フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、後処理に奔走する

「はぁ……くっ!」

 

 分身込みとは言え数的不利な戦いだったけど、こちらの勝利で戦いを終結させる事が出来て、なおかつ妖精のお姫様に迷い込んだ子供を死なせず守りきるのに成功した点については良い。文句なしの結果だ。

 

 しかし、妖精の森深部の聖樹の一部とその周辺の木々が焼けて炭化していたり氷の彫刻になってたりと、洒落にならない被害を受けていた。そして、妖精たちを消滅寸前まで追い込み、2人を誘拐してこの空間に立て籠る悪質冒険者から皆を守る為とは言え、3人……いや、5人壊してしまっていた。出来るだけ壊さないようにしたつもりだったけど、やっぱり無理だったようだ。

 

「姉様……大丈夫?」

「正直言って、アイツら見てると破壊衝動がキツいからあまり大丈夫じゃない……かな。それよりも、ミアはどうなってるの?」

「大丈夫。妖精のお姫様が治癒術を使ってくれたお陰で持ち直したから……」

「そっか。良かったぁ~」

 

 肝心のミアの様子をヴァーミラに聞いた所、妖精のお姫様が治癒術を使ってくれたお陰で、自分自身に回復魔法を掛けることが可能になり、何とか持ち直す事が出来たらしい。だけど、それの影響で魔力が枯渇しかけてしまったらしく、まだ歩くのは厳しそうだとの事。

 

 ただ、あの攻撃でミアが死なずに済んだのは良かった。もしも死んでいたら、悲しみと怒りの感情に増大し過ぎて狂気に完全支配され、この冒険者を単純作業のごとく皆殺しにした挙げ句、暴走して昔みたいな大変な事になっていたことだろう。今も十分大変な状況ではあるけど、守る為に殺したのとただ単に狂気の赴くまま理由もなく殺すのとでは訳が違うと、私は思いたい。

 

「ヴァーミラ、ごめん。あの冒険者たちへの対処をお願い。今アイツらを見ると私、散々弄んだ挙げ句に()()()()()()()()だから。それと、村ギルドの人を呼んでくるね……」

「……分かった」

 

 そうして私はこの状況を村ギルドの職員……いや、ギルドマスターに伝える為、1人で妖精の森を出ることを決意した。この空間、冒険者集団から離れて少しでも破壊衝動を抑える為だ。今は理性で何とか踏ん張っている状況だし、アイツらの発言の如何によってはその場で理性が完全に消し飛び、暴走してしまう位には衝動に駆られている。

 

「姉様……気を付けてね」

「うん、勿論だよ!」

 

 こうして来た道を急いで戻り、ミロミスへ向かう。聖樹の空間に向かっている時にはわんさか居た魔物たちも、今は殆んど居ない。精々Cランク~Eランクの魔物が立ち塞がって襲い掛かってくる位だった。

 

「ああもう! 避けてるのに襲って来ないでよ鬱陶しいなぁ!」

 

 右に行っても左に行っても襲ってきて鬱陶しい事この上ないので、避けたりするのをやめて出会い頭の先制攻撃で討伐か消滅させる方針に切り替えた。そして今まさに私の近くまで接近し、襲いかかろうとしていた魔物を発見したので思い切り棒で殴りつけて吹き飛ばし、地面から突き出ていた岩に叩きつけて討伐した。

 

 その後も似たような感じで襲い来る魔物を、単純作業のように排除しながら妖精の森を進み、長い時間をかけてようやく村に戻る事が出来た。

 

「うぉぉっ!! ど、どうしたんだその格好は、血だらけじゃないか!?」

「ん……ああ、ごめん。綺麗にしておくね」

 

 そうして村を歩いてギルドに向かっている途中、私を見た村人が素っ頓狂な叫び声を上げたのでビックリした。彼曰く、私の全身のあらゆる部分が血で汚れている上に、瞳にハイライトがない状態で歩いている姿に恐怖を感じたらしい。よく見たら、遠巻きに怯えながらこちらを見る人や妖精たちが居た。

 

 吸血鬼にとって人間の血は、食料と同義だ。吸血鬼以外の種族にとっては鉄臭く、凝視するのも嫌な位であるようだけど……私にとっては甘い香りと味のする美味しい物としか思えない。今回の人間や妖精たちの反応は、そんな種族の違いが引き起こした認識の違いによるものだ。

 

 そうなると、どう考えてもこの血まみれの服で歩いている私は明らかに『ヤバい奴』だろう。瞳にハイライトが無い状態だったと言うのもそれに拍車をかけている。なので、素早く生活魔法『サウディオラ』を自分に発動させ、汚れている服を綺麗にしてヤバい奴から脱却した。

 

「これで大丈夫かな?」

「ああ、勿論だ」

 

 こうして村人とのやり取りの後、改めてギルドへ向かう。中に入ると、今まで行った事のある町のギルドよりもスペースは小さく、職員さんの数も少なかった。しかし、中に居る冒険者たちの数は他の町のギルドに居た冒険者たちの数に匹敵している感じだ。

 

「ここのギルドマスターさん、居る?」

「居ますよ。と言うか、ギルドマスターは私なのですが……何かご用ですかフランさん?」

「うん。それでさ、貴女今やる事ない? 暇だったりする?」

「暇……ですね、はい。案件も無いですし」

「じゃあ、私と一緒に来て!」

「良いけど一体何……ちょっと、何で抱え……!?」

 

 そうしてギルドに入った時、1番近くに居る職員さんらしき人に話しかけると、その人が偶然ギルドマスターだった事が分かった。更に聞いてみた所、仕事もなくて暇らしい。これはラッキーだと思ったので、思わず彼女を抱えて森の入り口まで飛行していった。

 

「ああもう、ビックリしたわ……妖精の森?」

「うん。実はね……」

 

 私はここで彼女をここへ連れてきた理由を事細かに、包み隠さず覚えている限りの事全てを話す。案の定、()()()()()()()()()()()()()()と言った瞬間に顔が曇るが、まずは現場を見てみない事には話が出来ないと言う事で、当初の予定通り聖樹のある空間へと向かう。

 

「……1つ聞きますけど、食べてないですよね? 人を」

「食べてはないよ。壊しはしたけどね。久しぶりだったよ、あんなことしたのは」

「……」

 

 道中、脈略もなくギルドマスターの彼女からそう聞かれた。人を食べる事はおろか、吸血行為すらしていない。なので私はそう答えた。

 

 その後は何も会話は無く、たまに襲いかかってくる魔物を淡々と討伐しながら聖樹のある空間へと歩みを進める。

 

 そうして長い時間をかけようやく深部の聖樹のある空間へと到着する事が出来た。辺りを見ていると、ヴァーミラが淡々と冒険者たちへの対処を行い、大分回復したミアが妖精のお姫様と子供の視界を遮りながらそれを見ていた所を見た。

 

「これは強烈な……これだけを見ると、本来なら非常に厳しい罰が下される所でしょうが、フランさんの話が事実であるのなら話はかなり変わってくると思います。色々調べたりやったりすることがありますので、そうですね……1週間~3週間程ここに滞在して頂くことにはなりますが、宜しいでしょうか?」

「うん……あ、真映鏡(リフレトゥールミラー)使えば1発で分かると思うんだけど」

「それは無理ですね。あれは借りるのにとんでもない額のお金が必要になるのに加え、もう既に先客が居るみたいで……」

 

 なるほど。まあとにかく、それが使えない状況だと言う事は分かった。なので私たちは彼女の言う通り、ミロミスの村に最大で3週間滞在する事になった。

 

 




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