フランの異世界召喚記   作:松雨

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最終話の為、いつもよりも文字数がかなり多くなっています。それと、数日単位で時間が飛ぶ部分があります。


フラン、幻想郷へ皆と共に帰る

「ですから、貴方の家のメイドにはならないと何度も……いい加減何処かに行ってくれません? お嬢様を待たせる訳にはいかないので」

「何故断る? 金はあるし、美味いものだって……お前の言うお嬢様がどんな奴かは知らんが、これでも破格の条件を()()()()()()()と言うんだぞ? もしかして、オレの容姿が穢らわしいとか言うんじゃないだろうなぁ?」

「そう言う問題では……」

 

 どうやら、あのやたらキラキラした格好の裕福そうな男の人にメイドになれとしつこく勧誘されているみたいだ。後ろには見た目だけは強そうな人が居るけどまあ、咲夜なら問題ないかな。

 

 そうして見ていると、どんどん怒りのボルテージが上がっていっている男の人が冒険者らしき人に指示を出し、咲夜に賭け事をしようと提案してきた。向こうが勝てば問答無用でメイドに、向こうが負ければ諦めると言った感じだ。

 

「はぁ……お嬢様からは面倒事は起こすなと言われているのですが、仕方ありません。一瞬で終わらせてあげましょう」

「ふっ! こいつは腕利きの用――」

 

 その瞬間、咲夜が消えたかと思えば冒険者らしき人の背後に回り込み、足払いをかけて仰向けに転ばせてから馬乗りになり、首筋にナイフを当てた。やられた方は何が起こったのか分からないような顔をしながら呆然としていた。

 

「と言う訳でこの勝負、私の勝ちですね。まあ、負けてもなるつもりはありませんでしたけど……これで諦めてくれますよね?」

 

 咲夜がそう意味深な笑みを浮かべながら言うと、男の人は情けない声をあげながら逃げていった。と言うか、咲夜ならあの程度の相手であれば能力使わなくても、ナイフを使った体術だけでも苦労せずに勝てたと思うけど……お姉様からの指示が影響してるのかな?

 

 そんな事を考えていると、男の人に突き飛ばされて起き上がろうとした咲夜と私の目が合った。まるで時が止まったかのように一瞬固まり……

 

「い、妹様!? ご無事で何よりです!」

「久しぶり、咲夜! えへへ……」

「あ、ちょっと待ってて下さい。今、美鈴も呼んできますね」

 

 どうやら、一緒に美鈴も来ているみたいだ。お姉様は来てなかったみたいだけど、咲夜と美鈴がこの町に来てるから近い内に会えるかな。

 

 ヴァーミラもレイゼと再会した時周りを巻き込む勢いで凄く喜んでいたけど、良く考えたら私もお姉様と会ったらそうなるかもしれない。何故なら、まだ咲夜だけしか見ていないのに泣きそうだったからだ。

 

 そんな考え事をしていると、咲夜が美鈴を連れて私の所にやって来た。

 

「妹様……元気そうで何よりです。えっと、後ろの方々は一体?」

「美鈴、久しぶり! えっとね……」

 

 思わず泣きそうになるのを堪えながら、美鈴と咲夜にヴァーミラたちの事を全て事細かに説明して、ついでに今までの冒険の話もして、この世界でかなり楽しめた事を伝えた。

 

「成る程。妹様の"妹"と言うのはそう言う事でしたか」

「でも咲夜さん、この子から発せられる気がとても義理の妹とは思えないほど、お嬢様や妹様とそっくりなんですよ。これはもう、血の繋がった姉妹と言っても過言ではないかと」

「確かに。恐らくこれは儀式とやらの成せる技なのでしょうね、きっと」

 

 その後は当然の流れでパチュリーやお姉様、八雲紫の待つ宿へと皆で一緒に向かう事になった。今の内にお姉様に何か言う事でも考えておこうとしたけど、嬉しさが高まりすぎて何も思いつかなかった。

 

 そうこうしている内にお姉様たちが居ると言う宿に到着した。咲夜の案内で部屋まで行き、扉を開けると……

 

「あれ? パチュリー様、お嬢様はどこへ行かれたかご存知ですか?」

「ええ。レミィなら、気分転換に散歩してくるってさっき……フラン!?」

「やっぱり驚かれましたか」

「そりゃあね、目の前に探していた人物がいきなり現れたら誰だって驚くわよ」

 

