フランの異世界召喚記 作:松雨
「ええい! どうして僕がギルド本部長に就任してからこうも厄介事が前本部長の時の3倍も舞い込んで来るんだ! 違法魔導師組織のマジスト共が動き出すわ、悪質冒険者が増え過ぎたせいで皇国から怒られるわ、他にも色々あって散々だちくしょう!」
「本当だよね~。何でか知らないけど、アクトが就任してから急に増えたし。実は厄の神なんじゃ……?」
「厄の神ってリリィ、君ねぇ……まあ、強ち否定は出来ないのが辛い所だけど」
ノストライト皇国の皇都『シェイニーグ』に存在するギルド本部。そこで今後の方針や何らかの重大な厄介事が起きた時等の対策を協議する会議が開かれていたのだが、そこでここ最近就任した本部長のアクトが荒れに荒れていた。何故なら、彼がギルド本部長に就任してから急に厄介事の数が3倍以上に増えたからだ。
その為、各国の首都から集まったギルドマスターの中には彼の事を厄の神・ギルドの面汚し等と言って呼ぶ人が多いものの、舞い込んで来たどの厄介事も早急に解決してしまう為、誰も彼を辞めさせようとは思っても実行には移さない。
「荒れるのは後にしてくれ、会議が進まない。で、どうするんだ本部長。マジストの魔導師誘拐事件についての対策を出し合うんじゃないのか? ギルドの冒険者も被害を受けているんだよな」
「あ、そうだったね。済まない、レイゼ。それでその件についてなんだけども……現状、各国の警備隊とギルドが合同で警戒に当たるしかないんだ。何せ、彼らは拠点を構えていないからね」
「ああ……確かにな」
「じゃあ、それについてはアクトの言った案で良いかな?」
会議の議長でもあるアクトが荒れていては話が進まないと、カーテンド王国のレイゼが諌めて何とか落ち着かせ、話を進める。しかし、マジストは表立った拠点を持たない組織なので対策が厳しいのが現状である。その為、これについてはひとまず各国の警備隊とギルドで警備の強化等の対策をすると言う事で話がまとまった。
「あ、そうそう。何ヵ月か前に新しく冒険者登録した吸血鬼の女の子いましたよね? えっと名前は確か……」
「フランドール・スカーレットの事かの? シュロン殿」
「ええそうよ、イェーメリアさん。それにしても、最初聞いた時は驚きましたわ。何せ、吸血鬼が冒険者登録するなんて初めての事でしたもの」
「ワシも、シュロン殿と同じじゃ」
そうして次に『クーア王国』のシュロンが話題に上げたのは、数ヶ月前に冒険者となったフランドール・スカーレットについてだった。吸血鬼が冒険者登録をしたのはギルドにとって初の事態であった為、基本年に1度のこの会議でも話される事となる。
「あやつは今どこで何をしているのかのぉ。人間にむやみやたらに危害を加えていなければ良いが」
「イェーメリアさん、フランの奴に限ってそりゃないと思うぞ。まあ、仲間や本人に危害を加えたら分からんが」
「レイゼお主、やたらとその吸血鬼の肩を持っているが一体どうしたんじゃ? もしかして本人と会った事でもあるのかの?」
「その通りだ。一緒にワイバーン食ったりしながら話もした事あるからな。だからそう思ったんだ」
「ふむ、なるほどな」
女の子とは言え吸血鬼。それ故に、人に対して危害を加えないか心配でたまらない様子の、『ネーマノシェン共和国』のイェーメリア。その際の発言に対して、レイゼがすかさずそんな事はないだろうと反論した。会議に出席している各国のギルドマスターの中で、フランが冒険者になってから唯一本人と出会って話をして食事までした事がある彼だからこそ、そう言えた。
「それにですよ、彼女は今現在ではCランクですけど、F~Dランクの時にカーテンド王国で数々の功績を残してます。その中でもシャームの町で出された緊急依頼で、現れたグランドドラゴン2頭を
「確かに。もう何回もその時の資料を見ているが、改めて聞くと凄いって感じるぞ」
そうして話は、フランの立てた功績の事について移った。カーテンド王国のルービエの町のギルドマスターからの報告等が書かれた資料を見ながら、レイゼがそう言い始めた。
