フランの異世界召喚記 作:松雨
「あ、久し振りだねレイゼ! そう言えば、ギルド本部で私を庇ってくれたよね。ありがとう!」
「覚えててくれたのか。それにしても、フランは相変わらず厄介事に巻き込まれてんな」
「あはは……確かに、行く先々でほぼ確実と言って良いほど巻き込まれてるんだよね。何でだろうなぁ」
クドセームと私の間に乱入してきたのは、カーテンド王国王都のギルドマスターのレイゼだった。休憩の為に近くの店で朝食を取っていた所、偶然ヴァーミラの水の小鳥を目撃してその時からずっと見ていたらしい。で、そのままこのイベントも見ていたとの事。
「ギルドマスターが何の用事? これはれっきとした強さと美しさを競う決闘なんだ、邪魔しないでくれないか!」
「いや、あんなの見せられたら邪魔しない訳にはいかないだろ。それに、
「なっ……失礼ではないのか! いくらギルドマスターとは言えそんな無礼は!」
「初対面の14歳の女の子に求婚する、皇国の法にガッツリ触れてるヤバイ奴に言われたくねぇな。あと言っちゃ悪いが、俺でもお前に勝てるぞ?」
突然の他国のギルドマスターの登場に、さしものクドセームを見に来た人たちも怒る気力すら湧かず、ただただ2人のやり取りを見つめていた。その間もレイゼがひたすら煽り続け、クドセームが反応して顔を赤くして怒ると言った感じのやり取りが続く。
しかし、流石のクドセームも他国のギルドマスターに殴りかかったり魔法を放ったりするのは不味いと思っているらしく、一線は越えていない。てか、そう言う常識はあるのに女の子が嫌がる事はしない常識はないのかと、私は心の中で呆れていた。
すると、クドセームが"皇国の法に触れている"と言う言葉にビックリしたのか、大慌てで反論する。
「14歳!? だけど、皇国では記憶だと14歳はギリギリセーフだから問題ないはずだ!」
「……いや、お前はエライ勘違いをしているぞ。14歳から結婚可能なのは俺の国と、この大陸だと後はクーア王国だけだ。ちなみに皇国は16歳からな」
だけど、最後のレイゼによる止めの一言で完全に魂が抜けたような感じになり、以降先ほどまでのテンション高めの感じに戻る事はなかった。観客の人たちも、特に彼のファンであった人は完全に顔が死んでいた。
その後、どこからか現れた皇国の兵士さんたちが項垂れているクドセームに封魔の腕輪を2つつけて連行していったのを、私たちは最後に見届けた。
「姉様、何かお疲れ」
「うん。朝起きてすぐにこれはキツい……」
「よし、じゃあ俺が皆に奢ってやるから飯に行くぞ」
「本当に? ありがとう! わたしも疲れたから、早く朝ごはん食べに行こ――」
「吸血鬼のお姉ちゃん! さっきの続きやって!」
話の途中で、朝食をレイゼが奢ってくれると言ってきた。それを聞いた私たちは大いに喜んで、早速朝食を取りに行こうとすると、水の小鳥と戯れていた子供が近寄ってきてヴァーミラに続きをせがむ。
「分かった。だけど、これから朝ごはん食べに行くから少しだけだよ」
「うん!」
そうして頼みを聞き入れてから15分間、ヴァーミラは生み出した水の小鳥による数々の芸を披露してどうにか子供を満足させる事が出来た。周りの人も拍手を送ってくれていた為か、彼女も心なしか嬉しそうだ。
「えっと……皇都には1ヶ月居るし、その間にも何回かやるよ。今日はひとまずこれでおしまい……」
「そうなの? まあ、無理ない範囲で頼むわね」
その後、イベント会場を後にした私たちはレイゼに連れられて近くの店に入り、ようやく朝食にありつくことが出来た。
「なるほど……君がフランの妹のヴァーミラか。俺はカーテンド王国の王都ギルドマスター、レイゼだ」
