フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、皇城へ行く

「……起きて! フランちゃん」

「姉様、いい夢でも見てたの? 凄い幸せそうな顔をしてたよ?

 」

 

 ギルドの休憩スペースで眠ってからどれくらい経ったか分からない時、身体をヴァーミラとミアに揺すられて起こされた。レイゼを含む私たち4人に紅魔館の皆でほのぼのと過ごすあの夢、凄く心が暖まった。

 

 今はまだ現実ではないけれど、いつかこの世界でお姉様たちと会った時に現実になるのだろう。問題は八雲紫が許してくれるのかと言う事だけど。

 

「……ごめん、寝てたみたい。まあ、確かに幸せな夢ではあったよ」

「やっぱり? どんな夢だったのか後で聞かせて。それと、姉様が寝ている間になんか私達に用があるって人が居たんだけど、幸せそうな顔をして寝てる姉様を起こしてまで無理に連れてこうとしてたから思わず、あんな風に……ごめん」

「私の為に、でしょ? だから怒ったりはしないよ」

 

 そんな事を考えていると、ヴァーミラが向こうを指差しながらそう声を掛けて来たので何だと思って見てみると、氷の牢獄に閉じ込められた皇国の兵士が居た。私の為にやってくれたのは嬉しいけど、何だか面倒な事になりそうだと思いつつ牢獄に近づき、中に居る兵士に問いかける。

 

「ヴァーミラから聞いたけど、私を無理矢理連れてこうとしたんだって? そうまでして何をしたかったの?」

「……」

「ああ、そう言う事……えい!」

 

 いくら問い掛けても震えるばかりで反応がないので、もしかしたら私が知らず知らずの内に威圧していたのかと思ったけど、それはすぐに分かった。外側にこれ程の冷気を放つほど強力であるのなら、内側は更に凍てつく冷気で満たされている筈。ただの人間には辛い寒さになっている事だろう。

 

 なので、私の能力で氷の牢獄を破壊して彼らを解放させ、更に念の為にミアに回復魔法を掛けて貰い体力を回復させた。

 

「改めて聞くけど、私を無理矢理起こしてまで連れていこうとする程の用事って一体なに? もしかして、シェール絡みで?」

 

 そうして改めて話を聞くと、どうやら私とヴァーミラとミアの3人を呼ぶように、皇帝陛下から指令が下ったらしい。皇帝直々に呼ばれる心当たりはシェール絡みの何かしかないので一応聞いてみたら案の定、そうであった。しかも、怒っていると言うおまけ付きらしい。

 

 しかし、怪我をさせたり精神にダメージを与えたりする行為はしていない。私の羽やヴァーミラの作る"水の動物"のお陰でかなり満足してくれてたから、呼ばれる心当たりはあっても怒られる筋合いなど無いはずなんだけどなぁ。

 

「分かった。そう言う事なら行くしかないよね。逆らっても面倒なだけだしさ」

「それは良かったです。もし断られてたら戦闘してでも連れて来いと言われたので……吸血鬼と一介の兵士たる我らでは、最初から死ににいく様なものですし。現に貴女の妹に完封されてしまいましたから」

「それに優秀な回復魔導師も居るし、3人で連携されたら正直勝てる奴と行ったら、上位聖職者位かな?」

 

 まあ、ああだこうだ言ってても仕方ない。今この場を穏便に済ませるには私たちが大人しくついて行く事が必要なのは明白、お姉様たちと会うまでに面倒なトラブルを抱えたくない私にとって、選択肢はあって無いようなものだ。と言う事で私たちはその兵士さんについていき、皇城へと行く事になった。

 

 そうして兵士さんの案内で皇城へと入り、比較的装飾が控え目の廊下をゆっくり歩きながら大きな鉄扉のある部屋に入ると思いきや通り過ぎ、少し歩いた先にあった赤い木の扉の部屋前で止まった。

 

「失礼致します、陛下」

「連れてきたか、入りたまえ」

 

