フランの異世界召喚記 作:松雨
「よし、実験は成功したぜ! 形状記憶魔法、上手く行ったみたいだ」
「これで次の魔法研究会の大賞は僕たちで決まりですね! 普及したらきっと、皆喜ぶだろうなぁ」
「いや、まだ効果時間も短すぎる上に消費魔力も大きすぎる。その魔法は一般人向けなのだろう? どう考えても魔導師しか使えなようなこの状況だと大賞は無理だろう」
「じゃあどうしろと? 研究会まで残り1ヶ月を切ってるんだぜ?」
どうやら、中から出て来たのはノストライト皇国の研究者らしい。さっきの破壊された扉が自動で組上がって修復されたのも、彼らが開発した『形状記憶魔法』と言う魔法によって引き起こされた現象だったらしい。こんな小さな村に拠点を構えているのは、実験がしやすいからかな?
「う~ん……ここはやはり当初の予定のリジェネ系の回復魔法改良にした方が」
「おい、あの時の失敗を忘れたのか? ひでぇもんだったな、あれは」
「確か効果……」
「あーあーあ!! それ以上言わないでくれ! 頼む」
「はいはい分かりましたよ。それよりうるさいから少し黙っておけ。さっきから3人の……いや、2人の吸血鬼と1人の回復魔導師らしき女の子に注目されてるぞ」
「「え? 吸血鬼……ぶっ!」」
そう3人の内の1人が言うと、もう2人の研究者がほぼ同時にこちらを向いて私たち、正確には私とヴァーミラを見て吹き出していた。流石に全部のやり取りを見ていたのは良くなかったかも知れない。
そんな事を考えていると、研究者たちが近づいてきて話し掛けてきた。
「さっきから俺たちを見ていたが、何か用事でもあるのか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどね。ほら、さっき扉が壊されたのに自動で直ったでしょ? あれが不思議で見てたら、貴方たちが出て来て……」
「ああ、その時の形状記憶魔法をか。まだ未完成なんだけど……ここじゃなんだから、家で話さないか? 君たちの予定がなければなんだが」
研究者たちからそう提案された。今日に関して言えばのんびりしているだけなので、特に予定はない。何かを企んでいると言う訳ではないみたいだし良いかなと思ったので、その誘いに乗ることにした。
扉を開けて中に入ると、見た事のない魔道具が所狭しと並べられた、いかにも何らかの魔法の研究をしている雰囲気が出ている部屋だった。こんな狭い場所で座る場所があるのかと思ったら、もう1つの広い奥の部屋に案内された。
「ねえ、妙な感じがしない? この部屋」
「ん? ああ、それは遮魔の結界が張られてるからだろう。攻撃魔法の試し撃ちをする為にも使っているからな、この部屋」
入った瞬間に何とも言えないような感じがしたが、それはこの部屋に遮魔の結界が張られているかららしい。確かに、室内で攻撃魔法の試し撃ちをするにはそれくらいの備えが必要だろう。
そんな事を考えながら椅子に座り、出された紅茶を飲みながら魔法談義に花を咲かせた中でも、私が持っていたこの魔導書を見た時の彼ら3人の反応は凄かった。曰く、何年も前に引退したとある有名魔導師の書いた物で、かなり部数が少ない書だとの事。
そう語る研究者たちの話を聞いて、何故あの時これをくれた人はそんなにも貴重な魔導書を簡単に手放したのだろうと自分なりに理由を考えてみた。しかし、どれだけ考えても最終的には『興味がない』と言う理由に行き着いてしまうので、これについては考えるのを止めた。
「そう言えば、最初はリジェネ系の回復魔法を開発しようとしてたんだよね、貴方たちって」
「そこまで聞いてたのか。まあ、そうだけど……」
「実は言うとミアはね、独学で1つそう言う類いの魔法を開発してるよ」
「「「……へ?」」」
「もし良かったら参考の為にわたしの魔法、見ます?」
ここに来る前、研究者たちがそんな話をしていたのを思い出したので思い付きで言ってみた所、驚きのあまり固まって動かなくなってしまった。それを見たミアが参考がてら、自分で開発・実用化させた回復魔法『ホーリーヴェール・リジェネ』を研究者の1人に試し掛けした。
「これが、ミアの開発したリジェネ系回復魔法か……凄いな。全てを癒してくれそうな命の奔流を感じるぞ」
「何だか光の衣を纏った神様みたいになっていますね。そう言えば、この魔法の持続時間はどの位なのですか?」
「わたしが使えば1時間は持ちますよ」
「何それ凄い……」
その後、流れで研究者たち3人に条件付きでこの魔法を教える事となった。ミアが発動のコツを簡潔に教え、それを研究者たちが実行する。しかし、これは回復魔法のエキスパートである彼女ですら今現在発動させるのが5回が限度となる位魔力消費が激しい。案の定、1回もしくは2回発動させようとしただけでへたり込んでいた。
「っ! これは魔力の消費が激しいし練習するにも厳しいが、それだけ強力な魔法なのであろう」
「まあね。と言うかそもそもの話、回復魔法のエキスパートが独自開発した回復魔法を専門外の僕たちが本来の効力で発動させるのは無理じゃないの?」
「いや、意地でも発動させて見せるさ!」
そうは言ったものの結局彼らの中の1人が、本来の効力は厳しいと言う事で20分の1程度の劣化版ホーリーヴェール・リジェネを発動させる事が出来るようになるまで研究所兼自宅にてひたすら教える。その間手が空いた人から私やヴァーミラはその対価として、気になっていた形状記憶魔法『シェルメリオル』を教えて貰い、未完成な上に劣化版ではあるが、発動させるレベルにまで達した時にはもう既に日が暮れていた。
なのでお互いに良い取引が出来た所で、研究者たちと別れて私たちは宿へと戻る事に決めた。
宿に戻った後は出された夕食をのんびりしながら食べ、魔法で身体を綺麗にしてから眠った。
そうして次の日の朝、出された朝食を取った後直ぐに馬車に乗り込み、エリュカルに戻る。その後はギルドに立ち寄り、取った
「フランちゃんおめでとう。これでようやくCランクだね!」
「うん。これからも頑張って――」
採取依頼を達成したタイミングでランクアップし、これからも頑張って行こうと気合いを入れようとしたその時、兵士が2人と見覚えがある子供が1人、ギルドの中に丁度良いタイミングで入ってきた。
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