フランの異世界召喚記 作:松雨
新たなアンケートもするのでそちらにも答えて頂ければ助かります。
※タグの削除、追加をしました
「サラ、魔法大会もうすぐだな」
「ああ……うん、そうだねアルゼ」
「で、どうなんだ? 今年の
「えっとね、参加校の殆どははっきり言って雑魚。注意するべきはオウラン魔法学園とマナミア学園だけだよ。ただ……」
王国内学園対抗の魔法大会まで残り1週間を切ったある日、ボクはアルゼのお願いで毎年恒例のライバル偵察に勤しんでいた。相変わらずうちの学園以外の3強と呼ばれる学園以外は弱く、問題なく勝てそうだった。
ただ、3強の中の1つ、最後のオウラン魔法学園をかなりの魔力を隠蔽に回すと言う危ない賭けをして偵察に行った時、凄い光景に遭遇した。
「オウラン魔法学園に強力な魔法を使う魔導師の少女がいてね、防壁に弾かれた中級魔法を見たことない無詠唱魔法であっさり相殺してたんだ。あの子は危険すぎる。もしかしたら負けるかもしれないってボクは思った」
「お前がそこまで警戒するとはな。その少女とは一体何者だ?」
「金髪で紅い瞳、妙な帽子に半袖とミニスカート、紅い日傘を差していた子だったよ。名前は――」
聞こえてきた名前を言おうとした時、アルゼが頭を抱え始めた。どうしたのかと聞いてみたら何とあのフラン、もといフランドール・スカーレットと言う少女はここ最近急に出て来て活躍をしている冒険者だと言う。具体的には王都で暗躍していた強盗捕縛のアシスト、フォウンやその部下の襲撃を余裕で抑える等だ。
それだけならまだしも、先日とうとう2頭のグランドドラゴンを同時に
「冒険者界隈じゃかなり噂になってるらしい。一般にも噂が浸透し始めているらしいぞ。知らなかったのか?」
「だって興味ないもん。まあとにかく、そのフランって子がボクの想像以上に凄い事は分かったよ」
「ああ、それで良い。で、それほど厄介な冒険者がオウラン学園に居た。恐らくそこの生徒に魔法を教えにやって来たという事だろうから、そこでサラに頼みがある。彼女がもっと厄介な何かを持っていないか、生徒の誰かに魔法を伝授しているか偵察してきてくれ」
「ええ……もう疲れたからやりたくないんだけど。てか、アルゼが行けば良いじゃん。今までずっとボクがやってきたんだし」
正直、隠蔽に魔力を使ったせいでクタクタだ。今から宿によってご飯を食べた後に風呂に入って寝たい。
と言うかお前が行けよとも思ったが、美味しいものを好きなだけやると言う餌に釣られてしまったボクは、結局偵察に行くことになった。
「あ、そもそも居場所を探してからじゃないと話にならないじゃん。冒険者だからギルドにでも居てくれたら良いけど、居なかったら……はぁ、面倒臭いなぁ~」
そう愚痴をこぼしつつ、取り敢えずギルドに向かう。頼むからいてくれぇー! と心の中で叫びつつ入ると……
(よし、居たぁ!)
