デート・ア・ライブ 士織リリィデイズ   作:ラリストテレス

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初めまして、百合あんです。
いやー最近デアラにはまっちゃいましてですね・・・・・・。気づいたら書いてました。
ワタクシ、士織ちゃんの大ファンなので、これを気に士織ちゃん小説が増えてくれれば嬉しいです(^-^)

あと百合も

 
では、本編をどうぞ


十香デッドエンド
始まりと邂逅


 ──息を呑む。

 

 あまりにも非現実的な光景に、足がすくむ。

 

 刃で切り裂かれたかのように削り取れた街並み。

 

 隕石の落下を彷彿とさせる、巨大なクレーター。

 

 空を舞う人々。

 

 その全てが非現実的で、現実感のない馬鹿げた光景。

 

 だがそんな光景も、五河士織(・・・・)には見えていなかった。

 

 ──そんなものよりもはるかに異質なものが、目の前にあったからだ。

 

 

 それは、少女だった。

 金属のような、布のような、不思議な素材でできた奇妙なドレスを纏った、美しい少女が一人、たっていた。

 

 

 

「・・・・・・きれい」

 

 思わず口から嘆息にも似た呟きが漏れる。

 士織の目は既に、目の前の少女に釘付けであった。

 たった一瞬、その姿が瞳に写っただけで、

 

視線を

 注意を

 意識を

 全てを

 

 奪われてしまった。

 それほどまでにあまりにも、暴力的なほど、美しかったのだ。

 

 

「──あなた、は、一体・・・・・・」

 

 士織は自然と言葉を発していた。

 少女はゆっくりと、目線をこちらに向けてくる。

 

「・・・・・・名、か」

 

 聞きたかった、聞かずにはいられなかった。

 

「──そんなもの」

 

 なぜなら、目の前の少女は

 

「ない」

 

 あのときの私(・・・・・・)と同じ目をしていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「フン、フフン、フフーン♪」

 キッチンから、少女の上機嫌な鼻歌が響く。

 4月10日、月曜日。

 春とはいえ、朝晩の肌寒さが残る季節である今日この頃。五河士織は軽快なリズムと伴に、朝食の準備をしていた。

 と。

 

 タタタタタタタタタタッ! 

 

「うん?」

 

 ふと、2階から誰かが駆け降りてゆく音が聞こえる。

 まぁこの家にいるのは士織を含め2人しかいないので、容易に想像がつくだろう。

 

「とうっ!」

 

 と、鈴のような可憐な声とともに扉が開く。

 シュタ! という擬音語が聞こえてくるかのような見事な着地を決め妹──五河琴里が、中学の制服を(ひるがえ)しながらこちらに顔を向ける。

 

「おはよー! おねーちゃん♪」

 

「おはよー琴里。朝から元気いいね」

 

 朝にも関わらず、快活な様子で朝の挨拶を交わす琴里に、士織は僅かに体を向けて返す。

 

「うん! でも、おねーちゃんがいつも通りに起きてくれてたら、イタズラできたのにな~」

 

 そう言って手をワキワキとさせる琴里。

 ろくなイタズラでないことは確かなようで、士織はもしも起きていなかったらと考え、ゾッとする。

 昨日から父と母は仕事の関係で出張に行ってしまっているため、しばらくは士織が台所に立つことになっていた。

 そのため、いつも寝起きの悪い士織は琴里に目覚ましを依頼していたのだが、運よく起きられたようだ。

 

「アハハハ・・・・・・もうすぐ朝ごはんできるからそれまでちょっと待っててね」

 

「了解であります!」

 

 琴里の目覚ましを想像し、若干苦笑を浮かべる士織だったが、当の妹は気にした様子もなくビシッ! と敬礼すると、リビングへと駆けていった。

 士織が再び調理に取りかかると、暫くして背後からテレビの音声が聞こえてくる。

 そういえば、琴里は星座占いや血液型占いをハシゴするのが日課だったっけ、と士織は思い出す。とはいえ、占いコーナーは番組の最後と相場で決まっている。

 今頃はつまらなそうに、画面のニュースを眺めていることだろう。

 と。

 

