フランの異世界召喚記 作:松雨
「凄い……
「姉様、ここにある草を取るだけで依頼達成出来そうだよ」
「確かに。でも、全部取ったとしてもすぐには帰らないであの村で1泊する予定。最近トラブル続きだし、たまにはこう言う所で休息を取りたいからね」
あの後、自然の精霊の親子に光癒草の群生地に案内してもらった私たちは、のんびり自然を楽しみながら採取に励んでいた。生えているのが全て良い物だったら尚楽なんだけど、そうは都合良くいかない。折れてる草だってあるし、枯れてたり何故か花の部分だけ無い草とかもある為、良く見て選ばないといけないからだ。
まあ、たまには採取に時間を取られるのも悪くない。そう思いながら休憩を度々挟んで黙々と作業を続け、夕方になる頃には最低限の量の倍である6束を採ることが出来た。魔物も運が良いのか殆んど出ず、出たとしても精々ゴブリンやオーク等私とヴァーミラの敵ではない魔物たちであった。
しかし、初心者が採取しに来る場所としては危険度が高い。周りにも民家などはあの村にしかなく、回復魔導師や調合師と言った 怪我等の治療が出来る人が2人しか居ない事も相まって、Eランク以上の冒険者しか受けられないようにしてるのだろう。
「今日はありがとうネイツ、シュゼ! お陰で今日だけで依頼を達成出来たよ」
「ありがとうございます」
「精霊さん、ありがとう……」
「いえいえ。こちらも怪我の件を許して頂けてありがたいです」
こうして採取を終えた私たちは精霊の2人と別れて山を下り、村へと向かった。到着した後は村の人に聞いて分かった唯一の宿の所に行って、泊まれるかどうか聞く。すると、泊まれるとの事だったので今日は泊まり、明日の昼過ぎ辺りにエリュカルの町に戻ると言う流れに決まった。
「採取も採取で地味に疲れるよね。討伐系の依頼とかよりはのんびり出来る分マシだけど」
「まあ、色々身体を動かしてるからね。と言うか、フランちゃんが休憩少ないんだよ。いくら種族的に体力あるとは言え、もう少し休まないと」
「うん。分かった」
古き良き雰囲気の宿の部屋から村の景色を見つつ、3人で会話をしながらゆったり過ごす。もう既に依頼を達成出来る量は集まっているから、後はギルドに戻って採取した物全てを渡すだけとなっているので、あと2~3日は居ようと思えばこの村に居る事は出来る。
これもカーテンド王国でたまたま貰った魔法のバッグと、光癒草自体の切った後の腐りにくく枯れにくい特性のお陰だ。
「じゃあ、明日はこの村でのんびり過ごそうかな。そう言う形になるけど大丈夫?」
「私は構わないよ姉様。じゃあ宿に入る前に決めたあれば無しって事だよね」
「わたしも、取った草とかが大丈夫なら良いと思う」
2人もそう言ってくれてた。その為、明日はこの村に滞在して景色のまんのうやはあさふふや現地の料理を食べ歩いて過ごすことに決まった。そう言えば、ほんの少し前に明日の昼過ぎ辺りに戻ろうと決めたばかりだったけど、まあ良いか。
今度こそ本当に明日の予定が決まったし、食事も身体や服の汚れ落とし等も済んでやることがなくなったので、そのまま眠りについた。
そうして翌日の朝、いつも通りに起きた私たちは宿から一旦出た後、村の内部をのんびり歩いていた。最初に来た時は採取の依頼もあってあまり良く見れていなかったので、時間が沢山ある今が計画通りに景色を堪能するいい機会となった。
「何かやたらと村の人たちの視線を感じるね、フランちゃん」
「宿の人に聞いたけど、ここに観光目的で来る冒険者の人とか殆んど居ないらしいよ。それに加えて私とヴァーミラは吸血鬼だし、余計珍しいんじゃないのかな?」
「確かに姉様の言う通りかも。それに格好もこの村の人たちと随分違うし、目立つのは必然って事だね」
まあ多少気にはなるけど、カーテンド王国で感じたあの時の負の感情が込められているような感じではないし、攻撃された訳でもない。それらの点からそんなに深く考えなくても良いやと思ったのでそのまま村歩きを続けていると、私たちの視界に大きな水の入った桶を持ってどこかに向かっているお爺さんが入る。
どう見ても重くて辛いと分かる顔をしているので声を掛け、私たちが代わりに目的の場所に運んであげる事を伝える。
「済まんの、共同の冷凍魔法倉庫まで運んでくれるか?」
「冷凍魔法倉庫? お爺さん、もしかして氷が欲しいの?」
「ああ、そうじゃ」
「ふ~ん……ヴァーミラ、お願い」
「分かった……『凍って』」
何に使うのかは知らないけど氷が欲しいらしいので、ヴァーミラに頼んで桶の水を全て氷に変えたら、大袈裟な位感謝してくれた。
ついでに細かく砕いてもらえると嬉しいと言ってきたので、桶の氷をまずはそのお爺さんの家まで運んでいつも作業をする場所まで持っていき、上手いこと桶から出した後に力を加減して氷を叩いて砕いた。
「えっと、こんなものかな?」
「少し大きい感じもするが、良い感じに砕いてくれて助かったぞ。それにしても、素手て砕くとは……流石吸血鬼、凄い力じゃの」
「良い感じ? それは良かった!」
どうやら、お爺さんのほぼ望み通りの大きさに砕く事が出来たようだ。これでやる事は済んだので、お爺さんの家を後にして再び村歩きを再開した。
その道中畑仕事をしている人や店番をしている人等、出会う人の殆んどから挨拶をされたのでその度に挨拶し返す。今まで来た町ではこんな事はなかったので、私が想像もつかないほど外から来た人が珍しいのだろう。多分だけど。
そんな感じで村の事情を考えつつ、ヴァーミラやミアと会話してながら歩いていると、突然前の建物の扉がバラバラになって壊れてしまったのを見た。それは、奇しくも私が能力を使って物を壊した時と良く似た……いや、同じだと言っても差し支えない壊れ方だった。
「え!? 私能力使ってないよ……ね?」
「姉様、大丈夫? どうしたの?」
「あ、実はね……」
今目の前で起こった不思議な現象に、自分が能力を無意識に使ってしまったのではないかと、思わず大きな声で驚きを表してしまう。当然、突然大きな声を出した私に隣で一緒に歩いている2人が一体どうしたのかと聞いてきた。なので、自分の能力の事を詳しく説明をしながら、併せて理由を説明する。
「強すぎない? もしそれを魔物とかに使ったら一撃で爆殺出来たり?」
「多分ね。まあ実際に魔物がどうなるか分からないし、強い魔力持ちには抵抗されないとも限らない。それにヴァーミラの能力と同様のデメリットがあるから、使いすぎると動けなくなると思うから、何にでもホイホイ使う訳じゃないよ。最終手段、かな」
そんな感じで会話をしていると、壊れた扉だったものが少しずつ修復されていき、2~3分もすると完全に元通りになると言う更なる不思議な現象を目撃した。
「……どうなってるの?」
「理解出来ないよ、わたしには」
「私が知らない魔法の効果かもしれないね」
そう3人で話し合っているとその修復された扉が開き、中から男の人が何人か話ながら出てきたのを見た。
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