フランの異世界召喚記   作:松雨

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フラン、パーティーを組む

「えっと……あった。これか、スライムの魔結晶。綺麗だな~」

 

 畑を荒らしていたスライムを依頼通りの数討伐した後、証拠となる物を探していた。

 

 討伐依頼を受け、村に出発しようとして呼び止められた時に討伐達成の証拠品についての説明を私は急ピッチで受けていた。

 スライムやレイス等の自分の形を殆んど持たない不定形の魔物は、核を破壊して討伐すると消滅してしまうらしい。

 

 じゃあどうやって討伐したと証明するのかと聞いたら、不定形の魔物が、死の際に固有の残存魔力が結晶化した『魔結晶』と呼ばれるものを落とすからそれをギルドに提出する事によって証明すると。1体につき1つ必ず落とし、それ以上の数を落としたり、逆に落とさないと言う事は絶対にないとのこと。スライムの場合は薄い水色らしい。

 

「よし、これで7個……」

「あの……ありがとうございました!」

「いえいえ、これが私の仕事です。それに、こういう感じで冒険するの好きなので大丈夫です!」

「それと、これも持っていってください」

「良いんですか? ありがとうございます!」

 

 こうして、目的のスライム7体討伐の証拠である魔結晶を回収し、畑の野菜を1つおまけでもらった私は、お昼を村にある食堂で食べて、少し休んだ後来た道を歩いて戻る。

 

「野菜をもらったは良いものの、これどうやって食べたら良いんだろう? ギルドに戻ったらスーファに聞いてみようかな」

 

 そんな事を考えつつのんびり歩いていると、向かいから歩いてきた冒険者らしき人が突然、私に向かってこう叫んできた。

 

「危ない、コクカクロウだ! 避けろぉーー!!」

 

 後ろを振り向くと、カラスを巨大化させたような私より少し大きな『コクカクロウ』と言うらしい鳥が襲いかかって来るのが見えた、そのせいで反射的にスペルカードを宣言した。

 

「『禁忌 レーヴァテイン』!!」

 

 不意討ちであったので、炎を纏う剣を一切の手加減なしで振り下ろしてしまった。その為、コクカクロウは真っ二つになった上に燃え上がり、更に剣の勢いが余って地面を粉砕してしまった。

 ハッとして砕けた地面を見てみると、そこにはコクカクロウの存在はなく、1枚の羽が偶然残っているだけであった。

 

「……」

 

 どう考えても地面に小さいクレーターのようなものを作る程の攻撃をするのは、不意討ちされたからとは言えやり過ぎた。相手が人でなくて良かった。仮にこれを町中でやらかそうものなら大変恐ろしい事になっていただろう。

 

 それに、今の光景を見た私の前に居た冒険者の人たちがなにやら話し込んでいるのが見える。なんか面倒な事になりそうだったので1枚の黒い羽を拾い、逃げるようにしてこの場から立ち去った。

 

 早く戻りたい一心で草原を駆け抜け、王都まで戻ってきた私はギルドに駆け込む。

 

「お、フラン。スライムは倒したのか?」

「そうだよ! 余裕だったし」

「まあ、そうだろうなぁ。分かりきっていたが……ん? その黒い羽は、コクカクロウのだよな……」

「うん。スライム倒し終わって帰ってくる時に後ろから襲いかかって来たから討伐したんだけど、やり過ぎてこれしか残らなかったの」

「……消し飛ばしたのか。一応コイツCランクの魔物なんだけどな」

 

 中に居たレイゼとそんな会話をした後、ギルドの受付にスライムの魔結晶を提出する。

 そうして依頼を達成し、銀貨9枚の報酬をもらう事が出来た。

 

「依頼も終わったし、夕飯食べに行こうかな~。ワイバーンレストラン以外のところに行きたいけど……」

 

 そうは言っても、ワイバーンレストラン位しか知らない。他のところで食べたければ探すしかないのだが、お腹が空いているので出来れば早く食べたいし、王都中の飲食店を探し回っていれば夜になってしまうだろう。そうなれば店がしまってしまうだろう。