『──今日未明、天宮(てんぐう)市近郊の──』

 

「ん?」

 

 いつもは聞き流しているはずのニュースの内容に、耳を傾ける。

 理由は簡単。画面のアナウンサーから、聞き慣れた街の名前が発せられたからだ。

 

「どうしたんだろ・・・・・・って、そういうことね」

 

 思わずカウンターから身を乗り出すように、テレビへと視線を移す。

 そこには、建物や道路が滅茶苦茶に破壊された街並みの他、スプーンで抉られたかのような巨大なクレーターが映し出されていた。

 士織はそれらを見た瞬間に得心した。

 

「空間震、か」

 

 空間震

 空間の地震(・・・・・・)と称される、広域震動現象。

 発生原因、発生時期ともに不明、被害規模不確定の爆発や震動、消失といった現象の総称である。この現象が初めて観測されたのは、今からおよそ30年前。

 今ではユーラシア大空災と呼ばれるそれは、ユーラシア大陸のど真ん中である、当時のソ連、中国、モンゴルを含む一帯を、一夜にして消し去ったのだ。死傷者はおよそ1億5000万人にも及んだという、未曾有の大災害である。

 そしてその後の約半年間、世界各地では小規模ながらも似たような現象が発生した。

 士織の覚えている限りでも、50は下らない。

 もちろん、日本も例外ではなかった。

 ユーラシア大空災の6ヶ月後には、東京都南部から神奈川県北部一帯が円状に焦土と化した、南関東大空災が起きたのである。

 ──ちょうど今、士織たちが住んでる地域だ。

 

「最近また増えてきたね。何でまた増えはじめたのかな?」

 

「どうしてだろうねー」

 

 士織が言うと、琴里がテレビを向いたまま首を傾げる。

 30年前に空間震が起きて以降、空間震は観測されなかった。

 しかし5年程前、天宮市付近で観測されたのを皮切りに、その現象が再び発生し出したのだ。

 その多くが、日本で。

 

「なんかここら辺て妙に多いよね? 特に去年くらいから」

 

 士織は止めていた調理を再開しながら言う。

 

「・・・・・・んー、そーだねー。ちょっと予定より早いかなー」

 

「早い? 何が?」

 

「んー、あんでもあーい」

 

 士織はふと手を止める。長年培ってきた姉としての勘が、琴里のくぐもった声を聞き逃さなかった。

 

「・・・・・・」

 

 無言でカウンターを迂回し、琴里の側へ笑顔を携えながら歩いていく。

 琴里もそれに気づいたのか、徐々に顔を背ける。

 

「ことり~、ちょっとこっち向いてごらん」

 

「・・・・・・」

 

「えい」

 

「ぐぎゅっ」

 

 琴里の頭を無理やり転換させる。喉から変な音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。

 士織は琴里の口元に予想通りの物を見つけると、小さく嘆息した。琴里の口元には、大好物のチュッパチャプスがくわえられていたのだ。

 

「こら! ご飯の前にお菓子食べちゃダメって、いつも言ってるでしょ!」

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

 琴里はシュンとソファの上に正座する。

 対する士織も、飴を取り上げようとはせず琴里の前で仁王立ちを続けていた。妹が一度飴を食べ始めたら、テコでも離さないことを知ってるためだろう。だからこうして、琴里が自分から差し出すのを待っているのだが、一向にその気配がない。

 

「・・・・・・はぁ、まったく。朝ごはんもちゃんと食べること、いい?」

 

 結局は士織の方が折れた。何だかんだで、妹には甘い姉なのである。

 

「おー! 愛してるぞおねーちゃん!」

 

 そう言って、琴里は姉に抱きついた。

 

「もう・・・・・・私も愛してるよ、琴里」

 

「・・・・・・っ!」

 

 士織はそう言うと、琴里の頬に優しく口づけをした。

 途端琴里は耳まで真っ赤にすると、俯きながら押し黙ってしまった。ちょっとした妹への意趣返しのつもりだったのだが、思いの外効果がありすぎたようだ。

 

「(ふふ・・・・・・琴里ってばかわいい)ほら、いつまでも恥ずかしがってないで、食器運ぶの手伝って。もうすぐ朝ごはん出きるから」

 

