フランの異世界召喚記 作:松雨
フラン、盗賊団を撃破する
「そう言えばさ、目的地を教えて貰ってないような気がするんだけど」
「あ、確かに。聞けば良かったね、姉様」
「うん。まあでも、皆一緒だし迷う事は無いから別に良い――」
「エンディアですよ、フランさん」
レクノヤとシェールの2人の姿が見えなくなるまで手を振った後、地上に降りてからそんな会話を私たちはしていた。よく考えたら、この依頼をされてから目的地を向こうから聞かされていない上にそれを私たちは疑問にも思わなかったから、こっちから聞いたりもしなかった。
まあ、皆一緒だしどうせ私たちだけで行動出来ないから良いやと思っていると、前に居たマーカルが親切に町の名前を教えてくれた。彼によると、この商団の最終目的地はエンディアと言う名前らしい。
「あ、もしかして余計でしたか?」
「ううん、教えてくれてありがとう」
親切に教えてくれたマーカルにお礼を言いつつ、歩みを進める。巨大な荷馬車に荷物をこれでもかと言うほど詰め込んでいる為か、団体の移動速度が非常に遅い。車輪が何処かにはまって動けなくなったり、重量に耐えきれずに荷馬車が壊れるような事があればそれだけでかなりの時間を取られる事になるだろうけどまあ、有名所の商団らしいから対策取ってあるだろうし、大丈夫かな?
「あ、それとフランさん。道中、休憩兼商売で2~3日"ミロミス"って村に寄るらしいですよ。商団の人が言ってました」
「そうなの? ミア、もしそこにお師匠様が居れば挨拶出来るね!」
「うん。でもあれからかなり経ってるし、居ない可能性の方が高いよきっと」
そんな事を考えていると、マーカルがまた気を利かせて商団が次に寄る場所をミロミスの村だと教えてくれた。計らずも、妖精のお姫様"エリエス"との再会の約束を果たせる事になったのは運が良かったと思ったが、休憩中にも護衛する冒険者が必要らしいとの話を誰かから聞いたのを思い出した。それの抽選に当たってしまえば最悪、2~3日の大半を商団の荷馬車近辺で過ごす事となるだろう。
そうなれば、エリエスとの再会やミアの師匠を探す事はおろか、村でのんびり休憩を取る事すら難しくなってしまうだろう。せめてここだけでも出来れば抽選に当たらないでくれる事を願いたい。
ミアもそう思っているようで、時折祈るような仕草を見せる。
「どうか、ミロミスに居る時だけでもお願い……」
「最悪、ミアの護衛にヴァーミラをつけて商団の方は私1人だけでって言うのは……駄目か」
「多分駄目だと思うよ、姉様」
そう3人で話し合いをしているとマーカルが再び会話に参加してきて、私たちの希望を打ち砕く事実を突きつけてきた。
「僕もそう思います。何故なら抽選は全員参加のくじ引きで完全にランダム、その結果が全てです。しかし、この護衛依頼に参加している中でも上位に位置すると噂の貴女方"紅珀の月"と僕の所属する"魔法の王"、それに"疾風"の人たちはもしかすると固定参加枠に入れられるかもしれないらしいみたいですから」
固定参加枠、つまり有無を言わさず護衛にされてしまうかもしれないと言う事だ。ここへ来て、私の懸念が現実のものになろうとしている事に頭を抱えた。まあ、まだ今の時点では"かもしれない"と言うだけで"そうだと"決まった訳ではないから、何とも言えないけど。
「まさか、固定参加枠なんてものがあるなんて全く知らなかったよ。もしかして私たち、ギルドの人がそう言う話をしていたのを聞き逃したのかなぁ」
「かもしれないね、フランちゃん。今から固定参加枠に入らない事を祈るばかりだよ」
そんな話をミアとしていると、商団の伝令さんが前の方から駆け寄ってきて私を含む冒険者たちに声を掛け始めた。どうやら運悪く前方からとある盗賊団集団が接近してきているらしく、このままではかち合って戦闘になるかもしれないとの事。