 パチュリーしか居なかった。曰く、お姉様は気分転換の散歩に出掛けてしまったらしい。八雲紫はいつも通り、いつの間にかいなくなってたとの事。まあ、呼べばスキマからすぐに出てくるらしいから特に気にしなくても良さそうかな。

 

「これでレミィが戻ってきたらきっと、狂喜乱舞するでしょうね。それと……お帰りフラン。まあ、まだ紅魔館じゃなくて異世界だけどね」

「うん! ただいま、パチュリー!」

 

 その後はパチュリーにも私がこの世界で得た仲間や家族たちを紹介し、数ヶ月間の冒険の話をした。咲夜や美鈴は2度目だったけど、真剣に聞いてくれてて嬉しかった。

 

 話が終わった後は、私の持っているこの世界でもかなり珍しい魔導書にパチュリーが興味ありそうだったので渡して見てもらった。案の定、食い入るようにそれを見始め、自分の持っている魔導書と見比べてみたり、試しに生活系の魔法を唱えてみたり、色々やっていた。

 

「まさか、また異世界の魔導書をこの目で見る事になろうとは思いもしなかったわ。フランお願い、それをしばらく貸してもらえない? 代わりにこっちの魔導書を貸してあげるから」

「良いよ!」

 

 魔導書の貸し借りを行い、パチュリーが持っていたこことはまた別の異世界の魔導書を貸してもらった。

 早速開き、最初のページが自爆魔法の解説だったのには驚いたけど、他のページはいたって普通の魔導書と言う感じだった。

 私の持っていた魔導書に負けず劣らず、いくつか物騒な効果を持つ魔法も中にはあった。

 

 そんな感じの良い雰囲気で会話を楽しんでいると、宿の廊下から物凄い足音が聞こえてきて、扉が勢い良く開く。すると、そこに居たのは……泣いていたレミリアお姉様だった。

 

「フラン……! やっと……やっと会えた……!」

「ちょっ……お姉様!?」

 

 部屋に入って来るなり、飛び付く勢いで抱きついてきたお姉様。いきなりの行動に一瞬ビックリしたけど、抱きつかれた時に感じたその暖かさに今まで耐えてきた私の涙腺は崩壊した。泣く声は出なかったけど涙は止められず、お互いに落ち着くまで15分も掛かった。

 

「さて、フランも見つかった事だし早速幻想郷に帰る――」

「お姉様ごめん、実は……」

 

 幻想郷に帰る前にまだ護衛依頼が残っている事を伝え、それまで帰るのは待って貰う事お願いしてみた。これが駄目なら依頼途中で幻想郷へ戻る事も厭わないけど……

 

「成る程、冒険者ねぇ……よく考えてみれば、異世界を少しの間フランと一緒に冒険するのも悪くないわね。という訳で、その依頼とやらが終わるまで付き合うわ。貴女が引き連れている仲間達についても色々聞きたいし、皆もそれで良いわよね?」

「構いませんよ」

「それで構わないわ」

「お嬢様がそう言うのであれば、構いません」

 

 満場一致で依頼が終わるまで待ってくれる事になった。と言ってもここを出発するのは3日後である上、エンディアの町までの距離や盗賊等の襲撃頻度によっては幻想郷に帰るまでかなりの時間を要する事になるだろう。

 

「皆、ありがとう! と言っても、出発までまだ3日あるんだよね。何してようかな?」

「う~ん……町歩きとかどう? 1週間前にこの町に来てるから多少なら場所も知ってるし、それで良ければ付き合うわよ。と言うか、私がフランと一緒に歩きたいのだけど」

「もちろん、良いよ! お姉様と一緒のお出かけ、久しぶりだもの!」

 

 こうしてエンディアの町に出発するまでの3日間、お姉様たちと一緒にルコーの町を見て歩く事になった。

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

 ルコーの町に来てお姉様たちと再会してから3日後、商団が最後に寄る町"エンディア"へと向かい始めたので、私たちも一緒に向かっていた。

 