「う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 朝食もつつがなく終わり、士織と琴里は台所で皿洗いをしていた。

 

「そういえば、今日は中学校も始業式だよね?」

 

「うん、そうだよー」

 

「じゃあ昼時には帰って来れるってことか・・・・・・琴里、お昼に何かリクエストはある?」

 

 琴里は一旦手を止め「んー」と思案すると、シャキッ、と姿勢を正した。

 

「デラックスキッズプレート!」

 

 我が妹は、ファミレスのお子様ランチをご所望のようだ。士織は苦笑を浮かべつつ、顎に手を当てて熟考する。

 そして、

 

「さすがに、ファミレスの料理は無理かなー」

 

「えぇ~」

 

 あっさりと白旗を挙げた。

 妹が不満そうな声をあげるが、士織とて未来から来た青狸のように万能ではないのだ。こればかりは致し方がない。

 

「・・・・・・まぁ、せっかくだし昼は外で食べよっか」

 

「おー! 本当かー!」

 

「うん。それじゃ、学校が終わったらいつものファミレスに集合ね」

 

 士織が言うと、琴里は興奮した様子で手をブンブンと振った。

 

「絶対だぞ! 絶対約束だぞ! 地震が起きても火事が起きても空間震が起きても、ファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!」

 

「占拠されたらご飯食べられないでしょ」

 

「絶対だぞー!」

 

「もうわかったから、早くお皿片付けましょ。でないと遅刻するよ」

 

 士織が言うと、琴里は「はーい!」と元気よく手を上げた。さっきより上機嫌なのは、言うまでもない。

 我ながら甘いと感じてはいるが、今日は特別な日だ。これくらい贅沢をしても構わないだろう。

 士織は台所の窓開ける。

 その向こうには、何かいいことがありそうなくらい、晴れ渡る空が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 士織が高校に着いたのは、午前8時15分を回った頃だった。

 廊下に貼り出されたクラス表を確認し、これから1年間お世話になる教室に入っていく。

 

「2年──4組」

 

 30年前の南関東大空災の発生以降、被害にあった地域一帯はさまざまな最新技術のテスト都市として、再開発が進められた。

 士織の通う来禅高校もその一つだ。

 都立校とは思えない最新の設備や地下シェルターが備えられている。

 そのため入試倍率も低くはなかったが、日頃から勉強を続けている士織にとってはさほど苦にはならなかったそうだ。

 そんな士織が黒板に書かれた座席表を確認しようと首を動かす。

 すると、

 

「──五河士織」

 

 後ろから不意に、聞き覚えのない声がかけられた。

 

「へ?・・・・・」

 

 思わず、変な声が出てしまう。不思議に思い振り向く。

 そこには少女が1人、立っていた。

 人形のような、端正で表情の窺えない顔立ち。

 肩に触れるくらいの、美しいシルバーブロンドの髪。

 士織には見覚えのない少女だった。

 

「え・・・・・・私?」

 

「そう」

 

「えっと、なんで私の名前知ってるの?」

 

 士織が疑問を挺すると、少女は不思議そうに首を傾げる。

 

「覚えていないの?」

 

「え? それってどういう・・・・・・」

 

「そう」

 

 士織は訳がわからないといった様子で続きを聞こうとするも、少女は短く言って窓際の席へと歩いていった。

 

「なんだったんだろ、一体」

 

 士織は眉をひそめる。

 私は彼女とどこかで会ったことがあっただろうか。

 

「あれ? 士織ちゃんって鳶一と仲よかったの?」

 

「え? あ、殿町君」

 

 後ろから声をかけてきたのは、去年士織と同じクラスであった殿町宏人(とのまちひろと)だった。

 

「えっと、鳶一さんて、誰かな?」

 

「ほら、さっきまで楽しく話してたじゃないか」

 

 言いながら、殿町が窓際の席を指差す。

 先ほどの少女が、分厚い技術書のようなものを読んでいた。

 ふと、士織の視線に気づいたのか、少女が視線を向けてくる。

 

「・・・・・・っ」

 

