつ高威力の弾幕で倒すことにしよう。

 

「……それ!」

 

 よく狙いをつけ、放った青色の弾幕はしっかりイノシシもどきを捉え、大ダメージを与えて吹き飛ばす。

 上手く行ったので2頭目以降も同じように弾幕を放って倒し、少し外したものの、襲ってきたイノシシもどきは全員討伐した。

 

「流石だね~」

「うん。森への被害も殆んどないし、上出来だね」

 

 そうして襲ってきたイノシシもどきを討ち取って、しばらく森の中を順調に進んでいると急に荷馬車が止まった。その勢いでミアと一緒に仲良く、顔から床にダイブしてしまった。

 

「痛ったぁ……」

「フランちゃん大丈夫?」

「うん。でも急にどうしたんだろう?」

 

 不思議に思っていると、運転手の人と男の人が話すこんな声が聞こえてきた。

 

「おい、危ねぇ……どうしたその傷」

「ご、ごめんなさい! 実は、襲われてまして……」

「襲われている?」

 

 話を聞いていると、どうやら盗賊がこの先で出没したらしい。で、その盗賊とテイマーと呼ばれる人が使役する限りなくBランクに近いCランクの魔物『オーガ』6体に襲われ、仲間がどんどんやられていったと言う。何とか助けを呼ぼうとしていた時にこの荷馬車を見つけ、すがる思いで接触を図ってきたと言う。

 

「ふむそれなら……フランちゃん、ミアちゃん。と言う訳なんだ。大丈夫かい?」

「大丈夫。どうせそこ通るのに邪魔なのなら、その人たちが居なくてもやらないとダメだろうし」

「わたしは回復だけなら良いよ~」

「なんだか知らないけども、ありがとうございます!」

 

 そうして私たちは男の人の仲間を襲い、シャームへの道を塞ぐ盗賊とオーガと呼ばれる魔物を排除するべく、荷馬車で近くまで男の人を乗せて向かうことになった。

 

「居ました、あれです!」

「うわぁ……何この絶望的な戦力差」

「フランちゃん、早く行こう!」

「うん!」

 

 少し開けた場所に出ると、2人の冒険者が10人の盗賊と7体のオーガに襲われているのが見えた。1体オーガが増えている。

 側には負傷して倒れている人が2人、このまま治療しなければ死んでしまうだろうが、周りの敵が邪魔すぎる。

 

「森への被害を考えてる場合じゃないよね……『禁弾 過去を刻む時計』!」

 

 青い十字型レーザーに小さい赤い玉の弾幕を織り混ぜて敵の集団に放つ。赤玉に気をとられている隙に十字型レーザーは縦に回転しながらオーガの群れを通過、3体を真っ二つにして1体の腕を斬り飛ばし、一気に戦力を削ぐことが出来た。

 

 盗賊にはこれを使うわけにはいかないので、通常弾幕と他のスペルカードで対処する。

 

「うわぁぁー!! オーガが真っ二つに……」

「なんだ今のは!?」

 

 過去を刻む時計でオーガの半分を排除した事により、ずいぶん混乱しているみたいだった。

 その隙に通常弾幕を、負傷者や戦闘中の冒険者に気を付けつつばらまきながら接近する。

 

「な、なんだお前は!」

「えっと……今貴方が襲っている人たちの仲間に助けてって言われただけの冒険者だよ盗賊さん」

 

 そう言うと、ソイツが私に向かってナイフを持って襲いかかって来たのでそれを弾幕で弾き、よろけた隙に蹴って吹き飛ばして気絶させる。

 隙をついたテイマーがけしかけてきた残りのオーガは、火力控えめの『禁忌 レーヴァテイン』で排除した。

 

 その光景を目の当たりにした残りの盗賊が逃げようとしたので……

 

「これだけの事しておいて、自分たちだけ逃げられると思った? ずいぶんおめでたい人たちだね」

 

 思いっきり殺気で威圧してあげたら全員大人しくなったので、少し離れた所にいるミアと運転手を呼んだ。

 

「ミア、終わったから負傷してる冒険者たちを治してあげて!」

「分かった!」

「運転手さん、あの盗賊を何かで縛り上げてもらえる? シャームの町で引き渡すから」

「了解。それにしても凄いなぁ……」

 

 そうして威圧で大人しくなった盗賊たちを縛って荷馬車に放り込み、負傷者をミアの回復魔法で治した後、荷馬車に乗り込んだ。元々広かった為乗り込むことが出来たものの、冒険者や捕まえた盗賊込みで20人近くは流石にキツい。

 

「あ、どうも。紅魔の少女様、助けて頂いて感謝です!」

「蒼銀の天使様も、怪我を治していただいてありがとうございます」

 

 道中助けた冒険者から妙な二つ名をつけられて呼ばれていた。町の中に入った時までそう呼ばれても困るので、自己紹介を軽く済ませる。

 

 そうして予定を大幅に過ぎて森を抜けて夕方になった頃、ようやくシャームの町に到着した。

 

 

 

 




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