フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、襲撃者を撃破する

「良く来てくれた。俺はレイゼ、ここのギルドマスターをしている者だ」

「こんにちは、ギルドマスターのレイゼさん。私はフランドール・スカーレット、フランと呼んで!」

「分かった。それでわざわざフランを呼んだ理由はな、お前に特別な恩賞を与える為だ」

「特別な恩賞?」

「そうだ。ザルソウって知ってるか?」

「うん。王都に出歩いてる時に女の人を人質にしてた強盗犯がその名前で呼ばれてたのを聞いたよ。ナイフを刺そうとしてたから、能力で壊して助けたけど」

 

 ギルドマスターのレイゼによれば、あの女の人を人質に取っていた強盗犯のザルソウと言う男は、多くの盗みや強盗を繰り返していた悪人だったらしい。

 王都のギルドと王都守備隊が協力して追っていても捕まえられないほどの隠蔽・探知能力に優れた人物とのこと。戦闘能力もそこそこ高いみたいだ。

 

 私が遭遇した時は、わざと町の警備を薄くして泳がせておき、盗みや強盗をやらかした所を取り押さえると言う作戦をしていた途中で、後少しと言う所で守備隊がやらかしてしまって人質をとられてしまった時だったらしい。

 

「でも、その後すぐに立ち去ったのに名前まで何で分かったの?」

「ほら、これだよ」

 

 そう言ってレイゼが取り出したのは、私のギルドカードだった。どうやら気づかない内にあの場所に落としていたらしい。

 

「つまり私が能力を使ってナイフを壊した所を目撃した人が居て、その人が私に落としたカードを届けようとしたけど何らかの理由で無理だったから、ここに届けられたと。その時に情報が伝わった訳と」

「その通りだ。それにしても、奴に気付かれずにナイフだけをピンポイントで粉砕するとはね。届けに来た騎士も驚いてたぞ。突然後ろから現れた紅い日傘の金髪少女がナイフに右手を向けて、きゅっとしてドカーン!! って言ったら、その瞬間にナイフがあり得ない砕け方したってな」

 

 まあ、ありとあらゆる物を破壊する程度の能力だから最大で隕石を破壊した事もあるし、それ以下の物体であれば問題なく破壊できるだろう。

 

「それでレイゼさん、特別な恩賞とは一体?」

「ああ、それはだな――」

 

 レイゼが恩賞の内容について何か言おうとした時、この部屋の扉が壊れる位の勢いで開き、スーファが慌てて入ってきた。

 

「レイゼ、大変! 変な男1人と女2人が受付のフロアで暴れてる。あの店寄った金髪のガキ出せやって叫びながら」

「なんだと!? 分かったすぐ行く。それにしても、あの店って何だ? ヤバい噂しか聞かないあの怪しい雰囲気の店の事か?」

「分からない。けど、もう負傷者も出てる。今は何とか冒険者が止めてるけど、運悪く腕の立つ人が居ないから押されている」

 

 まさか、ワイトの言っていた『怖い人』の嫌がらせか? いや、それにしては酷すぎるしそれに、冒険者には噂を流すだけだど聞いていたけど……仮にそうだとしたら、私があの店に寄ってから帰るまでつけられていたと言う事になる。

 

「フランはここに――」

「私も行くよ!」

「いや、でも……」

「心配しなくても大丈夫。危なくなったら逃げるから!」

「分かった。無理をするなよ」

 

 そうしてレイゼと共に現場へと向かうと、そこは戦場と化していた。冒険者たちの抵抗によって受付の人たちは何とか守られているが、突破されるのも時間の問題だろう。

 

「貴様らいい加減にしやがれ!! 俺のギルドで好き勝手暴れまわって何がしたい!」

「ふん! ギルドマスターのお出ましかい。何がしたいって? お前の隣に居る金髪のガキを寄越してもらいたいのさ。我らの雇い主が進めているあの店を潰して、あのジジイの研究成果と魔道具を根こそぎ頂こうと言う計画の邪魔になりそうなのでな」

 

 多分あの3人がワイトの言っていた『怖い人』なのだろう。それにしても雇い主か。と言うことはアイツらをけしかけた黒幕がどこかに居るのは確実だ。

 さて、これ以上関係ない人たちに危害を加えられては困るから、ここは私自ら出た方が良いだろう。

 

