フランの異世界召喚記   作:松雨

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小説の後半、都合により時間がちょくちょく飛びます。


フラン、魔法祭に向けて練習を始める

「フラン姉様、大丈夫だったの?」

「うん、まあね。真映鏡(リフレトゥールミラー)って魔道具のお陰で見事に無実が証明されたし。それに、まさかあれに貴族の権力が効かないほどの力があるなんて思いもしなかったよ。だって、貴族の子供の言ってた事を全部戯れ言で片付けてたもん」

 

 あの後、トーラの狂言が真実を映す魔道具によって発覚した為その場で無罪放免された私は、何とか努力した事によって名誉へのダメージも最小限に抑えることが出来た。

 

 それにミアによると少しの間、私と兵士さんが室内で戦った影響で備品のいくつかが壊れたりはしたものの、ギルドの建物自体へのダメージは本日中に修復可能なレベルであったらしい。怪我人も奇跡的に出なかったとの事。

 

「そう言えば、壊れちゃった備品の弁償って誰がするの? 私かな?」

「う~ん……そうなるかもしれないね」

「だよね。全く、こうなったのもトーラが言いがかりつけてくるからだよもう!」

 

 採取依頼を終えて帰って来たちょうど良いタイミングでのトラブルに、若干苛立ちながらギルドの休憩スペースでミアと話していると、1人のエルフが私たちの元に近付いてきた。誰なのかと聞いてみた所どうやらエリュカルのギルドマスターらしい。

 

「フランドールさん。それでですね、備品の賠償の件なのですが……様々な事情を考慮し、それに加えて隊長さんとの話し合いをした結果今回は貴女にではなく、こうなった元凶のトーラさんの家に請求することになりました」

「あ、本当に? でも大丈夫なのそんな事して。私が言うのもなんだけど、相手は貴族なんだよ?」

「はい、大丈夫です。この国での真映鏡の影響力は皇帝の側近クラスに匹敵するので。まあ、それでも貴族が牢に入れられる事は何故かないみたいですけど」

 

 と言う事は、この鏡の判定結果を覆すには最低でも皇帝の側近クラスの権力が必要と言う訳か。そりゃあそこらの貴族だと太刀打ち出来ないな。

 

 そんな事を考えていると、エルフのギルドマスターが再び声を掛けてきた。

 

「ただ、それでも稀に納得しない貴族の方もいらっしゃる様で、秘密裏に襲撃者を雇ったりする事もあるみたいです。けど、その際はこの国の皇帝から公式に『襲撃者の殺害』とその雇い主が判明した場合にのみと言う制限付きですが、『言い値での賠償請求』が認められてます」

「うわぁ……面倒な。どうか来ないで欲しいね」

 

 なるほど。公式に許可されているなら多少は楽だけど、それでも来ないに越したことはない。どうかトーラの所の貴族がその稀に入らない事を祈るのみだ。

 

 そんな事を考えながらエルフのギルドマスターも含めた4人で会話をしていた時、ギルド内に貼り紙を何枚か張っていく魔導師らしき格好をした人を目撃した。一体何だろうと思った私はその貼られた紙の方まで行って見た。

 

「えっと……エリュカル魔法祭?」

 

 そこに書かれていたのは、3週間後に開催されると言うエリュカル魔法祭についてだった。町外れにある使われなくなったコロシアムを改装、色々な事に使えるようにした円形多目的会館で開催されると書いてあった。

 

 魔法を使った物であれば何をしても良いらしく、魔法自慢をするも良し、魔法を取り入れた試合形式で戦うも良し、新開発の魔法を披露するのも良いらしい。

 

 祭りと言うだけあって優劣を決める為ではなく、各々の欲求を満たして魔導師たちや観客たちが純粋に楽しむ為だけに開催されるらしいが、この祭から皇国の魔導師協会や守備隊、果ては他国やギルドからの誘いが来る事がある為、各種大会並みに気合いを入れてくる人も多いらしい。

 

