フランの異世界召喚記 作:松雨
※酷い人物の名前違いを発見した為、修正しました
「あ……レオネぇ……レオネぇぇぇーー!!」
「待ってヴァーミラ! 危ないって!」
私と出会う前何年も一緒に居て、カーテンド王国で別れてからも度々彼の事を口に出しては涙を浮かべる程慕っていたヴァーミラが、本人を目の前にすればどうなるか。答えは簡単、抑えていた感情を爆発させてレイゼに飛び付くと言う物だ。
案の定私が止めるよりも早く、今までで1番強烈な冷気を無自覚で放ちながらレオネの元へとヴァーミラは駆け寄る。それを見ていた周りの人たちは、走る氷塊と化した彼女に驚きつつも避けた為、怪我人は居ないようだった。
急いでやらかす前に止めなければ不味いと思ったので、ミアを抱えて飛んで追いかけた。しかし、追い付いた頃にはヴァーミラはレオネに思い切り抱きつき、泣きながら再会を喜んでいた所であった。
「ヴァーミラ!? ちょっ……宝石がめり込んでる!! 痛いし、それに冷たいから離れて!」
「うぅ……ごめんね。でも私レオネに会えたの、嬉しかったんだよ?」
「ああ、それはお前を見れば良く分かる。と言うか、俺も凄い嬉しいぞ」
「本当?」
「当たり前じゃないか。自分の"娘"との再会を喜ばない奴がどこに居るってんだ?」
「えへへ……良かったぁ!」
ヴァーミラの冷気撒き散らしによる周りへの被害も運良く皆無、強いて被害を言うならレオネが多少の怪我を負ったのと、彼女に驚いてアイスのようなお菓子を子供が落としてしまった位か。取り敢えずその子供に対して私が代わりに謝って、手持ちに金貨数枚しかなかった為金貨1枚を渡した後、2人の元に向かう。
「あ、フランさんにミアさん! お久しぶりですね」
「うん。久しぶり、レイゼ」
「久しぶりです、レイゼさん。ここに居たんですね」
「ええまあ、あれから色々ありましてね……流れで自作の宝飾品を売っていたのですよ。本当は服を作る方が良かったんですけど、運悪くあの時に大半の材料を置いてきてしまいましてね」
なるほどね。と言うか、良く考えたらヴァーミラに結構力を入れられて抱きつかれたのにちょっとした怪我で済む凄い防御力にビックリした。不思議に思って聞いてみたら、ここ最近覚えたての防御魔法を必死に展開したかららしい。
お陰で何個もの宝石がめり込む程度の怪我で済んだとホッとしていたレオネだけど、それって私たちならともかく、普通の人間のレオネにとって"程度"と呼べるのだろうか?
「まあ、それはともかくミア、レオネの治療お願いね」
「分かったよフランちゃん。レオネさん、痛いけど我慢してね」
そう言うとミアはめり込んだ宝石を力ずくで抜き、回復魔法を掛けると言う作業を繰り返して完全に治療を終わらせた。血などで汚れた手は浄化魔法で綺麗にし、汚れた宝石はレオネの意向で廃棄処分する事になった。
「ふぅ……助かりましたよ、ありがとうございます。それで、どうしてこの町に?」
「えっとね……」
そして、レオネにもミロミスの時にエリエスとカレットに説明したのと同じ説明をした。
「なるほど……色々あったんですね。俺、冒険者ギルドには立ち寄らないので殆んど知りませんでした」
「まあ、別に誰かに知られたいからやった訳じゃないし、気にしないで。それより、ヴァーミラが言いたい事あるみたいだから聞いてあげて」
「あ、はい……どうした? 怒らないから言っても良いぞ。聞けるかどうかは別だがな」
すると、ヴァーミラは冷気を無自覚で放ちながらレイゼに向かって、何故か恥ずかしがりながらこう言った。
「もう一生離れたくないから、
「それってつまり、俺がフランさん達のパーティーにって事だよな?」
「戦闘出来なくても良いから、私が命をかけて守りきるから……お願い……一緒に来てよ父様ぁ」
