フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、地竜の親子と相対する

「何この状況……取り敢えずミア、治療をお願い」

「分かった。はいみんな、治療するから退いて」

「ちょっと嬢ちゃん! 今重傷の人の治療中……あ、その腕輪王国一の回復魔導師に送られる奴ですよね。失礼しました!」

「こりゃ派手にやられてるね。『エクスヒール』!」

 

 上級回復魔法を唱え、大怪我していたあの時の男を治療したミア。周りの人が流石王国一の回復魔導師だと褒めてくれていたので、自分の事じゃないのになんだか嬉しい気がした。

 

「さて、あんた。一体何があったのか教えてもらおうか」

「ああ。実はな……」

 

 男の説明によると無理やり依頼を受けた後に、指定の場所に準備をしてから行ってリトルグランドドラゴンと戦えたまでは良かったものの、想定以上の物理耐性に苦戦していたらしい。

 で、それだけならまだ問題なかったみたいだが、更にとある魔物が出現したせいでこの大怪我を負う羽目になったと言う。

 

「アイツの親竜が出てくるなんて冗談じゃねえよ!! 2体同時に相手なんて鬼畜だろ! 偶然通りかかったAランク冒険団が居なきゃ死んでたわ俺」

「リトルグランドドラゴンの親竜ってまさか、Aランクの魔物の『グランドドラゴン』!?」

「ああそうだ! ってか、グランドドラゴンしか居ねぇだろお前馬鹿か?」

「馬鹿はお前だざまあみろ! あんなことするから天罰食らったんだ。死ななかっただけありがたいと思え」

「なんだとぉ!?」

 

 今にも乱闘騒ぎに発展しそうなこの状況にどうするか判断しかねていると、声を上げた人が居た。あの男が言っていたAランク冒険団『バスター』と名乗る5人のリーダーだ。

 

「今はそんな事で争っている場合じゃありません! 負傷者も居たのでひとまず逃走用魔法煙幕弾で何とか逃げれましたが、このまま放置するわけにはいきませんので、僕らと一緒に何人か……」

「それじゃあこの2人とかどうだ? 1人は王国一の回復魔導師ミア、もう1人は王都で凄い奴だと噂の少女冒険者フランだ。聞いたことないか?」

 

 私たちに関する噂を聞いたことのある人が、あのAランク冒険団と共にグランドドラゴンを討伐するメンバーに推薦してきた。まあ、最初から行くつもりではいたのでありがたいけど、果たしてこの人たちがどういう判断を下すのか気になった。

 

「申し訳ないですが、私たちはまだ王都に行ったことがないので知らないですね。そんなに凄いのですか?」

「話せば長くなるんだが……」

 

 噂を知らない彼女たちが知ってる人にどう凄いのか聞くと、あれやこれやとどんどん話が盛られていって、最終的には私に相対した者は全て火剣で爆殺されるとまで言われた。

 

「いや、そこまではしないって! まあ、魔物が後ろから不意討ちしてきたら分からないけども」

 

 流石にこれ以上話を盛られると困るので、会話に割り込んで盛られた部分を訂正しに入る。

 その後の話し合いの結果、グランドドラゴン討伐隊のメンバーに私たち2人が参加することに決定した。

 

「と言う訳でフランさん、ミアさん。よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします!」

「回復だけだけど、わたし頑張ります!」

 

 早速準備を始め、念には念を入れて逃走用の魔法煙幕弾を用意して、出発した。

 

 途中まで荷馬車で向かい、その後は歩きでグランドドラゴンが占拠していると言う通商路に向かっていると、耳をつんざくような咆哮が上空から聞こえた。

 

「来たぞ、グランドドラゴンだ! 戦闘態勢を取れ!」

 

 見ると、凄い大きな濃い茶色の鱗を持つ竜と一回り小さい竜がこちらに向かって急降下して来ていた。

 試しに通常弾幕を戦闘仕様で放つが、案の定あまり効果がなく、突撃を止められなかったのでその場から離れる。少し経った時、さっきまで居た場所に竜たちが降り立った。

 

