フランの異世界召喚記   作:松雨

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アンケートに答えて頂き感謝です! フランとミアのパーティーに新たな仲間を1人加え、その性別は女子に決定しました。


フラン、吸血鬼に対する悪い感情の払拭に挑む

「おはよう……あ、レオネ! ヴァーミラ居る?」

「ん? あ、おはようございます。フランさんにミアさん、ヴァーミラはまだ寝てます。後その……正体がバレちゃいましたけど大丈夫ですか?」

「ああ……それはまあ、命の危機があるかないかで言えば無いから大丈夫だけどね」

「やっぱり町の人たちの態度がまるっきり変わったりとかでしょうか?」

「うーん……そんな感じかな。出会う人の大体半分位がね」

 

 時計塔から落ちそうな男の人を助けた後、私たちはヴァーミラの住んでいる服飾屋のレオネの家を訪ねた。彼女を外へ連れていって町の困り事を解決し、吸血鬼に対する悪いイメージの払拭をしようと言う計画を思い付いたからだ。

 

 もちろん、これにはかなり長い時間と根気を要する事になるのは分かっているし、攻撃される可能性が無いとは言えないのも分かっている。ただ、この町で暮らしているヴァーミラや彼女を養っているレオネがこれ以上の悪意に晒されるのは見てられないし、私たち2人の冒険に支障を来すと思ったが故の計画である。

 

 当たり前だけど、ヴァーミラが拒否すればその時点で計画は取り止め、もしくは私たちのみでやることとなるだろう。

 

「そう言えばフランさん、後ろの方々は一体……?」

「あの人たちの事? えっとね、ルービエに居る間私とミアに付いていきたいって」

「そうそう。この2人は最近急に出てきた有名人だし、いずれデカい功績を立てそうな気がするからさ。今のうちに仲良くなればオレたちにも何か得かと思って」

「あはは……なるほどね」

 

 そんな感じで長い時間話をしていると、奥の部屋から寝間着姿のヴァーミラが皆の居るこの部屋に起きてきた。

 

「レオネ~。おはよ……え? フランにミアは分かるけど、後ろの人間と獣人たちは一体誰? それにいつから家に居たの……」

「アハハ……ごめんねいきなり。えっと、確か30分位前かな? ヴァーミラに用事があって来たけど、寝てるって言うから待ってたんだ。ちなみに後ろの人たちは、この町に居る間私たちと一緒に行動したいってついてきてるんだよね」

「へぇ~。で、その用事って一体何?」

 

 ヴァーミラから聞かれたので、来る前に考えていた計画について全てを話す。(うなず)きながら真剣に聞いてくれていた彼女の反応を見る限りでは悪くなさそうであったが、果たしてどうだろうか。

 そうして彼女は少し考えた後、私の元に近づいて来て手を差し出してきた。つまり、了承してくれたと言う事だろう。

 

「私の為にレオネが怪我したあの日からずっと、何か出来ないか考えてたんだ。その時に丁度フランたちの誘いを聞いて、確かに何か良い事をして悪いイメージの払拭出来たら良いなって思ったから……」

 

 そう語る彼女の潤んだ琥珀色の瞳には、これ以上レオネに辛い思いはさせないと言う決意が宿っているように見えた。

 

「無理はしないでくれよ、ヴァーミラ。種族が俺と違うとはいえ、娘のような存在となった君が傷付いて死にかけるなんて所を見るのはもう、あの時で沢山だから」

「分かってるよ、レオネ。無理しない、絶対に!」

 

 部外者である私たちが割って入る事が不可能なやり取りの後、ヴァーミラを連れて町へと繰り出していった。

 

 重たそうな荷物を運んでいて辛そうな人を見かけたら声を掛けて言われた場所まで運び、探し物をしている人を見たら一緒に隅々まで探す。

 取っ組み合いの喧嘩をしているのを見かけたら状況をよく見て止めに入り、怪我をした人が居ればミアに回復してもらった。

 

 これら1つ1つは小さい事だけど、何十回何百回と繰り返していけば多少なりとも吸血鬼に対する感情に良い変化が出てくれる事だと思いたい。

 

「それにしても、エアのパーティーの人たちが大活躍してくれてるよねフランちゃん」

「うん、確かに。私とヴァーミラが良く見えるような立ち回りをしてくれてるお陰か、今の所特に襲われたりとかないもんね」

 

 昨日、ルーバヌ砦の防衛戦から帰って来た時に受けた扱いがまるで嘘のような感じだった。まあ、昨日と違って吸血鬼に対しての反感を持つ人が単純にこの場に居ないだけなのかもしれないけど。

 

 そんな感じで夜遅くまで、どんな小さな事でも見つけたり頼まれたりすれば主に私とヴァーミラの2人で解決に力を注いだ。吸血鬼と言う種族の特性ゆえか、昼間よりも夜の方が2人だけで解決出来る困り事が増えたような気がしたが、肝心のエアのパーティーやミアが人間である為これ以上の活動は不可能と判断、今日はここら辺で切り上げる事にした。

 

「皆お疲れ様。私の見る限り、まあまあ感触は良かったんじゃないかなと思ったけど……」

「まあ確かに、オレもそう思った」

「確かにヴァーミラちゃんやエアの思った通り、私もそう思ったわ」

 

 私も皆が思ったのと同様に、感触はまあまあ良かったかなと思ったけど……

 

(あの時誰かに見られていたような……?)

 

 途中誰かが私たちに向けて……正確にはヴァーミラに悪意のこもった視線を向けられたような気がしたので振り返ったが、誰も居なかった。気のせいだった可能性が高いけど、万が一の事を考えて皆に一応伝えておき、私自身も警戒心を高めて備えておく事にした。

 

 こうして、初日は大きな出来事が起こることもなく無事に困り事解決を終える事が出来た。

 




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