フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、吸血鬼に対する根深い不信感を感じる

「おいおい、今の何だよ凄げぇな! アイツの剣がフランドールを斬ろうとした瞬間に崩壊したぞ」

「あの子が手を握った瞬間に突然壊れたねぇ~」

「それにしても、流石の身のこなしと威圧感だったな。対象が俺じゃなかったのにビビったわ。吸血鬼って本気出せば皆ああなのか?」

 

 白いローブの2人がルーバヌ砦を出ていった後、私は良くも悪くも皆に注目されていた。さっきの立ち回りや発言についてもそうだけど、特に『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』について聞いてくる人が多くて大変だ。

 

「なあ、あれってどんな魔法なんだ?」

「魔法じゃなくて、私固有の能力だよ!『物』ならあんな風に何でも壊せる感じだね」

「なるほど……ヤバイな、それ。頼むから俺たちに使わないでくれよ」

「心配しなくても使わないよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あれ見て狙おうとする奴なんて……居るのか?」

 

 そんな感じで色々な人たちからの質問攻めに対処しつつ、ミアの話が終わるのを待った。30分位経ち、人並みを掻き分けて私の元にやって来たので、早々に話を切り上げてルーバヌ砦を後にしようとした時、ある冒険者パーティーに声を掛けられる。

 

「フランドール! 良ければオレたちの馬車に乗っていかないか~? 丁度人数分空いてるからさ」

「貴方たちは……?」

「ん、オレたちか? 『疾風』ってパーティー名で活動しているんだが、聞いたことあるか?」

「ギルドに居る時に小耳に挟んだ程度には」

 

 そう言えば、ギルド内の受付の人たちが話していたのを聞いたことがあった。パーティー名の通り素早さと風属性魔法に特化した戦闘を得意とし、依頼の達成速度も速い事で有名らしい。

 

「一応私たちって初対面だし、いきなり誘うってのもどうなのかな? 何か企んでたりしない?」

「うっ、それは……最近有名なフランドールとミアの2人と知り合っとけば何かオレたちに得かなぁなんて思ったりしただけで、決してやましい意味はないんだ」

「ふ~ん」

 

 よく見たら、彼のパーティーには女の人と男の人が半々の比率で居る。魔法が仕掛けられている様子もなく、嘘をついているようにも見えない。仮に何かあればミアを連れて飛んで逃げれば問題ないレベルだ。

 

「随分欲に正直な人……分かった、お世話になるね!」

「お世話になります」

「ありがとう……おーいお前ら! やったぞぉ~!」

 

 こうして、かなりテンションの高いリーダー率いるパーティーの人たちと共に、ルービエの町まで馬車で戻る事になった。

 

 

 

 

 

 ――――――――――

 

「フランドール、ミア! 着いたぞ~」

「もう? フランちゃん、起きて。着いたってよ!」

「ふぁぁぁ……もう着いたの? 馬車にしちゃ早くない?」

 

 ルーバヌ砦を出発してからおよそ6時間、日がほぼ沈みかけている時間帯に私たちを乗せている馬車はルービエに到着したらしく、リーダーの『エア』に声を掛けられる。

 そして馬車の外に出ると、魔物の約3分の2を消滅させてギラムス伯爵を死にかけるまで追い込み、一家の1人を討伐と言う全員で頑張った戦果がもう既に伝わっているらしく、町は喜びに包まれていた。

 

 飛行出来る人や種族が伝えに行ったのかと思って聞いてみたら伝書鳩のような感じの、空を速く飛べる動物にそれを知らせる為の物を付けて、この町の町長が居る屋敷に向かわせたからだと言う。

 

「町の皆が喜んでて良かったけど……やっぱり」

「う~ん。こればかりはね、仕方がないよフランちゃん」

「まあ……フランドールの事もよく伝わってるはずだから、宿に泊まれないとか、物買えないとかって事は無いとは思うけどな。しかし、この感情に視線を向けられているのは俺じゃないが、コイツは中々心に(こた)えるなぁ」

 

 こちらを見た半分位の人は何だか複雑そうな顔をしていた。中には露骨に不快な感情を示す人や罵るような発言をする人も居たのを見て、この町の吸血鬼に対する根深い不信感は、()()()()()()()()()()()()()と言う現実を私は突き付けられた。

 

「取り敢えず、ギルドに報酬をもらいに行った後に宿に行こう?」

「ん? ああ、それが良いだろう」

 

 そうしてギルドに行って防衛戦の参加報酬をもらいに行った後、宿に泊まろうと言う結論に達したので、その為に行動していると突然、私の背よりも小さな子供が目の前に飛び出し、抱きついてきてこう言った。

 

「きゅうけつきのおねーちゃん、わるいきゅうけつきをやっつけてくれてありがとー!!」

「え!? あ、うん。喜んでもらえて良かった……」

 

 その時私は、抱きついてきた子供が泣いているのを見て何だか不思議な気持ちになった。




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