「しかし、良かったですよね。冒険者でも何でもない私たちを受け入れてくれて」

「と言うか、私はフランがこの世界でかなり有名になっていたのに驚いたわ。多分それで『フランドール・スカーレットの姉とその関係者一行』と言うのに影響力が現れて来たのだと思うわ。それか単純に戦力が増えるのはありがたいと、そう思っているだけなのかもしれないし」

 

 ご覧の通り、高ランクの魔物や強盗等の襲撃もなく順調に進んでいた。たまに低ランクの魔物が現れたかと思えばお姉様が容赦なく1秒足らずで消し飛ばしてしまう為、私たちどころか他の冒険者たちの出番すらない。

 

「あの青みがかった銀髪の子がフランドールの姉らしい。妹の方も大概だが、姉の方もヤバイな」

「ああ、確かにあの紅い槍はヤバい。オークが1秒で消し飛ぶ所なんて初めて見たぞ俺は」

「それに他の人も見た感じですけど、Bランク冒険者レベルの実力を持っていそうですよ……」

 

 あまりにもお姉様が本気を出すから、商団内で早くも噂になってきていた。軽く捻り潰すだけでも討ち取れるのに、なんでわざわざ全力グングニルを振るうのか聞いてみたら、久しぶりの私との話を妨害してきて非常に腹が立ったかららしい。なるほど。

 

 そうして、邪魔な魔物を全部消して機嫌の良くなったお姉様との会話を再開してから7時間程経った頃、目の前にそれらしき町の姿が見えてきた。エンディアに着いたらとうとうこの世界での冒険も終わりかと思うと、何だか妙な気分だ。もちろん、幻想郷に帰れるのは凄く嬉しいんだけど。

 

 町の入り口に居る兵士さんにギルドカードを見せ、持っていない咲夜たちは通行料を払って町に入った。ここで商団の護衛依頼が完全に終了した為、証拠となる"達成紙"を団長から貰い、エンディアのギルドの場所を教えてもらってから向かった。

 

「あの、これをお願い」

「……達成紙ですね、承りました。これが、今回渡す報酬です。聞いているとは思いますが、本来より少なくなっています」

「うん。あ、それともう1つ……」

 

 幻想郷へ帰る上でやらなければいけない事、それは……冒険者を辞めると言う事だ。別にそのまま無視して帰り、失効するのを待っていれば簡単だけど、それだと何か私にとって引っかかるような気がしてならない。だから、今ここで冒険者を辞めてきっぱり断ち切ってから帰った方が、心残りもなく帰れると言う物だ。

 

 それを受付の人に伝えると、少し驚いたような顔をしたもののすぐに手続きを済ませてくれた。こうして、私たち3人は冒険者ではなくなった。

 

「お姉様、全部終わったよ」

「分かったわ……紫! 出てきて良いわよ!」

「……もう済んだ? じゃあ帰るわ――」

「それと1つ聞きたいのだけど、フランが連れてきた3人を幻想郷に連れてってくれないかしら?」

 

 お姉様がスキマから顔を覗かせた紫にそう質問すると、ヴァーミラたちの方をじっと見つめ始めた。

 

「ええ、良いわ。幻想郷を滅ぼす様な輩ではなさそうだし」

「そう。良かったわね、フラン」

「うん! ありがとう、紫!」

「どういたしまして。さあ、帰るわよ」

 

 紫の一声で、私たちは目の前に開けられたスキマを通り抜け……紅魔館の庭に降り立った。

 

「ここが幻想郷……そしてここが、フランちゃんの暮らしてる館なの……? 大きい!」

「でしょ? 今日はもう遅いからゆっくり休んで、明日から館の中と幻想郷を案内するね!」

「お楽しみの所悪いけどフラン、その前に紅魔館で貴女の無事に帰ってこれた記念の即席パーティーを開くから、明日はここに居て欲しいの。ミラにミア、レイゼを実力者の面々に紹介するのも兼ねてるからね」

「あ、そうなの? 分かった。じゃあ私も準備手伝わないとね」

「ええ。これから忙しくなるわよ!」

 

 こうして、私の数ヶ月に渡る異世界冒険は終わりを告げた。

 




今回で最終回となります。ここまで読んでくれた方、お気に入り登録や星評価、感想を下さった方に感謝です! お陰様で完結まで書ききる事が出来ました!
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