フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、冒険者となった瞬間に絡まれた

「へぇ~。嬢ちゃん冒険者になるのか」

「まあね。知り合いからもらった魔法石のお陰でしばらくは宿泊まりでも良いけど、いずれそうする訳にもいかないしそれに、世界を見て回りたいからね」

 

 ひとまず最低限この世界で生活していくのに達成必須の目標、お金の調達とと日傘の購入を達成した私は、最後の冒険者登録をする為にギルドに向かっていった。

 日傘の店を出てすぐ、通りがかった荷馬車の運転手にギルドの場所を聞いたら、偶然その近くに用事があるらしく、ギルドの近くまで乗せてってもらえる事になった。

 

「……でもな嬢ちゃん、冒険者は危険な職業だぞ。薬草採取の依頼とか近場へ届け物の依頼ならまだしも、ランクが上がっていくにつれて受けることになる魔物の討伐依頼だと、下手すれば死ぬ事だってある。それに、護衛依頼じゃ対人戦だってやるかもしれないぞ?」

「うん。それでもやるつもりだし、覚悟はしているよ!」

「そうか。そこまで言うなら止めんが……まあ、死ぬなよ」

 

 そう話をしていると10分程経ち、ギルドの近くまで到着したのでそこで降り、買った日傘を差して冒険者ギルドへと向かっていく。

 途中、行く人々の視線を感じる回数が増えてきた気がする。日傘を差して歩くのがそんなに珍しいのかな? まあ、確かに日傘を差してる人はほとんど見かけないけど。

 

 そんな事を考えながら探すこと5分、看板に『冒険者ギルド』と書かれている建物を見つけたので中に入る。

 

「凄い人だかり……まるで幻想郷でやった宴会みたい!」

 

 冒険者らしき人以外にも若い人間の男女からお年寄り、見た目が人間以外の種族の人たちが賑やかにお酒を飲みながら盛り上がっていた。

 

「えっと……あの耳が長い人がエルフで、背が小さくてヒゲが濃い人がドワーフだったよね? パチュリーの図書館にあった本に書いてあったから合ってるはず。私と同じ吸血鬼は……居るわけないか。昼間だし」

 

 幻想郷には居ない種族の人たちを見て好奇心が刺激されていた。それにしても、あの人間至上主義で人外嫌いの王様が居る街の事だから人以外の種族は殆ど居ないかと思ったけど、そうでもないみたい。自分の視界に入らなきゃ良いって感じなのかな?

 

 そんな事を考えながら、冒険者受付と書かれた紙が貼られている場所に向かい、受付の人に声をかける。よく考えたらこの世界の文字を私は知らないはずなのに、読めると言うのも不思議だよなぁ。

 

「どうしたの? あ、冒険者に?」

「そう。お願いできる?」

 

 数秒の間、彼女が私をじっくり見た後……

 

「分かった。じゃあこのカードの裏に名前書いたらそれに貴女の魔力を流して。それで登録は完了するから」

「はーい!」

 

 面倒な手続きでもあるのかと思ったら、カードに自分の名前を書いた後にちょっと魔力を流すだけで登録が完了するらしいので、言われた通りにやった。すると、魔力を流したカードが淡い光を放つ。

 

「これで登録は終わり。あ、そうしたらランクの説明だね」

 

 彼女によればランクにはF~Sまであり、登録したばかりの初心者はFから始まり、そこからCランクまでは依頼を一定数こなすことで上がり、以降のBランクからはそれに加えて試験官による昇格試験を受ける必要があるらしい。

 その他にも半年依頼を受けなければ問答無用で冒険者カードが失効、やむを得ない場合以外で冒険者同士でやり合った時は程度により失効か降格となるとの事だった。

 

 15分間の説明が終わり、晴れて冒険者となる事が出来た私は早速依頼を受けようとクエストボードと言う、今受けることが出来る依頼が貼り出されているの方に行こうとしたら……

 

「お前みたいな雑魚ガキには冒険者なんてまだ早い。家に引っ込んで寝ていればいいんじゃないの~」

「そうだな、ガハハ!」

 

