フランの異世界召喚記 作:松雨
「兵士さま、アイツです! あの吸血鬼が……!」
「ふむ、あやつがトーラ様を?」
「はい。確か3日前に私のお友達とただ楽しく遊んでいただけなのに、突然現れてその力で殺そうと……うぅ」
良く見たら、あの時1人の女の子を恫喝していた集団のリーダー格の1人だった。ギルドに入ってくるなり私を指差してとんでもない事を言い始める。当然、それを聞いた周囲の人たちの視線は大半が私を向いた。
彼女の発言から大方、あの時の恨みを晴らしにでも来たのだろうと予想がつく。全く、あれが嫌だったらあんなことしなければ良いのにと呆れていると、付き人らしき兵士の2人が私に近付いて来た。ご丁寧に銀の鎧に銀の剣と槍を装備していることから、その子供の言う事を信じて私を捕縛ないし殺す為に相当準備をしてきたのだろうと推測出来る。
「と、言う訳だ。吸血鬼、殺されたくなければ大人しく捕まってもらおうか」
「その前に1つ聞くけど、私の言い分は聞いてくれないの?」
「人を殺りかけた奴の話を聞いてくれると思ったか? 貴様は随分おめでたい頭をしている様だな」
「あ、そう」
これは駄目だ。あの2人の兵士はトーラとか言う子供の言う事を無条件で信じ込んでいる。流石貴族の子供と言うべきか、物凄い権力だ。
「じゃあ良いや、もう。言っておくけど、身に覚えのない罪で大人しく捕まる程私は馬鹿じゃないから」
「そうか……」
そうして、関係のない人が沢山居るギルドの中にも関わらず剣を構える兵士2人。なるほど、何においても貴族であるトーラが優先、周りがどうなろうが知ったことではないと言う訳か。
戦闘となるのは確実だけど、銀の剣や槍による攻撃に当たりさえしなければ特段危険な相手と言う訳でもないのが、相手から感じる魔力より読み取れる。
「ならば、ここで死んでもらおうか」
こうしてギルド内部にて戦闘が始まってしまった。このままでは受付ごと戦いのなかで消し飛んでしまうので攻撃を避けつつ後退し、敷地内にある魔法練習場まで誘い込む作戦を実行する。その際に苦戦しているかのように演出し、彼らを油断させるのも忘れない。誘い込んでからが本番なのだから。
「こいつ、そんなに強くなさそうですね! たかが兵士たる俺たちの攻撃を避けるのが精一杯みたいですから」
「ああ、このまま畳み掛けるぞ」
そうして上手く魔法練習場に誘い込めたので、ここから反撃を開始した。
「『禁忌 レーヴァテイン』!」
「なっ!」
まずは火力控えめのレーヴァテインを剣持ちの兵士に手加減して振り下ろし、油断しきっている彼らの意表を突く。
1人は上手く避けられたが、もう1人の避けられなかった方の兵士は銀の剣で防御を選択した。
「ぐっ……ううぉぉーー!!」
「ほらほら、もっと力入れないと駄目だよ! 強くないんでしょ、私ってさぁ!」
私のレーヴァテインを兵士が防いでいる間に、魔力で浮遊させた魔導書を見ながら、もう1人の兵士に魔法を発動させる。
「こっちの兵士さんにはこれね! 『
「なんだと……剣と魔法を同時に扱える魔導師だったのか!? くそっ!」
展開した魔方陣から、私の純粋な魔力のみで構成された矢を複数同時に発射し、相手を射抜く魔法を発動させた。と言っても、今回はあくまでも手加減しているので、貫通力は低下している。
「吸血鬼の攻撃に対する耐性がある鎧の上からダメージを与えてくるだと……? しかも何本かの矢は俺を追尾してきた、何て奴だ……」
そうは言うものの、まだまだ平気そうだ。どうやら彼らの着ている鎧には吸血鬼の攻撃に対する耐性があるらしく、当たっても予想以下のダメージしかないようだった。まあ、手加減している上でのダメージならこれ位が妥当かな。
その後はレーヴァテインでもう1人の兵士を押さえるのを止めて鍔迫り合いから解放した後、直ぐに薙ぎ払って吹き飛ばして更に弾幕で追撃する。
「おい、こいつ強いじゃないか……一介の兵士の俺たちじゃあ歯が立たないぞ!」
「慌てるな、もうすぐ隊長がやって来るからそれまで何とか耐えるんだ!」
「隊長ね……貴方たち、私の事を強くないとか言っておきながらこんなものなの?」
「くっ! 言わせておけば……」
相手の攻撃を避けつつ、魔導の矢をたびたび発動させて相手の体力を少しずつ奪っていく。そんな事を繰り返す事5分、とうとう体力の限界が来た兵士の2人がその場に膝をつき、息を上げた。
「で、どうするの? まだやる?」
「……」
「殺すのなら殺せ、吸血鬼!」
「いや、そうするつもりはないよ。それよりも、皆が居る所でやってもいないし、証拠もないくせに人殺ししかけた奴呼ばわりして、私の印象が少なからず悪くなったよね? このままだと冒険しにくくなるかもしれないからさ、それについて何か一言もらえる? ねぇ」
多少威圧感を出し、私の名誉を回復させる事を兵士2人に要求すると、完全に黙りこんでしまった。これは完全に威圧が裏目に出たか、あのトーラとか言う子供の家にとんでもない権力があるから逆らえないのどちらかだと思っていると……
「あ~あ。だから言ったのに……穏便に捕まえろと。この様子だと、なめてかかったは良いものの余裕でボコボコにされた感じかな~」
遠くの方から複数の兵士さんを連れた、恐らく隊長だと思われる女の人がやって来た。流石隊長さんとだけあって、ここに居る兵士の皆よりも遥かに強いと言う雰囲気を感じる。
「隊長! 申し訳ないです」
「同じく、申し訳ありませんでした」
「まあ、過ぎた事は仕方ないね。とにかく、
「え……あらゆる嘘偽りを見破り、真実を明らかにする貴重な魔道具を一体どこで借りて……」
「コネだよ、コネ」
「何で隊長がそんなに凄いコネを持っているんですか!?」
彼らの話を聞く限りどうやら、今から真映鏡と言うとても貴重な魔道具を使って真実を明らかにしようとしているらしい。
「じゃあ吸血鬼さん、今から質問するから答えてね~」
「うん、分かった」
そう言うと隊長さんは私を鏡に映しながらいくつかの質問をしてきたので、それに全て正直に答えた。次に兵士を連れてきたトーラを呼んで、鏡に映しながら質問をして答えさせた。その際、彼女の顔が若干ひきつっていたのが見えた。
そうして全ての質問を終えた隊長が鏡に対してこう問い掛けた。
「吸血鬼フランドールを、人殺しの罪に問う事は可能か?」
すると、特殊な波動が辺りに伝わった後に鏡から透き通るような女の人の声が聞こえてきて……
『吸血鬼フランドールの言う事に嘘偽りは一切存在しません。ですが、人間のトーラの言う事の殆んどに嘘偽りが存在します。つまり、フランドールに人殺しの罪を問うことはどう解釈しようが不可能です』
その瞬間、真実を明らかにする魔道具によって私の言い分が全部認められ、無実が証明される事となった。
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