 士織は思わず視線を逸らす。一方殿町は馴れ馴れしく手を振っていた。

 だが、少女はさして気にした様子もなく、再び本へと視線を戻した。

 

「いつもあんな感じなんだよなぁ」

 

「殿町君の知り合い?」

 

「あれ? 本当に知らないのかい? 鳶一折紙。ウチの学校が誇る超天才。聞いたことない?」

 

「う、うん。そんなにすごいの?」

 

「そりゃあ、成績は常に学年首席。この前の模試では全国一位だったからね。すごいなんてもんじゃないさ」

 

「そんな人が何で公立校にいるんだろ?」

 

「さあね、家の都合とかなんじゃないか?」

 

 大仰に肩をすくめながら、殿町が続ける。

 

「因みに、体育の成績もダントツで、去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』で3位にまでなってる美少女でもある」

 

「へ、へぇ~。そうなんだ」

 

 何やら要らぬ情報まで教えてくる殿町に、士織はやや引きつった笑みを浮かべた。

 とそこへ、

 

「おい、殿町! また士織はにちょっかい出してんのか!?」

 

「ゲッ!」

 

 声のした方を見ると、士織の友人である山吹亜衣(やまぶきあい)葉桜麻衣(はざくらまい)藤袴美衣(ふじばかまみい)の3人トリオがいた。

 この3人は名前が似ている縁で仲がよく、そしてかわいいものに目がない。そのため、士織がこの3人と仲良くなったのも最初はかわいいからという理由だったことを後に聞かされた。(聞かされた本人は自分がかわいいとは思っていないようだが)

 

「士織ちゃん大丈夫!? 殿町君に変なことされてない!?」

 

「こんないたいけな少女に手出すとか、マジ引くわ~」

 

「ちょっと待て! なぜ俺が話しかけただけでこんなに言われなきゃならん!?」

 

「アハハハ・・・・・・」

 

 3人による理不尽な口撃に曝される殿町。そもそも彼は1年生の頃士織に告白し、玉砕された過去があり、今でも諦めきれないのか、こうして度々話しかけてくるのだ。

 しかし、仲良しトリオはお気に入りの士織にこれ以上悪い虫をつかせないためにもこうして悪い虫(男ども)を牽制しているのである。

 と、そうこうしているうちに予鈴が鳴った。

 話がややこしくなりつつあったのでこれ幸いにと、士織は黒板に書かれた席順に従い、席につく。

 ふと、隣を見る。

 

 

「・・・・・・?」

 

 おもむろにそちらを向けば、折紙がじーっ、とこちらを見ていたのである。

 

「・・・・・・っ!」

 

 一瞬目が合うと、士織は慌てて視線を逸らした。

 

(さっきも私のこと知っているふうな感じだったし、何か変なことしたかな?)

 

 そんなことを考えながら、士織は頬に一筋の汗を垂らした。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 それからおよそ3時間後。

 

「士織~この後暇?」

 

「よかったら、この後一緒にお昼にしない?」

 

 始業式を終え、生徒たちが教室を出ていく中、仲良しトリオの亜衣と麻衣が話しかけてきた。因みに、美衣もすぐ側で成り行きを見ている。

 

「ごめん、今日はちょっと先約があるから」

 

「なに!? ・・・・・・ハッ! まさか男!?」

 

「違う違う、妹の琴里だよ」

 

 士織が言うと、3人はほうと息を吐いた。

 

「まぁそうだよね、士織ちゃんに彼氏とかあり得ないもんね」

 

「シスコンだしな」

 

「いたらむしろ怖い」

 

「そんなに彼氏がいたらおかしいの!? 私!?」

 

 そんな他愛もない会話をしていた時だった。

 

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

 

 

「「「「・・・・・・ッ!?」」」」

 

 突然、街中に不快なサイレンが鳴り響いた。

 

「な、なに?」

 

 麻衣が窓際を見やる。

 教室に残った生徒たちも、皆会話を辞めて窓の方を除いている。

 

『──これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予想されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難してください。繰り返します。──』

 

 瞬間、生徒たちがざわめきだす。

 ──空間震警報。

 最悪の予感が、確信に変わった。

 