最後の方は泣きながら一緒に居て欲しいと、守る為なら命すら惜しまないと必死に頼み込むヴァーミラ。呼び方まで父様と変わっていた。それを見たレオネは、少し考えた後に私の方を見てきたので、一緒に同行しても良いか聞きたいと判断し、大丈夫と一言だけレオネに送った。
「分かったよ……他ならぬ娘の頼みだ。フランさんにも許可を貰ったし、俺も一緒に行く事に決めたぞ」
それを聞いた瞬間、冷気を放出しながら満面の笑みを浮かべ、上空を飛び回ると言う行動に出始めた。更に興奮したのか、放出される冷気がどんどん強くなっていって最終的には、彼女を中心に100m範囲で魔方陣が展開されてその空域の気温が急激に下がり、雪が降り、氷の鳥が優雅に空を舞った。彼女なりの最高級の喜びの表現方法なのだろうか。
当然、周りの人々は急な気温低下に衝撃を隠せない。このままでは物凄く目立つ上に実害まで出始めるのは確実だったので、レイゼが必死に止めるように説得し始めた。それを聞いたヴァーミラは速攻で魔方陣を解き、下に降りてきた。
「えっと……皆様、ご迷惑をかけて大変申し訳ありませんでした!」
「迷惑かけてたの? ごめんなさい……」
レオネの一声で興奮が完全に収まったヴァーミラは、彼と共に周りの人々に冷気で迷惑をかけた事を謝った。幸いにも、怒鳴ってくるレベルで怒っている人は居なかったようで、次は気をつけてと一言言われる程度で済んだ。
「ねえ父様、何だか疲れちゃった……」
「なら背負うか?」
「うん……」
レオネがヴァーミラを背負い、この状況では町歩きは厳しそうだと判断した私とミアは、彼と共に宿へと向かう事にした。
そうして背負われて歩いている内に、幸せを体現したかのような顔をしながら夢の世界へと入っていったヴァーミラ。その様子を見ていると、本当に父娘であると言われても遜色がない。
「どんな夢を見てるのかな~」
「分からないけど、とにかく物凄く嬉しいって事だけは伝わるよねフランちゃん」
「うん、確かに。それに、レオネも心なしか嬉しそうだし」
「そりゃあもう、俺も嬉しいですよ。ヴァーミラが"父様"なんて呼んでくれたの、今日が初めてですから」
そう会話を3人で交わして時折休憩を挟みつつ宿を探す事30分、ようやく宿を見つける事が出来たので入り、金貨で支払って泊まれる事になった。
案内された部屋でヴァーミラが目覚めるまで、魔導書を読んだり軽いお菓子を買いに外へ出たり等をして時間を潰していた。そうして待ち、彼女が目を覚ましたのは日がもうほぼ真上に来ていた時であった。
「んぁぁ……おはようフラン姉様、レオネ父様、ミア。ありがとう……私は今、すごく幸せだよ。だって、"本当の家族"になれた気がするから」
「そっか。ヴァーミラにとって私たちは家族って思ってくれてるんだね」
「わたしも入れてくれたの?」
「当たり前でしょ。ミアだけ仲間外れとかあり得ないし」
目を覚ましたヴァーミラは開口一番、ここに居る皆に対して感謝の言葉を述べた。余程レイゼが加わった事が嬉しかったのだろう、夢の中でも皆でワイワイ騒いで楽しんでいたらしい。
「さて、ヴァーミラも起きた事だし……皆でのんびり町の散策旅に行こうか。他にやる事も無いしな」
すると、レオネが皆で一緒に町の散策をしようと提案してきた。私たちとしてはそれで一向に構わないし何より、ヴァーミラが物凄く行きたがっている。なので、今から町の散策に皆で向かう事にした。
そうして宿を出た後道なりに進み、とあるアクセサリー店の前を通った時、凄く聞き覚えのある声の主が誰かと言い争っているのを聞いた。それと同時に私は考えるよりも先に身体が動き、店の中に入る。案の定、そこに居たのは咲夜であった。どう見ても間違いなく、何回見ようとその事実は変わる事がなかった。
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