フランの異世界召喚記 作:松雨
「かはっ……!」
「何故、我と同族である貴様が人間の味方などする!」
「……さあ? オマエに言った所で理解してもらえないだろうし!」
この際吸血鬼バレを考えてたら死ぬかもしれないので、身体を蝙蝠に変化させて刺された剣から逃れた後、反撃の弾幕を放つも避けられてしまう。
「やはり、蝙蝠変化術も持っていたと言う訳か」
「まあね。私をそこら辺に転がってる雑魚魔物と一緒にしたら痛い目見るかもよ?」
「そんなもの、見てれば解るわ! 『エクスフレア』」
ギラムスは四方に展開した魔方陣から青白い炎を放射して、私を灰にしようと仕掛けてきた。明らかにまともに受ければ不味そうな感じの炎だったので羽を展開、上手いこと空を飛んで避けた。
それを見た彼も空を飛んで迫ってきたので、高速の空中戦が始まった。
「『禁忌 レーヴァテイン』!」
「ぐぉっ! 下等吸血鬼のくせしてやるではないか。『マルチフレア』『マルチダークネス』」
「これこれ! やっぱり久しぶりの空中戦、楽しいなぁ!」
流石吸血鬼だけあって、中級魔法でも威力や手数が人間のそれよりも強力だった。それでも幻想郷では色んな相手とギリギリの弾幕ごっこを、数えきれないほどしてきた私にとっては油断さえしなければ、回避するのは容易であるレベルであった。
そうして、火と闇の弾の嵐を掻い潜って反撃のスペルカードを使い、ギラムスに被弾させることに成功した。
「貴様、魔物共を葬っている時は本気ではなかったと言うのか……?」
「まあ、完全に本気ではなかったかな。冒険者ごと焼きかねなかったからさ」
「道理で貴様から感じる力と行動に違和感があった訳か。まさか我が、これ程苦戦する同族に出会おうとは思いもしなかった」
案の定、私と同様に高い再生能力を持っているギラムス。消し飛んだ腕がすぐに再生し始めていたのをみると、それは明らかだった。
「一対一に拘っていると面倒そうだな……お前たち!」
彼が誰かにそう呼び掛けると、待機していたらしい同族の3人が
私の前に現れた。
「ギラムス父様が俺たちを呼び出すと言う事は、今回の相手は……」
「ああ。我らが出会った同族の中でもかなり厄介な『狂気』を秘めている奴だ。おまけに飛びっきり強い。油断したら死ぬぞ」
「りょーかい! 行きましょー」
その掛け声と共に、4人の吸血鬼が私に襲い掛かってきた。全員日光に耐性があるようで、照らされても全く意に介していない為、あまり長引くとこちらが焼かれて灰になってしまう危険があった。
「くっ! 4対1とは、流石に交わしきれない……!」
強力な力を持つと言われている吸血鬼の彼らが4人がかりで襲い掛かってくるこの状況、私は流石に劣勢になってきている。
「1人じゃ無理……『禁忌 フォーオブアカインド』!」
「なっ、アイツが増えたぞ!?」
「どーすんのさ! これで数の有利が……」
「分身の1つ1つに本体と同等の魔力を感じる……つまり、あれば分身であって分身ではない。気を付けろ、お前たち!」
「何で分身が本体と同等なんだよ!?」
堪らずスペルカードを発動、私の分身を3人増やし、人数の不利を無理やり打ち消した。ギラムス以外の相手はこれにより動揺してくれているようだったので、ひとまず成功と言えるだろう。
「さて、行くから覚悟しておいて!『禁弾 スターボウブレイク』!」
分身に他の吸血鬼の相手を任せておいて、私はギラムスに向かってスペルカードを発動させ、本気で殺しにかかる。人々に迷惑をかけまくってくれたせいで、何もしていない無害な吸血鬼の少女が悪意の被害を被ったばかりか、私とミアの冒険の旅を間接的に妨害されているのが許し難い。
「済まない、下等吸血鬼と言った事は訂正しよう……やはり惜しいな。貴様のような強力な魔法を使える吸血鬼が人間共の味方など……」
「まだそれ言うの? 懲りないね」
私がレーヴァテインで斬りつけると、それを黒く輝く剣で受け止めたギラムス。鍔迫り合いになったので彼を押し切ろうと力を込めると、向こうも力を込めてきた。
「おぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁ!!」
斬った物を燃やし尽そうとする炎剣の魔力と、斬った物の全てを葬り去ろうとする闇剣の魔力の衝突によって波動が発生し、近くに居た飛行できる魔物はその圧力で吹き飛ぶ。
そうして鍔迫り合いが1分近く続いた後、力で押しきって何とか打ち勝つ事に成功したが、その際に起こった爆発に巻き込まれ、私も吹き飛んで地面に叩きつけられる。
その時に分身とギラムスの家族の様子を見ていると、分身たちの方は若干優勢に戦いを進められているようだった。
「決着つかないなら……『禁忌 そして誰もいなくなるのか?』」
私の切り札である90秒間絶対無敵の耐久スペルを、この状況を打破してギラムスを倒す為に使う。
「消えた!? どこまでも訳の解らん魔法を……」
「90秒間頑張ってねギラムス!」
四方八方からランダムに弾幕を彼に向けて放つ。流石にこれだけで倒せるほど甘くはなかったけど、突然現れる攻撃に多少の戸惑いはあったようで、少し回避に余裕がないように見えた。
「よし、次は……来たれ、敵を焼き尽くす炎獄の怒りを『アグヘルフレア』」
攻撃されないこのチャンスに、魔導書を見ながらの火属性攻撃魔法詠唱を行う。
まるで怒りをそのまま具現化したような強烈な火柱がギラムスを中心に立ち、彼を焼き尽くそうとする。そのついでに浴びた魔物の中の、何体か居たあの黒い狼等以外は全て灰となって消えた。
そうして90秒経ってスペルの効果が切れた頃には、ギラムス以下他の吸血鬼にも強力な火炎ダメージを与える事に成功した。
「耐えられた……? ならば禁弾……!?」
何故だか今すぐこの場を離れなければ危険と、急に感じた私は攻撃を中断してその場を離れた瞬間、ギラムスを何本もの強烈な光の矢が貫いた。
下の方を見てみると、強力なオーラを放つ白いローブを着た聖職者が数人、輝く白い弓を構えて立っていた。
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