「ウソ、マジで?」

 

 亜衣も思わず、言葉が漏れる。

 だが少なくとも、慌てふためくような生徒はいないようだ。

 なぜならここは高校。全校生徒を容易に収容できるシェルターが備え付けられているからだ。

 

「シェルターはすぐそこだから、落ち着いて避難すれば大丈夫だよ」

 

 士織の言葉に、3人は無言で頷いた。

 慌てずに教室を出ると、廊下には既に生徒で溢れかえっていた。

 だがそんな中1人だけ、逆方向へ向かう女子生徒がいた。

 

「鳶一さん? ・・・・・・」

 

 それは、先ほど士織に話しかけてきた、鳶一折紙だった。

 

「ちょっと! そっちにシェルターなんて──

 」

 

「大丈夫」

 

 折紙はそれだけ言うと、再び駆け出していった。

 

「大丈夫って、あの子・・・・・・」

 

「士織! 何してるの! 早くしないと行っちゃうよ!」

 

「ッ! ごめん亜衣。すぐ行くから」

 

 士織は先ほどのことを頭の隅へ追いやると生徒の列へと並んだ。が、それとは別にあることを思い出した。

 

「ん、どうしたの士織?」

 

「ちょっとね、確認ごと」

 

 適当に言葉を濁しつつ、士織は琴里に電話をかける。

 が、何度試しても繋がらない。

 

「・・・・・・琴里」

 

 もう既に避難しただろうか? そんな不安が、士織をめぐる。

 警報が鳴るのも構わずに、忠犬のように待っている琴里の姿を、嫌がおうにも想像してしまうからだ。

 ふと、今朝の言葉が蘇る。

 

 ──────『絶対だぞ! 絶対約束だぞ! 地震が起きても火事が起きても空間震が起きても、ファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!』──────

 

「・・・・・・っと、そうだ、あれを使えば!」

 

 確か琴里の携帯は、GPS機能で位置を特定出来たはずだと、士織は思い出した。

 早速携帯を操作し、琴里の位置情報を調べる。

 だが、

 

「ッ! ──ウ、ソ、でしょ・・・・・・」

 

 琴里の位置を示すアイコンは、約束のファミレスの正面で停止していた。

 

「・・・・・・っ、行かなくちゃ!」

 

 士織は携帯をしまうと、列から抜け出した。

 

「ちょっと! 士織! どこ行くの!?」

 

「ごめん! 忘れ物したから、先に行ってて!」

 

 士織は制止の声を受けながら、列を逆走していく。

 そのまま昇降口を飛び出すと、校門を抜け、坂道を転がるように駆け下りる。

 

「はぁ!はぁ!・・・・・・なん、で、・・・・・・はぁ!ひなん、して、・・・・・・はぁ!ないの、あの、子は!」

 

 士織は出せる最高速で足を動かした。

 街は生活感を残したまま、人だけがいなくなっていた。まるでハリウッド映画のワンシーンか何かのようだ。

 30年前の大空災の影響で、天宮市は公共施設はおろか、一般家庭のシェルター普及率も日本1。

 おまけに、最近頻繁に起こる空間震も手伝って、避難は迅速なはずだ。

 それなのに、

 

「なんで残っているのよ、琴里・・・・・・っ!」

 

 走りながら、琴里の位置を確認する。

 やはり、未だファミレスの前から動いてはいないようだった。後でキツイお仕置きをすることを心に決め、士織は全速力で街を駆ける。

 

(琴里・・・・・・お願いだから、無事でいて!)