「確かに、討伐依頼での活躍だけでもBランク冒険者レベルだからなぁ。それに、他の依頼も結構受けてるから総合的に考えてAランク辺りが妥当だと僕自身は思うね。何かしらのトラブルを起こしたって話も効かないし。まあ、決まりがあるからいきなりホイホイ上げたりはしないけどさ」
「じゃあ決まりが無ければすぐにでも上げてたの? アクト君」
「多分、上げてたんじゃないかな」
それにアクトが同意し、話を進める。彼は今すぐにでもBランクかAランク辺りに上げたいと思っているが、自分が主導して決めたランク上げについての決まりがある為、その気持ちを抑えた。
その後は会議前に粗方決まっていた今後の方針を再確認しつつ、フランについての話が続く。と、その時アクトの座っている席の後ろにある扉が開き、入ってきた男が彼に丸められた羊皮紙を手渡した。
「えっと……ぶっ!? 嘘ぉ……」
「ちょっとアクト君、汚いなぁもう! 一体どうしたの?」
渡された羊皮紙に書かれていた内容を見たアクトは、飲んでいたお茶を盛大に吹き出して項垂れる。吹き出されたお茶は側に居たリリィの顔や資料に全て掛かり、思わず彼女は机を叩いて怒鳴る。
しかし、アクトに見せられた羊皮紙の内容を見て怒りは一瞬で何処かに消え去り、叫ぶ。
「ミロミスのギルドに、フランドール・スカーレットが冒険者殺しを自供しに来たぁ!?」
「「「え、えぇ!?」」」
リリィのその叫びを聞いて他国のギルドマスターたちは驚くと同時に、彼女が叫んだ羊皮紙の内容にも再び驚く。
「遂に殺りおったか……こりゃまた後始末が大変そうじゃな」
「これ以上、今すぐにでも聖教会と協力してフランドールを殺すべきでしょう!」
「……」
ここに集まった人達の3分の1は羊皮紙の内容の一部を聞き、今すぐにでもフランを殺すべきだとの過激な主張をする。しかし、そこへ待ったをかけたのはギルド本部長のアクトだった。
「……待って下さい。この報告にはまだ続きが」
そうして彼は、羊皮紙に書かれていた事を一字一句正確に読み上げた。フランに殺された冒険者は子供と妖精のお姫様を誘拐して売り飛ばそうとしていた超悪質な冒険者だと言う事、彼女の仲間の回復魔導師を傷つけた事によって怒りを買ったが故の出来事であると言う事、妹である吸血鬼ヴァーミラ・スカーレットも1人守る為の戦いにおいて流れ弾で1人殺していた事等も全てだ。
「良かった、ただ単に殺した訳じゃなかったのか……」
「しかし、その際にフランドールは『人間を殺した』ではなく、『人間を壊した』と表現したと。いやはや、何とも恐ろしい限りじゃな。人を物扱いしているとは……」
「ええ、それについては僕も同意見です。しかし、事情が事情なので単純に冒険者資格剥奪と決定するわけにはいかないのが現状で……その悪質な冒険者たちはマジストと繋がっていたらしいとの情報もあり……」
アクトの最後の一言を聞いた各国のギルドマスターは、再び驚き叫ぶ。その後は会議場は混沌を極め、やっぱり資格剥奪した後に依頼を出して殺せと過激な主張をする者、ちゃんと色々精査してから裁判するべきだと主張する者、思考を放棄して黙る者等が出てくる。しかし、殴り合いや魔法の撃ち合いにはギリギリならなかった。
「なあ、
「「「……それだぁ!」」」
混沌としている中、この話し合いに参加せずに黙っていたレイゼがそう言った。すると荒れに荒れていた会議場が静まり、全員がその提案に賛成した。
「で、今フランドールは何処に居るのかの?」
「ミロミスの町に滞在してもらっているらしいですよ」
「よし! 今すぐ使者をそこに送るのだアクト殿!」
「言われなくたってそうしてますよ」
こうして、満場一致でフランが皇国の皇都にあるギルド本部に呼ばれる事となった。
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それと、第3章と第4章の登場人物や魔法をまとめ、最新話と同時に投稿する為に明日、長引けば明後日の投稿もお休みします。
勿論、明日中に完成した場合はその時点で投稿します。