しかも、こちら側の護衛冒険者たちは73人なのに対して相手方は見た感じ100人を軽く超えるらしい。軽い小競り合いレベルである。
「100人以上……こりゃまた面倒な。居場所が分かってるならここで待ち構えてる必要ってなくない?」
「姉様、確かにそうだね。その盗賊団の居る場所まで飛んでいって、先制弾幕攻撃で撃滅しよう」
ヴァーミラとの話し合いの結果、わざわざ味方の居るここで待ち構えて無駄に犠牲者を増やすよりは私たち2人で盗賊団の撃滅、最低でも大半を撃破して撤退させる方が良いと判断したが、不安要素は多少ある。なので、その伝令さんに100人を超えるらしい盗賊団について色々聞いた結果、このまま放っておけば不味いとの確証を得た。
「と言う訳で、今から2人で盗賊団とやらを撃滅しに行ってくるからミアの事をよろしくねマーカル」
「あ、はい。分かりました」
そうして私とヴァーミラは飛び上がり、伝令さんが指し示した方向に向かい、彼らの居る場所の上空に辿り着く。念の為に蝙蝠を複数飛ばして盗賊団の会話を盗み聞きした所、想像以上の下衆な発言のオンパレードに気分が悪くなった。ヴァーミラにも伝えた所、私と同じように気分が悪くなったようだった。
「……姉様、一応聞くけどどうする?」
「通常弾幕にしてあげようかと思ったけど止めた。下手すれば皆の命が危ないし、出来るだけ死なない程度にスペルカード使うよ……『禁弾 スターボウブレイク』!」
私の羽についている魔法石のような形をした、色とりどりの弾幕を空から雨あられのように降り注がせる。偵察蝙蝠を通して聞こえる声から、かなり混乱している事がよく分かる。当然、私に向けて反撃の弓矢や魔法等による攻撃が飛んで来るが、弾幕ごっこで慣れているので難なく回避する。
そうしている内に遥か上空の魔方陣から綺麗な氷の弾が、不規則な軌道を描きながら下に居る下衆い強盗団に着弾していく。ヴァーミラが『天氷 降りし氷星』を使ったようだった。障壁を張ったりしてこれを防ぐ魔導師が居たものの、かなりの被害を与える事に成功した。
しかし、ここでとうとう偵察蝙蝠の存在が敵の勘の良い者にバレてしまい、消滅させられてしまった。そこで私はヴァーミラを呼び寄せ、2人で一緒に近距離戦闘を仕掛ける事に決めた。1人でも良かったけど万が一の可能性も無いとは言えない状況、2人で行く方が安全である。
「私がこれで接近戦を仕掛けるから、ヴァーミラは中距離からミストルテインでサポートをお願い!」
「任せて、姉様」
そうして、私の位置から1番近い位置に居た相手に持っていた棒で襲い掛かる。受け止められるが、種族の特徴を生かしたゴリ押しで剣ごとへし折って殴り付ける。
隙を突いてきた強盗に対してはヴァーミラの輝く矢で射て止め、追撃で私が棒で薙ぎ払う。
「ちきしょう! 吸血鬼に襲われるとか冗談キツいわ!」
「ヤベェ、団長が蒼い矢にやられた! お前ら早く逃げろ、このままじゃ全員奴らの餌にされちまう!」
「でも商団を襲う計画――」
「吸血鬼に襲われた時点でもう破綻してんだよ! 良いから早く、反撃しつつ逃げるぞ!」
7割程無力化した時点で強盗団が撤退を始めた。しかし、また潜伏されて不意討ちされまくるのも面倒臭いので追撃は止めない。その後も弾幕や魔法、ヴァーミラは能力も駆使して強盗団を駆逐し続け、最終的にはほぼ全滅まで追い込む事に成功した。
「ふぅ~。大戦果かな?」
「そうだね姉様。じゃあ、早く戻ろう」
こうして、商団を襲って下衆な事をしようとしていた強盗団を撃破、商団の人たちを守る事が出来た。
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