「こんなんじゃ効果ないか。仕方ない、周りの被害を考えてたらやられてしまう。『禁忌 レーヴァテイン』!!」

 

 全力を込めた炎を纏わせ、大きい方を一旦バスターの人たちに足止めしてもらい、小さい方に斬りかかる。

 回避行動をとられたが、腕1本を斬り落として胸の鱗に切り傷を与えた。

 

「ガァァァァ!!」

 

 その瞬間、大きい方が激昂してバスターの人を蹴散らし、こちらに向かって来た。

 

「それ! ほーら!」

 

 鋭い爪による攻撃を避け、避けきれない分はレーヴァテインで受け止める。巨体による攻撃力は凄まじく、受け止めただけで全身に鋭い衝撃が走った。

 

「流石ドラゴン、強い! だったらこっちも戦闘仕様の全力スペルカードで行くよ……『禁弾 スターボウブレイク』!」

 

 私の翼に付いている魔法石のような形をした色とりどりの弾幕を空高く打ち上げ、ドラゴン親子の元に雨が降っているような感じで落下させる。

 それを大きい方が上空に向けて土属性のドラゴンブレスを放った為、半分程度を消されたが、残りの半分はしっかり当てることが出来た。

 

 そこそこのダメージは与えられたみたいで、所々から出血している。

 

「凄い……何て魔力と身体能力なの? あの人の言っていた王都で噂の少女冒険者ってのは本当だったようね」

「ミアさんだって凄いぜ。この光の衣を纏わせる回復魔法、受けた傷が自動で回復するんだ。こんな魔法見たことないぞ」

 

 蹴散らされたバスターの人たちもミアのサポートによって小さい方に対して優位に立ち回れているようで、このまま行けば討伐は上手くいくだろう。

 

「フランさん、小さい方は任せて下さい! 申し訳ないですけど大きい方、お願いします!」

「分かった、任せて!」

 

 こうしてリトルグランドドラゴンはバスターの人たちとミアで、グランドドラゴンは私でと言う図式が出来上がった。後ろから不意討ちで襲われる心配がなくなり、戦いやすくなったのでありがたい。

 

「さて、次行くよ!『禁忌 カゴメカゴメ』」

 

 時折くる鋭い爪による攻撃や土属性魔法を避けつつ、スペルカードを使う。

 前使った時よりも弾幕の密度・威力・速度を大幅に上げ、本気で仕留めにかかる。

 スターボウブレイクで与えた傷を更に広げ、鱗の薄い部分を貫通したりさせる等、かなりのダメージを追加で与えることが出来た。

 

 このままスペルカードを連発すればいけるだろうと思っていた時、グランドドラゴンが予備動作なしでドラゴンブレスを放ってきた。直撃コースだった。

 

「油断した! えっと……『マナの衣』!」

 

 咄嗟にもらった魔導書の防御系魔法のページに書かれていた魔法を唱えた。簡単な魔法みたいなので奇跡的に発動はしたものの、練習をロクにせず、本を見た程度の知識で魔法が持続するはずもなく、ブレスの途中で解除されてしまった。

 

「ふぅ……」

 

 ダメージをそこそこ負ったものの、ドラゴンブレスを何とか耐えきる事に成功した私は、切り札となるスペルカードを使う。

 

「危なかったよドラゴンさん。でも、これで終わらせてみせるよ……『秘弾 そして誰もいなくなるか?』」

 

 90秒間絶対無敵になるスペルカード、私の切り札を使う。

 突然攻撃対象の私が消えた為か、辺りをキョロキョロし始めたグランドドラゴン。

 

「食らえ!」

 

 翼を展開し、空中を飛びながらひたすら弾幕を全力で発射する。たまにドラゴンブレスが空中を飛んでくるも、見当違いの方向の為気にせず発射し続ける。

 

 そして90秒が過ぎてスペルカードの効果が切れた頃、遂にグランドドラゴンを倒す事に成功した。

 ミアたちの方も見てみると、リトルグランドドラゴンが倒れているのが見えた。

 

 こうして無事に誰も欠けることなく討伐を終える事が出来た。

 

 

 




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