フランの異世界召喚記 作:松雨
「よし! ジェノたち優勝、やったぁ~!」
「良かったねフランちゃん!」
大会も無事にオウラン学園の優勝で終わり、それに伴って警備の仕事も終わったので報酬を受け取る為、ギルドに私たちは居た。結果を残せた安心感と、純粋にジェノたちが優勝して嬉しい気持ちが混ざり合い、思わずミアだけでなく近場のおじさんにもハイタッチをしてしまい、戸惑わせてしまった。
「嬢ちゃんら、随分オウラン学園の方を持つじゃないか。知り合いでも居るのか?」
「うん、2人居るよ! 試合も見に行ったし!」
「フランちゃんの教えたオリジナル魔法が凄く役に立ったみたいだったし」
「へぇ~。そりゃあ嬉しいわな」
そんな会話を冒険者の人たちと交わしながら私は、せっかくルービエの町に来たのだから観光でもしようかと思った。なので彼らと別れて外に出ると、そこにはジェノにシルフィオ、後ろには30人近くのオウラン学園の生徒たちが居た。
「良かった……まだ居ましたね」
「え!? ビックリしたぁ~。シルフィオにジェノ、どうしたの? 沢山居るけど……」
「優勝出来たお礼を皆でしに来ました。今回の決勝戦の相手のサラって子、弾幕とスペルカードなければ多分厳しい物になっていたでしょうし」
どうやら、わざわざ観戦しに来たクラス全員で私にお礼を言いに来てくれたらしい。律儀な人たちだ。
なので私も最大級の賛辞を送った。
「シルフィオにジェノ、そして大会に出た人たちご苦労様! そしてオウラン学園の皆優勝おめでとう!」
「「「ありがとうございます!」」」
そうしてジェノたち総勢31名の生徒たちは去っていった。
「あんなに喜んでもらえて良かったね。それに、これが実績になって他のこう言う類いの依頼を受ける時に有利になるかもねフランちゃん!」
「確かに。ただ、慣れないことやったせいかなんか疲れたよ。今回はたまたま上手く行ったけど、次もこう上手く行くか分からないからしょっちゅうあると困るなぁ~」
「まあ、確かにね」
彼らが去っていった後、いつものような感じでルービエの町を歩きながら会話をする。隣国が近いせいか、この国の人たちと違う格好をした色々な種族の人たちをよく見かける。
カーテンド王国を冒険しつくしたら次は『ノストライト皇国』かなぁ。そんな計画を立てていると、細い路地裏の方から何やら人の言い争う声が聞こえてくる。それだけならまだ良かったけど、なんか殴る音や燃えているような音まで聞こえて来た。
「ねえフランちゃん、これ不味いんじゃないの?」
「うん。火事なんかになったら大変だし、誰かが殴られてるみたいな音もする。行こう、ミア!」
取り敢えず放っておいたら不味そうだったので路地裏へと向かう。その時、私の側を歩いていた人の数人が苦虫を噛み潰したような顔をしてこちらを見ていたが、そんな事は気にしない。
そうして音のする方向に向かっていって見たものは、複数の人間に殴られてる女の子とそれを守って必死に立ち向かっている男の人が居た。女の子の方は身体から煙が出ていて、男の人の方は全身傷だらけで、どう考えても明らかに形勢は不利である。
(あの女の子……私と同じだ!)
しかもあの女の子、
「オマエたち、寄ってたかって弱いもの虐めか? いや、状況から見て殺しか。全く、やることがまるで人間じゃないな。醜い」
いきなり弾幕を撒き散らす方が楽ではあったが、建物が密集しているこんな場所でそんな事をしたら大変なことになる。なので、まずは殺気と威圧で相手の動きを止める作戦に出る。かなりの強者や、恐怖に対する耐性がそれほどでなければこれで済むけど……
「っ!? クソッタレ! 紅魔の少女に蒼銀の天使の2人組に見つかるとはな」
「か……身体が動かねぇ」
「ええい! こうなりゃヤケクソだ!」
大半はこれで制圧が済んだものの、一部が私を殺そうと向かってきた。
「そっちから来てくれるのなら都合が良い……ほらっ!」
「ぐがぁ……」
「うぐっ!」
「んぁぁ……」
幸いにも向かってきた敵は大したことはなく、一発腹に拳を叩き込んであげるだけで気絶してくれたので助かった。
そうして捕まえられる人だけ気絶させて縛り上げた。全員捕まえられなかったのが心残りではあるが、仕方ないだろう。
「君、大丈夫……じゃないよね。ミア、行ける?」
「魔浄の状態異常になってるけど大丈夫、行けるよ……『メディカルナス』」
ミアがそう言うと、苦しんでいた女の子の顔が緩んだ。状態異常の解除に成功したようだ。
「……あ」
「ヴァーミラ!? 良かった……」
「男の方、貴方もひどい怪我ですね……今すぐ回復を」
「本当に感謝しきれません。有難うございます!!」
そうして男の人の方にもエクスヒールを掛け、全身の傷を癒すことに成功した。女の子の方は流石吸血鬼だけあって、再生能力のお陰で傷も塞ぎかかっていた。
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