 

 士織は走る。足が痛み、疲労で倒れそうになっても、ただ走る。

 妹を救うため。

 と、

 

「・・・・・・なに? ・・・・・・あれ」

 

 士織は眉をひそめた。

 なぜなら、視界の端に空を飛ぶ人影のようなものが映ったのだ。それも1つではなく、複数。

 だが、すぐにそんなものは気にしていられなくなった。

 

「キャァッ!!?」

 

 士織は思わず目を瞑る。

 突然目の前の街並みが、ひかりにつつまれたのだ。

 それと同時に、地を鳴らすほどの凄まじい衝撃波が士織を襲う。

 慌てて顔を覆うが、バランスを崩して転げてしまう。

 

「いてて・・・・・・一体なにが?・・・・・・」

 

 痛む体を押さえつつ、身を起こす。

 

「──え?──」

 

 と、士織は眼前の光景に、言葉を失った。

 だって、さっきまであった街並みが、一瞬のうちに消え去ってしまったのだから。

 

「な、なにが? ・・・・・・どうして、こんな・・・・・・」

 

 士織は目の前の、非現実的な出来事に呆然と呟く。

 まるでそこは、地をスプーンでくりぬいたかのように抉られていたのだ。

 そして、クレーターのようになった街の中心には、何やら金属の塊のようなものが聳えていた。

 

「あれは・・・・・・?」

 

 遠くてよく分からないものの、王様がよく座る玉座であることは確かなようだ。

 だが、重要なのはそこではない。

 その玉座のひじ掛けに足をかけるようにして、奇妙なドレスを纏った少女が1人、立っていたのだ。

 

「あの子──なんであんなところに」

 

 顔は朧気にしか見えないが、長い黒髪と不思議な輝きを放つスカートが見えることから、女の子なんだろう。

 ふと、少女気怠そうに首を回し、士織へと顔を向けた。

 

「・・・・・・え?」

 

 士織に気づいた、のだろうか。こちらに顔を向けてきた。

 すると、ゆらりとした動作で玉座の背もたれから、柄のようなものを引き抜いた。

 

(剣・・・・・・?)

 

 それは、幅広の巨大な剣だった。

 虹のように幻想的な輝きを放つ、不思議な剣。

 それを見た瞬間、

 

「ひっ・・・・・・ッ!?」

 

 少女が剣を横薙ぎに振り抜いてきた。

 と同時に、体を支えていた腕から力が抜け頭が下がる。

 そして、その上を刃の軌跡が通り抜けていった。

 

「・・・・・・え?」

 

 士織は振り返る。

 そこには、同じ高さに切り揃えられた街並みが、広がっていた。

 一拍の後、遠雷のような崩落音が響き渡る。

 

「そんな・・・・・・ッ!?」

 

 士織は人智を越えた出来事に戦慄する。

 ────あり得ない。あってはならならい。こんなこと。

 

「なんなの、一体」

 

 士織は腰が抜けて立てない。

 

(早く逃げないと、琴里が!!)

 

 だがそのときだった、

 

「────お前も、か」

 

「ッ!?」

 

 酷く疲れたような声が、頭上から響いてきた。

 目の前に、一瞬前まで存在しなかった少女が立っていた。

 そう、それは────今までクレーターの中心にいた少女だった。

 

「あ・・・・・・」

 

 自然と、声が漏れる。

 年は士織と同じか、少し下か。膝まであろうかという黒髪と、愛らしさと凛々しさを兼ね備えた顔。装いは奇妙で、よく分からない素材を使ったドレスや、不思議な膜で構成されたスカートを身に付けていた。

 だがそれよりも、

 

「────、────」

 

 すべてが霞んでしまうほど、美しかった。死の恐怖も、呼吸すら忘れてしまうほどに。その少女は、美しかった。

 

「────あなた、は・・・・・・」

 

 士織は気付けば、声を発していた。

 少女はゆっくりと視線を下ろす。

 

「・・・・・・名、か」

 

 心地いい調べのはずなのに、その声はどこか悲しい。

 

「────そんなものは、ない」

 

「────っ」

 

 そのとき、初めて目があった。

 同時に、士織は感じた。

 ────あぁ、知っている。私は、この目を知っている。

 あのときの私(・・・・・・)と同じ目だ。

 

 

 

 

 

 

 この時、士織は知る由もなかっただろう。

 これが、運命が始まった日だということに・・・・・・

 




如何でしたでしょうか。
 初心者の拙い文章だったと思いますが、気に入っていただけたなら幸いです。

 誤字、脱字の報告もしていただけるのならば、これ以上の喜びはございません(ToT)
 次回更新は未定ですが、暖かい目で見ていてください。
 ではまた次回
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