百合あんです。
以外と好評価が多い! (○_○)!!
感想まで頂いちゃって・・・・・・私、感激です!
案外早く書けたので早速投稿しました。
では、本編をどうぞ
────久しぶり。
頭の中に、どこかで聞いたことのある声が響いてきた。
────やっと、やっと会えたね、×××。
懐かしむように、慈しむように。
────嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待ってて。
あなたは誰なの、と問いかけるも、返事はない。
────もう、絶対に離さない。もう、絶対間違わない。だから、・・・・・・
不思議な声はそこで、途切れた。
◇ ◇ ◇ ◇
「・・・・・・うぅん?」
士織は目を覚まし、
「きゃ!」
すぐに悲鳴を上げた。
無理もない。何しろ、見知らぬ女性が士織の瞼を開け、ペンライトのようなもので光を当てていたのだから。
「・・・・・・ん? 目覚めたね」
眠たげな目をした女性は、ぼうっとした声でそう言った。
気絶した士織を
シャンプーのような匂いが、微かに香る。
「だ、だだだだだ誰、ですか」
「・・・・・・ん? ああ」
女性はぼうっとしたまま身体を起こすと、垂れていた前髪を鬱陶しげにかき上げた。
改めて女性を見ると、軍服らしきものを着た
美人と呼ばれる部類に入るだろうが、分厚い隈と無造作に纏められた髪がそれを霞ませてしまう。
ポケットのぬいぐるみが可愛い。
「・・・・・・ここで解析官をしている、村雨
「・・・・・・」
全然安心できない!
だって明らかに、目の前の令音という女性の方が不健康そうに見えるからだ。実際先ほどから身体をふらつかせている。
と、そこで士織は違和感を覚えた。
「────
言って、周りを見る。
簡素なパイプベッドの周りを取り囲むように、白いカーテンが仕切る、学校の保健室のような空間だった。
「ど、どこなんですか、ここ・・・・・・」
「・・・・・・ああ、〈フラクシナス〉の医務室だ。君が気絶したみたいだったから、勝手に運ばせてもらったよ」
「〈フラクシナス〉? ・・・・・・て言うか気絶って一体・・・・・・あ────」
そうだ、私、あのとき・・・・・・
◇ ◇ ◇ ◇
少女に見とれていた士織は、カチャリという音とともに気づく。
見れば少女が、剣を振りかぶろうかというところだった。
「ちょっ・・・・・・ちょっと待って!」
慌てて士織が静止の声をかけた。
だが少女は、そんな士織に不思議そうな目を向ける。
「・・・・・・なんだ?」
「な、何しようとしてるの?」
「それはもちろん、早めに殺しておこうかと」
さも当然のように言う少女に、顔を青ざめる。
「な、なんで!?」
「なぜ・・・・・・? 変なことを聞くのだな」
少女は物憂げに続ける。
「────だってお前も、私を殺しに来たんだろう?」
「え?────」
予想外の答えにに、士織は呆けてしまった。
「・・・・・・っ、そんなわけない!」
「────何?」
思わず叫んだ士織に、少女は
だがそれも束の間。少女はすぐに眉をひそめると、空に顔を向けた。
つられて士織も目を追い────
「なっ!?」
瞬間、目を見開く。何しろ目線の先には、空を飛ぶ奇妙な格好をした人間が、士織と少女めがけてミサイルのようなものを発射してきたのだ。
「ッ! きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──!?」
自然と叫び声が上がる。
だがいくら待てども、その衝撃はやってこない。
「・・・・・・え?」
呆然と、声を漏らす。
空から降ってきたミサイルは、少女の数メートル上空で、ピタリと止まっていたのだ。
少女が息を吐く。
「・・・・・・こんなものは無駄だと、何故学習しない」
言って少女が、剣を握ってない方の手を上げ、グッと握る。
途端、ミサイルがへしゃげて爆発した。
しかもその規模は小さく、まるで威力が内側に押し込められるようだった。
空を舞う人々が狼狽するのが、なんとなくわかる。
だが彼らは臆さず、次々とミサイルを撃ち込んでくる。
「────フン」
少女は小さく息を吐くと、まるで泣き出してしまいそうな顔を作った。
「────ッ」
奇妙な光景だった。
少女が何者で、上空にいる人々が何者なのかさえわからない。
けれどこの少女が、上空の人々よりも強大な力を持つことはわかる。
だから疑問に思う。
なぜこれほどの強者であるはずの少女が、
────なぜ、こんなに悲しい顔を、するのだろう。
「・・・・・・消えろ、消えろ。一切、合切・・・・・・消えてしまえ・・・・・・っ!」
少女は剣を振るう。
空には斬撃が飛び、飛行していた人々は慌てて回避、離脱する。