 と言う事でワイバーンレストランに夕飯を食べに行く事を決めた。

 その時ふと、思い付きでレイゼとスーファも誘ってみようと思って誘ってみた所、2人もちょうどそこに食べに行こうとしていたらしく、快く了承してくれたので一緒に行く事になった。

 何気ない世間話でもしながら店に入り、ワイバーンのステーキを頼んで待つ。

 

「それにしても、フランもここに行こうとしていたんだな。まあ確かに、ここの店主の肉料理は上手いから行きたくなるのも分かる気がするぞ」

「王都の中にある肉を使った料理店の中でもダントツで美味しい。若干待ち時間が長い気がするけど、そんなの気にならないくらい満足出来る」

「そうそう。ワイバーンを使った肉料理がメインだけど、他のメニューも負けないくらいあるってのが凄くない?」

 

 みんなで話をしながら待っていると、頼んだ料理が届いたので食べ始めた。

 考えたら今日2度目のステーキだったが、美味しいから良いや。流石に毎日は飽きるから食べないけど。

 

 運ばれてきた物を食べ終わり、会計を済ませた私たちはギルドに戻った。

 もうすっかり日も落ちて夜になったので、ギルドの受付に銀貨1枚を支払い、2階の宿泊施設に泊まる。今度は日光に焼かれないように窓をしっかり閉めて眠りについた。

 

 そうして次の日の朝、日光に焼かれた痛みではなく普通に目を覚ました。

 今日は息抜きに採取依頼でも受けようかとも思ったので、1階に降りてクエストボードに向かい、探していると……

 

「フランちゃん、おはよう。ちょっといい?」

「スーファ、おはよう。何か用事?」

「うん。と言っても、用事があるのは私じゃないけど」

「そうなんだ。いったい誰が?」

 

 話を聞いてみると、14歳のミアと名乗る女の子が私に用事があると、寝ている時にギルドに来たとのこと。何の用事があるのかと聞いてみても『フランちゃんが来てから話します!』との一点張りだそうだ。

 一体なぜミアと名乗る女の子は私を指名したのだろうか。用事とは一体何なのか。色々気になることはあるが、とりあえず会議室で待っていてもらっているらしいので行ってみる。

 

 スーファに案内され、会議室に入る。するとそこに居たのは、銀髪蒼瞳で雪のような白い肌の女の子だった。

 

「あ、フランちゃん?」

「そうだよ。私に用事があるって聞いたから来たけど、どんな用事なの?」

「えっとね……どうかわたしと一緒に冒険をして下さいませんか?」

 

 聞けば彼女、冒険者登録をして冒険者になってEランクになったのは良いものの、回復魔法と極低威力の攻撃魔法しか使えないらしくまともに魔物と戦えないらしい。なので他の人と冒険しようと声をかけたものの、全部断られてしまったと。

 それでもう諦めようかと思った時に私が初心者に突っかかる奴に絡まれても余裕で排除していたのを見て、この人となら何故か上手く行きそうな気がすると思い、チャンスを伺って訪ねたと言うらしい。

 

(一緒に冒険か……悪くないかも)

 

 そう思ったけど仲間になる以上、私が人ではなく吸血鬼であると言っておかなければならないだろう。ミアがそれでも良ければ良いけど。

 なのでミアに聞いてみる。

 

「良いよ。でも私、人間じゃなくて吸血鬼なんだ。それでも良ければ一緒に行こう」

「……わたしはそんなの気にしないよ。フランちゃんと言う存在と冒険がしたいから。種族なんてどうでもいい」

 

 どうやら私が吸血鬼であると言う事はミアにとって問題ですらないらしい。なら断る理由などないので了承する。

 

「分かった。これからよろしくねミア!」

「うん! フランちゃんの足手まといにならないようにわたし頑張るからね!」

 

 こうして私は、ミアと言う仲間と共に冒険をする事になった。

 

 

 

 

 

 

 




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