「そう。私がフラン姉様の妹、ヴァーミラ・スカーレット。よろしく……」
「にしても、吸血鬼が2人揃ったパーティーも珍しいと言うか始めてだが、水をあんなにも自由に操れる吸血鬼なんて初めて見たぞ」
朝食を食べている時、ヴァーミラがレイゼと互いに自己紹介を初めにしてから、カーテンド王国を出てからの冒険についてを覚えている限り話したりしつつ楽しんだ。そして全員が食事を終えた後、私たち3人はレイゼに挨拶をしてから別れた。
「朝食取ってお腹一杯になったけど、次はどこに行くのフランちゃん?」
「う~ん。ギルドかな」
「依頼を受けるつもりなの?」
「まあね、暇だしさ。もしかして、どこか行きたい所でもあるの?」
「いや、ただどこに行くのかなぁって気になって聞いただけだよ」
レイゼと別れた後、町をのんびり歩いていた時にミアにそう聞かれた。この後特にやる事を決めていなかったし、ギルドで依頼を受けようかと思っていた事を伝えた。
「姉様、依頼と言っても1ヶ月以内で済む奴にしないと、商団護衛依頼に影響したら大変……」
「分かってるよ」
そんな会話をしながら皇都のギルド本部に入ると、目の前で男の人1人に女の人2人の冒険者集団が、冒険者3人の集団に何やらちょっかいをかけられていた。良く聞いてみると、ちょっかいをかけられている方の冒険者集団は新人で、どうやら新人冒険者に対してなにかと難癖をつけて楽しむような厄介者に、運悪く捕まってしまったようだ。
「これが新人イビりって奴……」
「そう言えば私も冒険者になった時、ああいう奴にちょっかい出されたっけ」
「そうなのフランちゃん?」
「うん。だから前の自分を見てるみたいだし、助けるよ」
何だかあの時の自分を見てるみたいで放っておけない。なので、新人にちょっかいを出してる方の背後に霧化して回り込む。
「はい、そこまでね!」
「何だよ……へ!?」
「ヤバイ、逃げるぞお前ら!」
「何でこんな所にぃぃ!!」
相手の方はどうやら私の事を知っていたらしく、こちらの姿を確認した瞬間脱兎の如くギルド本部から逃げていった。こうなるのが怖ければやらなければいいのに。そう心の中で考えていると、さっきの冒険者が近寄って来て頭を下げてきた。
自分が好きで助けただけ、正義感があった等の素晴らしい理由ではないのでお礼は特に要らないと、私はそう彼らに伝える。
「いえ! それでも助かったんで、有り難うございました」
「にしても、あの厳つい男が情けない姿を見せて逃げ出すってどれだけヤバい奴なんだ? この子」
「あ、良く見たら向こうにも吸血鬼の子が居ますよ。回復魔導師も」
しかし、それでもお礼を言ってくれた。これ以上拒否したら逆に彼らの気持ちに失礼かと思ったので、それを受け入れた。
「それで、貴方たちは一体何の依頼を受けるつもり?」
「あ、えっとですね……私達新人なので、採取の依頼を受けました」
依頼書を見せて貰うと、確かに採取依頼をだった。内容は『
種類が結構ある上、どれも採取出来るポイントがバラバラだ。移動距離もかなりあり、その間に魔物の襲撃があるかもしれない。制限期間にかなりの余裕があるものの、新人冒険者にはキツいかもしれない。
「あのさ、もしよかったら護衛は引き受けるよ」
「本当ですか! 何から何までありがとうございます! 採取と弱い奴は僕たちがやるので手出しはしなくても大丈夫です」
「もちろんそのつもりだよ。それと、ただ気が向いただけだからそんなに大げさに騒がなくても……」
その後、ギルドの人にも護衛依頼を受けたと言う形で許可をもらい、新人冒険者の護衛として同行する事となった。
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