「あんたたちの雇い主、本っ当にくだらないね! 研究成果と魔道具が欲しいなら自分で努力をすればいいのにさ」

「へっ! 知るかよ。それよりもガキ、こっちに来い。抵抗するのならコイツら死んでも知らないぞ?」

「それ、本気で言ってる?」

「当たり前だろう!」

 

 ああ、こりゃ駄目だ。アイツらには1度分かってもらう必要がある。ならば……

 

「そう。じゃあ私、今からあなたたちを半殺しにするね。ふふっ」

 

「「「っ!!」」」

 

「『禁忌 フォーオブアカインド』!」

 

 私はすぐさまスペルカードを発動、分身を3人作って合計4人の自分にする。

 

「レイゼさん! 周りを覆うようにバリア的な魔法かけられる?」

「よし分かった! 『魔法物理結界』!」

 

 レイゼがそう唱えると、1階の休憩スペースを覆うようにして光の結界が発動した。

 

「これで大丈夫だろう。存分にやりな!」

「ありがとう! さてと……」

 

 これで周りの被害を考える事なくアイツらと戦える。

 

「分身した!?」

「そう。これで4対3だから、数の上でも私が有利になった。あと、分身たちは全員私と同等の力を持っているから、せいぜい頑張ってね」

「……」

 

 そこから私と分身は3人に向かって一斉に弾幕を発射する。空間を埋め尽くさんとする程の密度で放たれたそれは、威力は低めではあるものの、着実にアイツらの体力を削って行く。

 

「ぐっ! 『対魔法障壁』」

 

 弾幕の制圧射撃を食らわせていた3人の内の1人、女の人が障壁を展開しながら本体の私に接近して蹴りを見舞って来たので、その足を受け止めてから投げ飛ばす。そこに他の2人を攻撃していた分身たちが合流し、あらゆる物理攻撃を叩き込んでダウンさせた。

 

「くそっ! おのれぇぇーー!!」

「はぁぁぁ!!」

 

 1人が倒され、これは不味いと思ったのか2人同時に襲いかかって来たが、4対2と数の有利が拡大したのもあって少しずつ追い詰め、遂に分身の蹴りが女の人の脚を捉えた。

 

「あぁぁぁぁー!!」

 

 脚の骨が折れたのだろう、のたうち回って苦しんでいる。とても戦闘どころではなさそうだ。

 

「くそ! くそ! くそぉぉーーー!!」

 

 最後の1人は剣で襲いかかって来たので、私はとあるスペルカードで迎撃する。

 

「『禁忌 レーヴァテイン」』

 

 炎を纏った自分の身長ほどの剣を生成、相手のデタラメな攻撃を全て捌き、疲労した所に薙ぎ払いを食らわせて吹き飛ばしてダウンさせた。こうしてギルドに危害を加えてきたアイツら全員に死にはしない程度のダメージを与え、制圧する事に成功した。

 

 そうして私は負傷した人の元に向かい、私があの店に寄ったせいでこうなったことを謝罪した。

 

「ごめんなさい! 私のせいでこんなことに……」

「俺は大丈夫だぜ。あの店に寄ったと言う下らん理由で襲撃して来た馬鹿共が悪いんだからな」

「ええ。それに、偶然彼女がきっかけであっただけで、遅かれ早かれこうなってたかもしれないしね」

「確かにな。よし、取り敢えずその話は終わりにして壊れた場所の修復をするぞ。負傷者はスーファさんの回復魔法に任せて、後は……」

 

 そうしてまだ負傷していない冒険者たちが、半殺し状態の3人の元に向かう。

 

「さて、貴様ら。この落とし前、どうつけてくれるんだ?」

「ねえ。あんたらにこんなことを命令した黒幕は誰?」

「言う訳ないだろ……」

 

 彼らの言った雇い主の情報を聞き出すために尋問が始まった。最初は抵抗していたものの、レイゼがスーファにアイツらを回復させ、私にまた半殺しにしてもらう無限地獄を味わってもらうことになるぞと脅した瞬間、抵抗しなくなって全てを話し始めた。

 

 




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