 赤い木の扉を兵士さんがゆっくり開けると、そこに居たのは皇帝陛下らしき人にシェールとレクノヤ、その他兵士さん等かなり多くの人が居た。

 

 確かに兵士さんが言っていた通り、皇帝陛下らしき人の顔を見てみるととても怒っているのがよく分かる。

 

「貴様らがシェールの言っていた吸血鬼か。全く余計な事をしてくれた物だ。お陰で『水の動物さん達と遊んでる方が楽しい』と作法の練習に余計身が入らなくなったではないか、どうしてくれる」

「……」

 

 どうしてくれると言われても、それはそっちの問題であってこっちがどうこう出来る問題ではないような気がするんだけど……と言うか水の動物を作ったのはヴァーミラであって、私やミアではないから何とも言えない。

 

 その後も私たちが黙って聞いているのを良い事に、色々言いたい放題言ってくれているけど、まだ命を狙われた訳ではないので攻撃はしない。

 

「と言う訳だ。今後シェールが貴様らの所に来て"水の動物"を要求しても追い返せ。これは皇帝直々の命令であるから、逆らえば即刻牢獄行きだぞ。後、追い返すその時に多少なら傷つけても構わぬ」

「……貴方、正気なの?」

「勿論、正気だ」

 

 予想の斜め上を遥かに行く発言に、思わず素で聞き返したヴァーミラ。私も同じ事を考えていた。まさか、息子を傷つけても良いから追い返せと言われるとは思ってもいなかったからだ。少しシェールの方をチラッと見てみると、何だか泣きそうな目をしていた。

 

 なので、この状況を打破する為の言葉を言おうと考えていると、先にメイドのレクノヤが勇気を出し、恐れをはね除けて発言し始める。

 

「僭越ながら皇帝陛下、流石にその発言は余計な反発を招くだけかと思われるのでお止めになられた方がよろしいかと。後、この際ですので申し上げておきますが、作法の練習が厳しすぎます。これでは嫌になるのも当たり前ではありませんか? 一月の間に休日を入れる位の事はしなければモチベーションの維持はおろか、体調の維持すら難しくなります!」

「……メイドごときが抜かしおる!」

 

 察してはいたが、やはり怒り始めた皇帝。周りの兵士に命じ、すぐさま切り捨てよと指示を出した。それを見たシェールが『レクノヤを殺すなら、僕も一緒に殺してよ!』と、大泣きしながらレクノヤの前に立ち塞がって守ろうとする等、この場は混沌と化していった。

 

「ちっ、剣を下ろせ!」

 

 流石に自分の息子までを斬らせる事はなかったようで、皇帝は兵士に剣を下ろすように命じた。その後もレクノヤと皇帝の言い争いにヴァーミラが加わり、それが長い間続いた結果最終的には皇帝が折れて、条件付きではあるもののシェールに休日が貰える事になったみたいだ。

 

「何か良い感じに解決したみたいだね、フランちゃん」

「うん。シェールも正式にお休みもらえたみたいだし、これでこっそり脱走したりしなくても良くなったよね」

 

 この場の空気と化していた私とミアはそんな会話を交わしながら、あの話を聞いていた。すると、皇帝が自らこちらへ近づいてきて私の前に来たので、一体何を言われるのかと思って身構えたけど……

 

「聞けばお前たち、1ヶ月しか居ないらしいではないか」

「まあ、依頼があるから……」

「では、その1ヶ月の間にある休日はシェールの事をよろしく頼む。これは皇帝である我の命である!」

「あ、はい」

 

 まさかの休日、シェールと一緒に遊んだりしてくれと言う"命令"であった。これであれば断る理由はないし、断った所で勝手にこっちに来そうだったので承諾した。

 

「吸血鬼のお姉ちゃん! ほら、早く行こうよ!」

 

 こうして元気を取り戻したシェールに連れられ、シェイニーグの町で遊び歩く事になった。

 

 




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