「ねえ、ヴァーミラ。この祭凄く面白そうだから参加したいんだけど、良いかな? もし良ければ貴女と一緒に弾幕ごっこを披露しようかなって」

「姉様が参加するって言うなら。後、弾幕ごっこって何?」

「えっとね……」

 

 ヴァーミラにそう聞かれたので弾幕ごっこについて詳しく説明し、私が魔法祭に参加してやりたい事も平行して説明する。

 

「なるほどね。私と試合形式で戦って楽しみつつ、故郷に戻った時に遅れを取ることがないようにしたいと。良いとは思うけど、当日ならともかく練習している間、ミアが暇をもて余さない?」

「あっ……」

 

 失念していた。言われてみればその通りだ。

 

 改めて貼り紙を見てみると、魔法祭が始まるまで3週間と書いてある。私たちは練習で暇の大半を潰す事が出来るが、ミアはその間見ている事しか出来ない。じゃあ1人で自由に行動してもらおうとお金を渡して行きたい場所へ行かせるにも、色々な不安要素がある中戦闘能力の無い彼女に何かあれば対処出来ない為、危険だ。

 

 そう考えると、やはり魔法祭への参加は諦めるべきかなと思い始めていると、ミアが口を開く。

 

「フランちゃん、参加したいんでしょ? その間わたしは回復魔法の開発でもしてるから大丈夫……」

 

 そう言っていた途中で少しの間沈黙した後、再び話し始める。

 

「強いて言うなら、この町を出たら『ミロミス』って名前の村に寄ってもらえると嬉しいかな。師匠の故郷だから、もしかしたら会えるかもしれないし」

「もちろん、そんな事ならお安いご用だよ! 私もミアの師匠、どんな人か気になるし」

 

 話し合いの結果、魔法祭当日までの3週間暇にさせる代わりに次の目的地がミアの師匠の故郷、ミロミス村と言う事になった。当然、3週間までなら彼女が居たいと言えば居る事になる。

 

 こうして早速魔法練習場に行き、ヴァーミラと共に弾幕ごっこの練習が始まった。

 

 まずは通常弾幕の出し方を教え、上手く扱えるようになるまでひたすら発射させた。カーテンド王国でジェノに教えた経験が多少なりとも活きたのか、それとも魔力の高い種族ゆえなのか、とにかく理由は分からないが、たった7時間半程である程度出せるようになると言う飲み込みの早さを見せてくれた。

 

 そして3日目にもなると、通常弾幕に関して言えばもう戦闘でも余裕で使える位のレベルに達した。なので、次はスペルカードを作ってそれを使った擬似的な弾幕ごっこを始める。吸血鬼の身体能力と、ヴァーミラ自身の生きてきた中での経験が相当濃かったのだろう。弾幕ごっこが初めてにも関わらず、地上でも空中でもまるで経験者のような動きをしていた。

 

「ヴァーミラって、今まででこれと似たような戦闘経験をしたことがあったりしたの?」

「80~100年位前だったかな。吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)がうじゃうじゃ居た時代に、嫌と言う程浴びせられる攻撃の嵐を避けて反撃して生き延びて来た時の経験と似てる気がする」

 

 なるほど、いつでも吸血鬼狩りから攻撃されるような激動の時代を生きた経験があるんだったら納得だ。

 

 更に9日目ともなれば、もうある程度の弾幕ごっこにも耐えうるレベルにまでヴァーミラの腕が上達した。彼女がいつの間にか作っていた、蒼く輝く長弓から紅い稲妻を纏わせた蒼い矢を放つ技をレーヴァテインで受けた時、その威力には驚いた。なんて名前の技なのか聞いたら、まだ決めてなかったらしい。後で考えておいてあげようかな。

 

 その後の日はひたすら弾幕ごっこと休憩を繰り返し、必死に腕を磨く事に全力を注いだ。

 

 そして練習を始めてから3週間、遂に魔法祭当日となった。

 

「よーし。遂に本番だね、ヴァーミラ! まあ、大会じゃないから気楽に行こう」

「まあね。お祭りだし」

 

 こうして、良い感じに仕上がった状態で魔法祭に向かう事となった。

 




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