フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、ルーバヌ砦に行く

「良かった、あの2人まだ居た!」

 

 駆け込んできた兵士の第一声はそれであった。私たちを指差しながら嬉しそうにしていたのを見て、これはまた厄介事が舞い込んで来そうな気がした。

 

「えっと……私たちに何かご用でしょうか?」

「はい! 実は緊急事態が発生しまして、ある一定以上の実力を持つ冒険者に声を掛ける事になったのです」

「そうなの?」

 

 行く先々で緊急事態だの何だのと、そう言うトラブルに巻き込まれている自分の運の無さを心の中で嘆きつつ、兵士の話を聞いた。何でも、常闇の森からルーバヌ砦に向けて魔物の大群が襲来してきているらしい。送迎馬車等の乗り物は他にも依頼した冒険者たちによって全部使われてしまい、歩きになってしまうとの事。

 

「予想通り、討伐系の依頼だったねフランちゃん」

「うん。これも私が冒険者をやったときから決まっていた運命なのかも知れないね。もちろん、ギルドからの依頼であれば受けるよ! 兵士さん」

 

 私がそう言うと、安心しきった顔をしながら報告をするために外へ行こうとしたが、肝心な物を貰い忘れたので呼び止める。

 

「あ、そうだ兵士さん。そこまでの地図か何か持ってる?」

「ちょっと待ってて下さい……あ、適当にポケットに突っ込んだぐちゃぐちゃな地図ならありますが、こんなので大丈夫ですか?」

「レイフィエル隊長! 仮にも数々の功績を上げてる彼女たちに失礼では……」

「私は別に、それでも構わないよ!」

 

 そう言ってしわくちゃの地図と、門の通行証をレイフィエルと呼ばれた兵士から受け取り、ギルドを後にした。

 

「さてと、ルーバヌ砦へ行きますか……飛んで行ければ楽なんだけどなぁ。ただ、そんな事すれば色々な要素も相まって吸血鬼だって事がバレかねないし……」

 

 まあ、外を出歩く時は必ず日傘差して出歩いてるから勘のいい人なら気づいてそうだけど、だからと言って堂々と自分から正体をバラすような真似はしない。

 

「フランちゃん、その問題が解決すれば2人で飛んでいけるの?」

「うん、そうだけど……何か方法があるの?」

「えっとね、周りの風景に同化して見えなくなる魔法があるよ。クールタイムが長い上に、効果時間が短いから途中から歩く羽目になりそうだけど」

「そんな魔法が……持ってる魔導書には載ってなかったけど、これもミアオリジナルの?」

「いや、師匠直伝の隠蔽魔法だよ」

 

 会話の後、魔法『ライトカモフラージュ』を使用し、私の姿も一緒に同化させて見えなくした後、ミアを抱えて飛び立つ。

 いくら超回復体質を持っていたとしても種族的には人間である。飛行中に落としてしまおうものなら当然待っているのは死なので、細心の注意を払う。

 時折ワイバーンを見かけるが、ミアの魔法が効いているのかこちらに気づく様子は見られなかった。

 

 そうして半分と少し進んだ所で……

 

「フランちゃん! 後少しで効果が切れるから降りて!」

「分かった。降りるよ」

 

 魔法の効果が切れかかっているとミアに言われたので、私は林の開けた場所にゆっくり降り立つ。少し経ってから切れたので本当にギリギリであったようだ。

 

「危なかったぁ~。この林は冒険者たちも良く通る場所らしいから、誰もいなかったのは運が良かった!」

「そうだね、フランちゃん」

 

 周りには魔物の気配は多少は感じるものの、グランドドラゴンクラスの危険な存在は無いので歩きでも問題なく行けそうだが、万が一を考えて警戒は怠らないようにしよう。

 

 そうして、たまに襲ってくる狼のような魔物を蹴散らしながら進み、1時間歩いて林を抜けると遠目に砦らしき建物が見えた。地図を見てみると、あそこがルーバヌ砦で合っているようだ。門の前に私たち以外にも沢山の冒険者たちが集まっているのを見た所、今回の緊急依頼はかなり不味い状況らしい。

 

 更に歩き、門の前に到着したら彼らに習って兵士に通行証を見せる。

 

「どうも、こんにちは兵士さん! 声を掛けられて来たけど、どこに行けば良いの?」

「この門を通ったら案内役の兵士の誘導があるからそれについていけば良いぞ。それにしても、ドラゴン2頭同時に相手して打ち勝ったフランに、王国一の回復魔導師ミア。これ程心強い援軍は居ないな!」

 

 そんな会話を交わしながら門を通過して案内役の兵士の誘導の元、冒険者たちが集まる広い場所へと向かった。

 

「しっかし、あのギラムス伯爵が本気をねぇ……」

「吸血鬼の癖に日光が効かず、流水にも比較的強いって出鱈目すぎだろ。ただでさえ厄介な種族だと言うのに……あ、お前見てみろよあれ!」

「ん? 確か、紅魔の少女と蒼銀の天使って呼ばれてる2人組……あ、これってかなり凄い戦力が参加してくれたって事だよな」

 

 冒険者たちの話を聞くに、私たちはどうやら界隈では結構な有名人になっているようだ。

 

「紅魔の少女フランが攻撃、蒼銀の天使ミアが回復と言う感じで役割分担して依頼をこなしてるらしい。後、他の奴が聞いた話なんだが、ミアは前に他の冒険団に所属しようとしたが、攻撃出来ないからって理由で突っぱねられたらしいぞ。超回復体質があるにも関わらずな」

「ぶっ! そんな脳筋冒険団居るのかよ。どう考えてもミアは有能じゃねえか」

 

 彼らから人知れず高い評価をされたミアは、顔を赤くして照れていた。

 そんな感じの雰囲気の中待っていると……

 

「皆様、魔物の大群が近辺まで襲来してきました! 出撃をお願いします!」

 

 そう知らせがあったので、冒険者の人たちが次々に出撃していった。

 

「フランちゃん、行こう!」

「うん!」

 

 そうして私たちも防衛戦に参加する為、一緒に出撃していった。

 

 




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