だが次の瞬間、少女めがけて凄まじい光線が放たれた。
「・・・・・・っ!」
咄嗟に顔を覆う。
しかしその光線もまた、見えない壁に当たったかのように霧散した。
そして、その光線に続くように、何者かが士織の後ろに舞い降りた。
「ケホッ、ケホッ・・・・・・さっきから一体なにが・・・・・・ッ!」
まるで悪い夢でも見てるようだった。
だが────そこに降り立った人影を見て、士織は戦慄した。
全身、機械のようなボディスーツを着た、シルバーブロンドの少女。見間違いようがない。
彼女は────
「鳶一・・・・・・さん?」
今朝会った少女の名を口にする。
そう、士織の眼前にいるのは、クラスメイトの鳶一折紙だった。
「五河士織・・・・・・?」
折紙が士織を一瞥すると、返事のように言った。
「へ? ・・・・・・な、なにその格好────」
士織にはもう訳がわからなかった。
いっそのこと、夢なら死ねば覚めるのではないかと思うくらい困惑していた。
だが、折紙はすぐに士織から目線を外すと、ドレスの少女に向き直った。
そして、
「────フン」
少女か剣を振り抜く。
折紙もすぐさま離脱し、太刀筋の延長から身をかわす。
そのまま折紙は、驚くべき速さで少女に肉薄する。
その手にはいつの間にか、光の刃が出現していた。
折紙は少女めがけて切り下ろす。
少女もすかさず、剣でその一撃を受け止める。
その時だった。
少女と折紙の攻撃が交わった瞬間、凄まじい衝撃波が発せられたのは。
「ちょっ、ま、きゃあぁぁぁぁぁ──ー!?」
そこで、士織の意識は途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇
「・・・・・・そうだ、私、あのとき意識を失って・・・・・・っ!」
士織はそこで重要なことを思い出した。
「琴里は!? 私の妹は!? あの、赤い髪をしたツインテールの女の子で!」
「・・・・・・まあ待て。少し落ち着くんだ」
士織はガシッ、と令音の肩を掴み、慌てた様子で捲し立てる。今の今まで琴里のことをほったらかしにしてたのだ。当然だろう。
「で、でも!」
「・・・・・・ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。・・・・・・気になることは色々あるだろうが、どうも私は口下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」
言って、カーテンを開ける。辺りは少し広い空間になっており、ベッドが6つと見慣れない医療器具が並んでいた。
士織は令音に従い、部屋出入口と思われる方へと歩む。
が、令音はフラフラしていたかと思えば、ガン! と音をたてて頭を壁に打ち付けた。
「! だ、大丈夫ですか!」
「・・・・・・むう・・・・・・ああ、すまない。最近少々寝不足でね」
士織が問うと、令音は考えをめぐらす素振りを見せ、指を3つ立ててきた。
「3日もですか? それはさすがに・・・・・・」
「・・・・・・30年、かな?」
「ケタが違った!?」
明らかに外見年齢を越えた数字に、士織は思わず、ツッコミを入れてしまった。
「・・・・・・まあ、最後に睡眠をとった日が思い出せないのは事実だ。どうも不眠症気味でね」
「そ、そうなんですか・・・・・・」
そう言うと、令音はどこからともなく錠剤の入ったピルケースを取り出す。そして、ラッパ飲みの要領で一気に口へと放り込んだ。
「ってストップ!」
何事もないかのように、
「・・・・・・なんだね、騒々しい」
「いや、なんて量飲んでるんですか! そもそも何の薬ですかそれ!?」
「・・・・・・全部睡眠導入剤だが」
「っ! それ死んじゃいますって!」
「・・・・・・でもいまいち効きが悪くてね。・・・・・・甘くて美味しいんだが」
「それもしかしなくてもラムネですよね!?」
ひとしきり叫ぶと、士織ははぁとため息を
「・・・・・・とにかく、こっちだ。ついてきたまえ」
令音がピルケースをしまうと、危なっかしい足どりで再び歩き出す。
令音に続いて、士織も外に出る。
そこは、宇宙船のような機械的な構造になっていた。
まるで、映画の中に迷い込んでしまったかと錯覚してしまいそうなほどである。
「・・・・・・さ、何をしているんだ?」
士織は令音に促されるまま歩く。
思えば、今日は非現実的なことばかりだ。
空間震に、謎の少女に、空飛ぶクラスメイト。果ては幽霊お姉さんとスペースシップだ。もう何が何だか。
「・・・・・・ここだ」
と、考えているうちに目的地に着いたようだ。
すると、電子パネルの軽快な音とともに、扉がスライドする。
