フランの異世界召喚記 作:松雨
フラン、ヴァーミラと契りを交わして姉になる
「ふう~。国境の門を警備してる兵士さんに止められた時は強行突破する事になるかと思ったけど、どういう訳か王様から私と連れは通せって命令が出てたお陰で助かったし、本当に運が良かった」
「うん。でも、ヴァーミラがね……」
無事にノストライト皇国側の国境の町『エリュカル』に到着した私たち3人は、見つけた宿に数日間分の宿代を先払いしてひとまず腰を落ち着ける事が出来た。
しかし、私たちと出会う遥か前からヴァーミラと一緒に居たレオネの行方が分からず、情報なども無い為無事かどうかが見当がつかないせいで彼女に元気がない。聞けば、自分を娘の様に接してくれた彼を『父親』の様に慕っていたらしい。そりゃ元気が無くなるのも無理はない。
どう声を掛けようか迷ったが内容によっては逆に精神を追い込む方向に進んでしまう為、ヴァーミラが話を振ってこない限りは取り敢えず何も言わずにいつも通りにしようと心の中で決めた時、彼女が話し掛けてきた。
「フラン姉お願い、レオネを探すのを一緒に手伝って……もし探し出す事が出来たら、一緒に旅がしたいな」
「分かった。これから一緒に冒険する事になる仲間の頼みくらい聞いてあげないととは思うけど、でもね……」
ヴァーミラなら吸血鬼と言う種族の持つ、身体能力に高い魔法力が備わっているから戦いになっても問題はない。
しかし、レオネは見たところ至って普通の人間だ。弱い魔物との戦闘時だったら守りつつ戦う事は簡単だけど、グランドドラゴンやギラムス伯爵の様な強敵との戦闘ともなれば厳しくなってくる。万が一と言うことも考えられるから正直言うと、一緒に旅をするのは厳しいかなと思った。
「駄目……かな?」
「いや、ヴァーミラがそう言うなら良いけど、私とミアは冒険者やってるから魔物の討伐依頼とか受けるし、他にも色々危険な事が舞い込んで来るよ?」
「大丈夫! 私が身を呈して、全力で守るから!」
その時、一瞬だけ冷気の波動が伝わって来た。つまり、今言った事に対して本気だという確固たる意思を持っている証拠である。なので、ヴァーミラのその問いに対して私は良いよと言う返事を返した。
「ありがとう。フラン姉」
「気にしないで。それだけ本気のヴァーミラ見たらね、断る気なんて何処かに消え去ったからさ」
話し合った結果、レオネを無事に見つけた後の事は決まった。しかし、肝心の彼を見つける手立てがノストライト皇国内の町や村、都市を回って地道に探す方法しかないのが現状だ。しかも、その間にこの国を出ていく可能性もあり、そうなれば完全にお手上げである。
「そうと決まれば早速動こうよヴァーミラちゃん……そう言えば冒険者登録ってしてたっけ?」
「してないよ。ずっとレオネと一緒にルービエで暮らしてたから」
「じゃあまずはそこからだね。フランちゃんが登録出来たからヴァーミラちゃんもきっと大丈夫だよ」
早速私たちと行動する上で必要になる冒険者登録をしに、この町のギルドへと向かった。吸血鬼が冒険者になりたいと入ってきたからなのか中に居た人たちが若干ざわつき、ついでに私を見て更に冒険者たちがざわついた。
私がカーテンド王国の王都で登録した時は特に何も起こらなかったが、よくよく考えたらその時は正体を隠していたからであって、本来ならこの反応が普通なのかもしれない。
そうして若干手続きに難航したものの、ヴァーミラは晴れて冒険者となる事が出来た。
「さて、無事にヴァーミラも冒険者になれた所だし、早速この町からレオネを探し始めよう!」
「分かった」
「……ありがとう!」
今後の冒険する上での目標が『ヴァーミラが父と慕うレオネを探しつつ、ギルドの依頼をこなす』事に決定、早速達成に向けて動き出す。
身体的特徴や彼の職業・名前と言った情報を出しながら通行人に話を聞いてみたり、店に入ったりして店員さんに訪ねたり等他にも色々やったりして努力はしてみた。しかし、たった1日で見つかるわけもなく、日も沈んだ為この日の捜索は終了した。
「まあ、1日で見つかれば苦労はしないよなぁ……」
「そうだね。でも目撃情報すらないなんて、最初からこの町には立ち寄らなかった可能性が大きいよフランちゃん」
「うん。でもまだ1日だけだし、もう何日かギルドの依頼を受けながらこの町を探そう」
そうして今日の捜索は終わりだと声を掛けようとヴァーミラの方を向いてみた時、何だか哀しそうな表情をしながら空に浮かぶ月をじっと見つめていたのが見えて……
「ねえヴァーミラ。もし良かったらさ、私と姉妹の契りを結ばない? レオネが居なくなって寂しいように見えるしそれに、『家族』は沢山居た方が楽しいよ?」
私は思わずそう言ったが、その後落ち込んでいるこの状態の彼女に言う言葉だったのだろうかと言う考えが頭をよぎった。しかし、もう言ってしまった物は仕方がないのでひとまず様子をみる。
30秒程の短いようで長い沈黙の後、ヴァーミラが何処からか取り出した2つの木製の魔力を感じる小さなカップの内の1つを私に差し出してきた。一体何をするのかと思ったら、彼女が自分で自分の腕を噛んで流れてきた血をカップに溜め始めた。何だかよく分からないが、私もやらなければいけないような感じだったので同じように真似してやった。
半分程溜まった所でヴァーミラがそれを差し出してきたので、私も同じように差し出した。
「私の為に考えてくれてありがとう。じゃあ、改めてよろしくね……フラン姉様!」
「うん!」
そうしてヴァーミラがその血を飲んだ為、また同じように真似して飲んだ。その瞬間何らかの『力』が身体中を駆け巡り、昔から本当の姉妹だったような……何故だかそんな気がした。
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