フランの異世界召喚記 作:松雨
「次はどこに行こうかな~」
人質をとっていた強盗の犯行を阻止した後、王都内を歩きながら次にどこへ行こうか考えていた。
「さっきから鎧着た兵士が多いなぁ」
その事件の影響か、私の歩いている商店街には複数の警備隊らしき兵士が慌ただしく行き来しているが、町行く人たちの活気は失われてはいなかった。流石に店の周辺からは人が居なくなったようではあるが。
「お姉ちゃん……ちょっと良い?」
「何? 私に何か用事でもあるの?」
そうして王都の風景を楽しみつつ、大通りなら少し外れた所にある雰囲気が怪しい建物の前を通りすぎた時、私と見た目が同じかそれ以下の男の子に話しかけられた。
目には涙を浮かべていたので恐らく、何か不味い事が彼の身に起こってそれを解決して欲しくて私に話しかけてきたのだろうと思った。
一体何を頼まれることになるのかな? 親捜しか落とし物、道案内やお金の要求のどれかかもしれない……そう考えていると、全く予想していない答えが帰って来た。
「僕のお父さんのお店で何か買ってって頂けませんか?」
「え? お店の商品を?」
「はい!」
「……別にそんな簡単な事なら泣いて頼まなくたって良くない? 良ければ訳を聞かせてもらいたいんだけど……」
言われた頼みは、お店の商品を少しでも良いから買ってくれと言う物だった。それなら別に泣いて頼み込まなくても良くないかと思ったので、どうして泣いてまで頼み込んで来たのかを聞かせてもらった。
彼によると、前までは生活にも余裕が出来るくらい盛況していたらしいが、とある日店に『怖い人』が来てからお客さんが激減して、たまに来てくれた地元のお客さんには嫌がらせ、冒険者にはあらぬ嘘を吹き込むと言う始末で、今ではほとんど誰も来ずに生活が大幅に厳しくなった事をお父さんに聞かされたからだと言う。
「……分かった。お金の許す限りだけど、何か買ってくね」
「ありがとう……」
話を全て聞き、冒険者である私なら恐らく大丈夫だろうと判断したので何か買っていく事にした。いざとなったらスペルカードを本気仕様で使うだけだし。
彼の案内により怪しい雰囲気を醸し出す建物の中に入ると、そこにはあらゆる種類の品物がところ狭しと並べられていた。妙な形をした魔力を感じる剣、瓶に入れられた用途不明の液体等、見たことのない道具も中にはあった。
「ここってどういう店なの?」
「えっと……」
「ワイト、誰か来たのか」
「あ、お父さん。久しぶりにお客さんだよ!」
店の奥から、黒いローブを着た男の人が現れた。あの人がワイトと呼ばれる彼のお父さんのようだ。
かなり強い魔力を感じるので、腕の立つ魔導師なのだろう。
「わざわざ来てくれてありがとう。最近は殆んど来てくれなくてね、生活すらままならなかったんだ」
「あ、どうも。それは彼からここに来る時に全部聞いたので、何と言えば……」
「そうか。まあゆっくりしていってくれ」
軽くワイトのお父さんと会話を交わした後、店内をじっくり見て回る。
そうして店の奥の方にあった淡く発光して浮き上がる巻物が置いてある場所に入る。
「ワイト、この浮かんでる巻物って何?」
「えっとね、これはお父さんが開発した魔法の巻物って言って、中に特殊な方法を使って魔法を封じていて、この巻物を開けた人が封印されてた魔法が覚えられる物だって言ってた。お父さん、この説明で合ってた?」
「ああ。その説明で合ってるぞ」
なるほど、開くだけで魔法が覚えられる物と言う訳か。そんな便利なものがあるなら使ってみたい気がしたので、値段を聞いてみたら攻撃や防御・回復系魔法の巻物は金貨30枚、生活系魔法の巻物は金貨5枚と言われた。作るのに物凄い手間とお金が必要だかららしい。
よく考えてみれば、そんな便利で手間がかかり、なおかつ高コストな物をたった1人で開発したのだから、値段が高くなるのも当たり前だろう。
「て言うかさ、そんなにお金がかかるなら作るの止めるなり、今あるのを売るなりすれば生活だって少しは……」
「今店に置いてあるのは余裕がある時に作った奴だ。今は作ってない。それに、これを売ろうとして努力をしたこともあるが、ことごとく失敗しててな。もう完全にインテリアと化しているよ」
売ろうとしても売れないと言う事なら仕方ないだろう。
「嬢ちゃん、興味があるのか? それなら今回に限って1つだけなら安くしておくぞ」
「本当!? ありがとう!」
攻撃と防御は弾幕とスペルカードで、回復は再生能力で取り敢えず良し、となると選択肢は生活系魔法の巻物だが、さてどれにしようか。
そんな感じです5分間考えた結果、自分が身に付けている物全てを綺麗にし、消臭もしてくれると説明にあった魔法『サウディオラ』が封印されている巻物に決めた。
「ワイトのお父さん、これ下さい」
「ああ。金貨2枚で良いぞ」
そうしてお金を支払って魔法の鍵を解除してもらい、手に入れた巻物を開く。すると、頭の中にこの魔法のあらゆる情報が流れ込んできたと同時に、巻物は光となって消滅したようだ。
「嬢ちゃん、サウディオラを使ってみてくれ」
「分かった……『サウディオラ』」
私がそう言うと、淡い光が身体全体と持ち物を数秒包み込んだ後消滅した。
効果はしっかりあったようで、さっきまで砂や埃などで汚れていた日傘がまるで新品同様に綺麗になっていた。
「凄い便利な魔法……これが練習なしで使えるようになるなんて……」
「気に入ってもらえたようで何よりだ。まあ、その魔法自体は冒険者たちにありふれた物で、練習すれば得る事が出来る。ただ、練習する手間が省ける点ではかなり有用だろう?」
「そうだね!」
かなりなんて物ではなく、物凄く有用と言うべきだと思った。
他にも興味をそそられる魔法の巻物がいくつかあったものの、高すぎて買えないので諦めて店を後にした。
「残りのお金は金貨5枚……まだ大丈夫だけど、この調子で使ってたらすぐに消えるよね」
このままだと、ものの2日~3日程度で全部使ってしまうのは明白であったので買い物を自制し、採取依頼があればそれをこなして早くランクアップを狙い、魔物の討伐依頼などを受けれるようになろうと私は決意した。出来るかどうか不安だけど。
それにワイトが言っていた『怖い人』と言うのも気になるな。盛況していた店を傾けるためだけに住民にすら危害を加える危ない存在がこの王都に潜んでいると言う事だから、少し警戒する必要がありそうだ。
その後どこに行こうか迷っていたが、ギルドに採取依頼が出てないか確認をするので戻ろうと決めた。王都歩きの前に1回確認したばかりではあるけど、念の為だ。
歩くこと15分後、ギルドに到着したのでクエストボードの前に行き、採取依頼を探していると後ろから声をかけられた。
「フランちゃん、今大丈夫?」
「うん、大丈夫だよスーファ。何か用事?」
「そう。実は貴女を呼んで欲しいとここのギルドマスターに言われた」
スーファが声をかけてきたのは、ギルドマスターに私を呼んできてと言われたかららしい。そんな呼ばれるような事した覚えは……もしかして強盗犯の時のあれかな? それしか心当たりがない。
取り敢えず断る理由などないので、私はスーファの案内でギルドマスターの居る部屋に入っていった。
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