フランの異世界召喚記   作:松雨

32 / 83
フラン、厄介事に首を突っ込む

「一体何があったのでしょうか? あの様子から見て、ただ事ではなさそうでしたが」

「私たちルービエに来てからまだ日が浅い冒険者だし、ここの事情知らないからもし良ければ教えてくれないかな?」

「……もし俺に何かあったら、ヴァーミラの事を頼まれてくれるのであれば教えます」

 

 なんだか厄介事に首を突っ込んだような気がしたけど乗り掛かった船だし、それに同じ吸血鬼として見捨ててさようならと言う気にはならない。

 ミアにどうしようかと聞いてみた所、『この国を回る上で重要な情報が手に入りそうだし、わたしもフランちゃんと同じで見捨ててさようならは出来ない』と言ってきたので、男の人の問いに対して肯定の意を表する。

 

「ありがとうございます! では早速説明を……」

 

 そうして男の人が話してくれたのは、この国が何故吸血鬼に対してのみ必要以上に嫌悪感を示しているのかについてだった。

 要約すると、ルービエの町から割りと近い場所にある『常闇の森』の最深部の館に住む吸血鬼『ギラムス伯爵』とその一家が散々やらかしてくれたせいだとの事らしい。

 

「討伐隊も行きましたが、館に到着する前に出てくる魔物がかなり強いらしくて消耗、館に到達してもギラムス伯爵一家のエグい歓迎が……」

「で、討伐が出来ずに今は対吸血鬼用に作られた『ルーバヌ砦』って場所を挟んでにらみ合いと」

「はい。掲示板にそう張り出されていました」

 

 なるほど。道理でこの町でよく聖職者を見かける訳だ。しかし、ギラムス伯爵って言う自分たち一家以外は例え同族でも糞だと言う思想を持つ奴が散々しでかしてくれたせいで、何もしてない吸血鬼まで一緒くたに見られ、理不尽な暴力に晒されるのは嫌だな。

 

 それに自分だって吸血鬼だし、何かの拍子に種族がバレたらどうなるか分からないよなぁ。そんな事を考えていると、ミアが話しかけてくる。

 

「フランちゃん、この縛って捕まえた人たちはどうするの?」

「取り敢えず、この町の警備隊に引き渡すかな。あ、でもそれまでにちょっとした仕返しを……」

 

 私は奴らを叩き起こした後、警備隊に引き渡すまで道中でいろんな人に今までにヴァーミラにした行いを無理矢理謝罪させまくった。

 

 ついでに他にやらかした事があれば謝れと言って威圧したら本当にあったらしく、悪事がどんどん出るわでるわで驚いた。

 この様子に顔をひきつらせる人もいれば、怒りを燃やしている人や、親の敵とばかりに殴りかかってくる人も居たが、こんな奴の為に犯罪者にさせたくないので流石にそれは止めた。

 

「これは……社会的にこいつ死にましたね」

「まあ、これくらいが妥当でしょ。正直もっと物理的にお仕置きをしたかったけど、色んな意味で不味いから止めておいたんだよね」

「なるほど」

 

 そうして警備隊の元まで行って縛り上げた人たちを引き渡した後、男の人とヴァーミラが暮らしていた家へと向かう事15分、ようやくそこに到着した。

 

「何から何までありがとうございます!」

「まさか家の中にまでこの手の者が居たとは……」

「それにしても、ヴァーミラって強かったんだね」

「魔浄の状態異常の効果の1つに、かかった者の力を半減させるって奴があるからね。あの時抵抗できなかったのはそれに加えて体力が限界だったんだと思う」

 

 ヴァーミラに状態異常をかけ弱らせ、襲いかかって居た人の仲間であろう輩が家の中で待ち伏せていた。そこまでして殺りに来ている執念に呆れていると、回復した彼女が対吸血鬼装備と思われる物で武装している輩をあっという間にねじ伏せていた。

 

 ここまでの実力を持っておきながらただの人間に追い詰められていたとは、魔浄の状態異常は恐ろしい。私もかけられてしまえば多分、ヴァーミラと同じ弱り方をするのだろう。気を付けなければ。

 

 そんな事を考えていると、この騒ぎを聞きつけたのか兵士が数人家の中に入ってきた。

 

「乱闘騒ぎがあったと言うのはここのようだ」

「嬢ちゃんたち、大丈夫……紅魔の少女が居るなら安心だ」

「全く! いくら吸血鬼が憎いとは言え、何もしていない奴まで殺そうとするとは……おい、この伸びている奴が犯人らしいから連れてくぞ」

「了解です。それにしても、こういう類いの事件って本当に無くなりませんよね」

 

 彼らは殴られて伸びている奴を無理矢理叩き起こし、連行していった。

 

「ありがと……」

「気にしないでよヴァーミラ。同族として当然の事をしたまでだし」

「同族……? もしかして貴女も私と同じ吸血鬼なの?」

「そう。私はフランドール・スカーレット、吸血鬼だよ! 正体隠して冒険者やってるんだ」

「そしてわたしがミア。彼女と一緒に冒険者やってる……あ、そこの男の人、フランちゃんの正体は秘密でよろしくお願いします」

「もちろん言いませんよ! 神に誓って約束します。あ、ちなみに俺の名前はレオネです。服飾屋をやってます」

 

 そうして無事に助ける事が出来た私とミアは、ヴァーミラとレオネの家で一息つくことにした。長い間、色々な話で盛り上がっていると突然この家に兵士がまた駆け込んできた。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで頂き感謝です! お気に入り登録や星評価、感想を下さった方にも感謝です! 励みになります!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。