フランの異世界召喚記 作:松雨
強盗団のほぼ全てを撃破して団長を捕まえた後、私たちはそれを伝える為に伝令さんを探していた。
「良い所で邪魔しやがって! お陰で計画が台無しになった上に貴様らの糧にするだと!? ふざけるな、この――」
「煩いなぁ。大人しくしてないと本当に食べるよ? 良いの?」
「……」
途中、捕まえた団長が余りにもやかましい叫び声を上げながら暴れだした。面倒なことこの上無いので、獲物を見るような目で見つつ、耳元で囁くようにしてちょっとだけ脅してあげると途端に大人しくなった。
「やっと黙ったね……さて、伝令さんは何処かな?」
「姉様、あそこに居るよ」
「本当だ。おーい! 強盗団撃滅してきて、団長の人間を捕まえてきたよー!」
空中から下を見ながら探す事数分、ようやく強盗団襲来の知らせをしに来てくれた伝令さんを発見したので、声を出して呼びかけてから眼前に降り立ち、捕まえた団長らしき人を投げる。
「早っ! しかも投げ方雑……あ、ご苦労様でした。とんでもない戦闘でしたね。ここからでも結構良い感じに見えてました」
「そう? まあ確かに、良い感じに見えるね。それで、私たち2人が撃破した強盗団はどうするの? 放置?」
「えっと……どうしましょうかね。ちょっと待ってて下さい、ギルド関係者に問い合わせてきます」
伝令さんが、そう言う類いの問題解決の為に派遣されてきたらしいギルド本部の関係者が乗る荷馬車に向かい、私とヴァーミラが撃破して現場に放置したままの強盗団をどうするかを聞きに行った。そうして5分程経つと、伝令さんが戻ってきた。
「えっとですね、皇国とギルド本部の方針でそう言う襲いかかって来た強盗団等は返り討ちにした後、"このまま放置で構わないし、対処してもどちらでも構わない"だそうです」
「へぇ~。何でかな?」
彼曰くギルド本部と皇国の方針で、シェイニーグ~エリュカルの間では強盗団の状態に関わらず放置しても構わないとの事。自分でやっておいてなんだけど、あの人数を野晒しにしておくのもなんか違和感がある。一応麻痺魔法を掛けておいたけど、もし逃げ出したりしてまた他の一般人に襲いかかったり等すれば大変だ。こんな心配事を感じるなら、いっそのこと殲滅させておけば良かったかな?
まあそれは一旦頭の片隅に置いておき、どうしてそう言う方針を取っているのか気になった私は、更に伝令さんに聞いてみた。
「何でも、今回は運良く来なかったですが、ワイバーン等の魔物もそこそこ出現するらしいので、放置していてもその内綺麗さっぱり居なくなると言うからだとか。ちなみに、今回はミロミスのギルドと冒険者たちに高額報酬を支払って後始末をお願いするらしいです」
「成る程ね。それで、私が捕まえてきた団長は?」
「そのまま捕縛して引き渡すみたいですよ」
なるほど。要するに、ここには人を喰らう魔物がうようよとまではいかないけど出ることがあるから、強盗団は放置していても構わないらしい。色々心配要素はあるけど、まあ対策位はしてるでしょ。
そんな事を考えていると、どうやら今回は自然に居なくならせるのではなく、現場の判断でミロミスのギルドやそこに居た冒険者たちに後始末を報酬ありで依頼する方針を取るらしいと聞いた。放置していても構わない筈なのに、わざわざ処理しに行くと言う事はやはり方針に問題が……
まあ、まだそうと決まった訳じゃないし、仮にそうだったとしても一介の吸血鬼がどれだけ騒ごうが変わる事はないだろう。
そう考えつつ、私とヴァーミラが強盗団を撃破したエリアを通り抜け、ちょくちょくある魔物の襲撃をいなしてゆっくり進み、道中抽選会を行ったりしてミロミスに到着した頃にはもう既に日は沈んで夜になった。
「ふぅ~。やっと着いたね、姉様」
「うん。そう言えば、ミロミスに居る間の護衛の固定参加枠には私たちは選ばれなかったみたいだよ。それに、くじ引きによる抽選で私たちは滞在最終日だけって事になったらしいしまあ、上々じゃない?」
「確かに、そうだねフランちゃん!」
流石に都合良く村を満喫出来るとまではいかなかったけど、2日間自由に使える時間を得る事が出来たのは大きい。自身の運の良さに感謝しつつ、私たちは初めてここに来た時に泊まった民家に3日間泊めて貰えるか交渉しに向かった。もう寝ている時間であれば諦めたけど、"魔導ランプ"と言う道具の明かりが外に漏れているから、まだ寝てはいないようだ。
「こんばんは~。カレット、また来たよ……あ、エリエスも居るじゃん!」
「おお、フランドール達か。久しぶりだな、元気にしていたか?」
「うん。エリエスも久しぶり~」
「おー! あの時の約束、守ってくれたんだね! フラン達、元気にしてるみたいで安心したぞー。それで、今日はどうしてここに寄ったの? ただ会いに来ただけじゃなさそうだけど」
「そうなんだよね。実は……」
家の中に入って歓迎された後にここに来た理由を話し、泊めて貰えるかどうか聞いた。すると、そんな事なら構わないと言ってくれたので言葉に甘え、ありがたく滞在期間中は泊めて貰う事になった。
「それにしても、冒険者資格剥奪とか討伐対象とかの厳しい罰にならなくて本当に良かった。フランドールのやった事だけ見れば不味いが、経緯まで見て仕方ないと判断が下ったのだろう」
「うん。カレットのほぼ言う通りの事をギルド本部での会議で言われたの」
「なるほど。まあ、何はともあれ護衛依頼への強制参加程度で済んで良かったと私は思う。さあ、この話題は終わりにして夕飯食べるぞ~。作りすぎたから是非フランドール達も食べてってくれ」
カレットの一声で、大量に作りすぎたらしい夕食を楽しく話しながら5人で食べる。ついでにここに来るまでの起こった出来事を話したら、案の定おじさんは食い入るようにして私の話を聞いていた。相変わらず、冒険者の冒険話が好きな人だなぁ。
そうして会話が弾んでいた時に外が暗いにも関わらず、エリエスが外で遊ぼうとせがんできた。私的には夜でも全く問題はないけど、彼女的にはどうなんだろうかと気になったので聞いてみたら、全く問題ないと言い切った。ここの妖精は夜目が効く特性でもあるんだろう。
それからエリエスと共に月の輝く夜空を飛び回ったり等をしながら遊び、彼女が満足するまで付き合った後は全員で何故か用意されてた紅茶を飲みながらのんびり過ごし、眠りについた。
そして次の日の朝、いつも通り起きた私たちはミアのお師匠様のヒリマを探すべく、村の中にある彼女の家へと向かった。カートラによるとここ最近はミロミスに居る事が多く、今日から1週間は確実に家に居るらしい。
「フランちゃん! 本当にわたし、運が良いよね!」
「うん。エリエスとも再会出来たし、3日の滞在期間の内2日を自由に使える事になったし、確かにそうだね」
ミアは運良くヒリマに会えると分かってからずっとテンションが高く、歩く私とヴァーミラは早く早くとずっと急かされている。
「ヴァーミラちゃん、フランちゃん! 早く行こうよ!」
「分かったから落ち着いて、ミア」
こうして、興奮しているミアを落ち着かせつつヒリマに会いに、私たちは向かった。
ここまで読んで頂き感謝です! お気に入り登録や星評価、感想を下さった方にも感謝です! 励みになります!