運が良かった。フランともう1人の少女、腕輪を見ると王国一の回復魔導師に送ると彫ってあった。よく考えたらあの時も居たのだけど、フランのインパクトが強すぎて忘れていた。
さて、見つけたは良いもののこのまま話しかけて云々などとするのは愚か者のする事だ。幸いにも側に空いている席があったのでそこに座り、飲み物を飲みながら2人の会話を盗み聞きする。
「暇だねフランちゃん」
「うん。確かジェノの授業が終わるのって夕方だっけ? それまでやることないし、魔法の練習でもしようかな。でもそうするとミアが暇だよね……」
「わたしは少しなら暇になっても良いよ。弾幕って見てるだけでも綺麗で、割りと楽しめるし」
ジェノと言う人物を待つ間、魔法練習場に行って魔法の練習をするようだ。これは彼女の手の内が少し分かるかもしれない。なのでボクはこっそり後をつけていき、怪しまれないように自分も適当に魔法を放つ。
(あ、これ絶対にジェノって人オウラン学園の人だよね。て事は彼女が魔法を教えているのは確実。どうかその人が魔法大会に出ませんように……)
叶うはずもない事を心の中で願いながら基本の復習をしていた時、突然耳をつんざく音が聞こえた。恐る恐る音がした方に向いてみると、そこには燃え盛る炎剣を地面に叩きつけて、恐ろしい殺気をミアと言う仲間の少女の腕を掴む男に放つ彼女が居た。
状況から察するに無理やり連れ去ろうとしたのがバレ、止められたのだろう。
(物凄い魔力と殺気、これならグランドドラゴンを2頭同時に相手取って討伐したって噂も納得かもしれない)
その後、彼女は殺気で硬直している男から仲間を救い出して安全な場所まで退避させると、『禁忌 カゴメカゴメ』と言う緑色の光弾で対象を囲んでから大きな弾を放ち、それで弾いた緑色の光弾で全方位から攻撃する魔法を発動させた。
(うわぁ……半殺しとは容赦ないね。まあ、相手の男には同情しないけどさ。あ、騎士の人でも呼んどいてあげるかな)
思わぬ所で力の一片を見ることが出来たのは収穫だけど、それでもし彼女が罰せられるようなことがあればなんか嫌だなぁと思ったボクは早速町の警備兵の居る建物へ向かい、ギルドの魔法練習場にて誘拐未遂が発生したことを伝えた。
「と、言う訳です。ボクは見ました」
「そうですか。今すぐ向かいましょう!」
「しっかし、そいつもバカだなぁ。そんな事すればフランちゃんの逆鱗に触れる、ちょっと考えりゃ分かるだろうに」
「あの2人、仲良さそうでしたしね」
「知らなかったんじゃないですかね? 見た目10代前半かそれ以下ですから、舐めきっていたとか」
信用してくれて良かった。それにしても、警備兵士たちの彼女に対する信用が凄い。なぜそんなに信用しているのか凄く気になったので聞いてみると、町に来た時に荷馬車一杯に盗賊たちを詰め込んで引き渡してきて、通商路占拠していたドラゴンを討ち取ってくれたからと言った。
(何か勝てる気がしなくなってきたのは気のせいかな?)
心の中で考えながら警備兵士たちと共にギルドの魔法練習場に向かう。
ボクが彼らを呼んできた後は、周りの人たちの証言もあってトントン拍子に話が進み、誘拐未遂のマヌケは捕まって連れていかれた。彼女はやり過ぎだと注意され、壊れた場所の修復費用の3分の1の負担程度で済んだ。
その後、彼女たちはここでの練習を中止して、ギルドの休憩スペースに用意された椅子に座った。
「フランちゃんありがとう! わたしを助けてくれて」
「何言ってるの? ミアは仲間でもあり、友人でもあるんだから当然だよ!」
「ふふっ」
(仲良いね~)
そんな事を考えて居ると、彼女の元に2人の男女が合流してきた。服装を見るに、オウラン学園の生徒だろう。
「あ、フランさん。先生に無理言って早めに切り上げてもらったので今来れました」
「そうなの? で、ジェノの隣に居る人は君とあの時戦って勝った……」
「シルフィオですフランさん。ジェノ君に聞いて私も教えてもらいたいと思った次第です」
「あ、うん。分かった。でも、2人一気に教えるのは初めてだからちょっとあれだけど大丈夫?」
「問題ないです。ジェノ君にも教えてもらうので」
「え!?」
会話を交わしながらギルドを後にする彼女らをこっそり後をつけていくと、そのまま町の外に行って少し開けた所で練習を始めた。
弾幕と呼ばれる魔法の戦闘での扱い方、それの上位互換のスペルカードと言う攻撃、厄介な魔法だ。
合流したあの2人もかなりのやり手らしい。しかも彼の方は弾幕をある程度使いこなしている。これはボクたちも最高に気を引き締めようと決意した。そして日が沈みかけた頃、うっかりくしゃみを豪快にしてしまった。
「誰かそこに居るの?」
(あ、バレた。これはひとまず引き上げないと不味いね)
そうしてボクはなけなしの魔力で隠蔽魔法を発動させ、何とか逃走する事に成功した。
その後アルゼの待つ宿に行き、これまでの事を全て報告した。
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