 いきなり失礼な発言をしてきた男2人に割り込まれてしまい、依頼を受ける事が出来なくなってしまった。

 と言うか私、あの男たちよりはずっと年上なんだけど。

 構うのも面倒になってきたので、適当にあしらう事に決めた。

 

「いきなりなんなの……邪魔だから退いてくれない?」

「あ?」

「だから邪魔なの。退いて?」

「うるせぇ!」

「はぁ……依頼受けるのに邪魔、だから退け」

「……」

 

 こりゃあ駄目だ、埒があかない。さてどうしようかと考えていると……

 

「じゃあ、そんなにフランちゃんが雑魚ガキだと思うのなら戦ってみてくれない? それで彼女が負けたら依頼を諦めてもらう、もしお前たちが負けたら依頼を彼女に受けさせて然るべき罰を受けてもらう。それで良いだろう?」

「上等じゃねーか! あんな雑魚一撃で捻り潰してやるさ!」

「よし、決まりだな。あ、それとフランちゃんごめんね。勝手にこんなこと言って。でもきっと、貴女なら大丈夫」

「え? あ、うん……」

 

 冒険者登録した時に対応してくれた人が、あの面倒くさい2人に対して私との戦闘を提案し、勝った方の要求を受け入れると言った所、相手はやる気のようだったので私も参加することになった。

 正直戦うしかないなと思っていたので、彼女の提案はこちらにとっても都合が良かった。

 

「じゃあ3人共付いてきて。裏にある魔法の練習場で戦ってもらうから」

 

 彼女の誘導の下、この建物の裏にあると言う魔法の練習場に到着した。

 

「この戦いのルールは相手を戦闘不能になるか降参するまで追い詰めた方の勝ち。それで良いね?」

「ああ。もちろん」

「うん。分かった」

「では、戦闘始め!!」

 

 そう彼女が言った瞬間、相手が拳で先制を仕掛けてきたのでこちらも拳で対抗した。

 

「互角だと……」

「そんなわけないでしょ!」

 

 相手の拳を受け止めた左腕に更に力を入れて弾き飛ばした所に弾幕ごっこ仕様の通常弾幕を雨あられのように叩き込む。

 そのタイミングでもう1人の男が剣で斬りつけて来ようとしたので攻撃を中断して回避、弾幕を高密度広範囲かつ無造作にばらまいて牽制しながら距離をとる。

 

「くっ……この光弾、流石に数が多すぎないか!?」

「確かに高密度に展開された光弾ではあるが、避けられないほどでもない。威力も低めだから、回避しつつ被弾しそうなやつだけ叩き落とすぞ」

 

 やはり、弾幕ごっこ仕様の通常弾幕だと威力不足か。そう思った私は、スペルカードを使って勝負を一気に決める事にした。

 

「早く冒険したいから、そろそろ終わりにさせてもらうね!」

「「何ぃ!?」」

「……『禁忌 カゴメカゴメ』」

 

 あの2人の周囲に網目状に弾幕を展開、行動範囲を大幅に制限する。

 

「閉じ込められた!? だがしかし、こんなもの……ぎゃあぁ!!」

「あ、言っておくけどその緑色の弾幕、さっきの奴より威力高いから舐めてかかると痛い目見る……もう遅かったね」

「ちぃぃ!」

 

 そうして仕上げに大きい弾幕を数個扇状に放ち、網目状に展開した弾幕にぶつけて弾く。

 弾かれた緑色の弾幕が更に他の奴を弾き、それが繰り返された結果彼らの周りは地獄の状況になっていた。

 

「おいちょっと不味いぞ! アイツの言った通り、あの威力の光弾はさっきの奴より威力がかなり高い。どうにか全部回避だ!」

「四方八方から襲いかかってくるのに全部回避って言っても……ぐぁ!」

「あ、やべ。剣が折れた……」

「マジかよ!? さっきより光弾の密度が増してきたのにそれはヤバ……あぁぁぁぁ!!」

 

 最終的に、四方八方からランダムに襲いかかって来る弾幕に対処仕切れなくなった彼らがまともに受けてしまって気絶し、この勝負は私の勝利となった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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