「・・・・・・さ、入りたまえ」
令音が入っていくと、士織もそれに続く。
「・・・・・・うわぁ・・・・・・」
中に入ると、そこは船の艦橋を思わせるような場所だった。全体的に薄暗く、あちこちにはモニターが設えてある。左右両側にはなだらかな階段があり、その下段の辺りには複雑なコンソールを操るクルーの姿が見受けられる。
「・・・・・・連れてきたよ」
令音がフラフラと頭を揺らしながら言う。
「ご苦労様です」
艦長席の隣に立っていた長身の男が、執事のような調子で軽く礼をする。日本人離れしたその風貌と相まって、さながら英国紳士のようであった。
「初めまして。私はここの副司令、
「は、はい・・・・・・」
頬をかきながら、小さく頭を下げる。
士織は、令音がこの男に話しかけたのかと思った。
だが、それは違った。
「司令、村雨解析官が戻りました」
神無月が声をかけると、こちらに背を向けていた艦長席が、ゆっくりと回転する。
そして。
「────歓迎するわ。ようこそ〈ラタトスク〉へ、士織」
『司令』と呼ぶにはいささか可愛らしすぎる声で言う少女。黒いリボンで結ばれた、真紅の髪。折れてしまいそうなほど小柄な体躯。どんぐりを思わせる丸っこい目。そしてその口には、チュッパチャプスが咥えられていた。
士織は、顔を驚愕に染める。
「・・・・・・琴、里?」
そう、その少女は間違いなく士織の可愛い妹、五河琴里だった。
「本当に・・・・・・琴里・・・・・・なの?」
「何? 士織? まさかとは思うけど、妹の顔を忘れたの?」
瞬間、士織は琴里めがけて駆け出した。
「琴里!!」
勢いそのまま、琴里を抱き締める。
「ちょっ、いきなりなにするよの士織! 苦しいじゃない!」
人目を憚らず、琴里に抱きつく士織。琴里もそれに反発しようと、声を荒げる。
だが、
「・・・・・・よかった・・・・・・」
「? 士織?」
「本当に・・・・・・よかった。琴里が無事で・・・・・・本当によかった」
「・・・・・・」
涙ながらに言う士織。琴里はそこで、ようやく姉が泣いているのに気づいた。
「琴里が死んじゃうんじゃないかと思って、私ッ、私ッ!」
「・・・・・・心配かけて、ごめんなさい」
「うん。本当に、心配したんだから!」
「・・・・・・うん、ありがとう、お姉ちゃん」
「うぅ・・・・・・うぅ、うぅぅぅぅぅ!」
士織は琴里を抱き締めたまま、そっと涙を流した。
◇ ◇ ◇ ◇
「で、落ち着いたかしら? 士織?」
「は、はい。だいぶ、落ち着きました・・・・・・」
数分後、十分に泣き終えた士織は、用意された椅子に腰かけていた。
その頬は若干、赤みをおびている。
「まったく、こんな泣き虫が姉だなんて信じられないわ」
おかしい、士織はそう思った。
冷静になって見ても、琴里の態度や口調がおかしいのは明白だし、何より、士織の可愛い妹は、お姉ちゃんのことを呼び捨てにはしなかったはずだ。
「まぁいいわ。それよりも、ちゃっちゃと説明しちゃいましょう」
言って、琴里が艦橋のスクリーンをさす。
「あれは精霊よ」
「・・・・・・精霊?」
琴里が指した先は、先刻遭遇した黒髪の少女が映されていた。
「そ。彼女は本来この世界には存在しないモノであり────この世界に出現するだけで、己の意思とは関係なく、あたりを吹き飛ばしちゃうの」
そこまで言われ、士織はハッ! と気づく。
今朝のニュースの映像と、少女が立っていた場所が、重なった。
「まさか、それって・・・・・・!」
「そう、彼女みたいな精霊が、この世界に現れる時の余波のことを、俗に空間震と呼ぶわ」
「・・・・・・っ!」
士織は息をのむ。世界を蝕む理不尽極まりない現象が、たった1人の少女によって、起こされていたとは。
「ま、規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければ────それこそ、大陸に風穴が空くくらいには、ね」
琴里が飴で輪を作る。おそらく、30年前のユーラシア大空災のことを言っているのだろう。
「それにしても、運がいいわね士織。もし今回の爆発規模があとちょっとでも大きかったら、あなた一瞬で吹き飛ばされてたわよ」
「・・・・・・」
士織はゴクリ、と唾液を飲み込んだ。我ながらよく生きていたものだと、嫌な汗が頬を垂れていく。
琴里が、そんな士織を半眼で睨む。
「だいたい、何で警報発令中に外に出たの? バカなの? 死ぬの?」
「な、なんでって、それは」
そう言って、士織はポケットから携帯電話を取り出すと、琴里の位置情報を表示させた。
「ん? ああ、それ」
しかし、琴里は懐から携帯電話を取り出して見せた。
「あれ?なんで・・・・・・これにはまだファミレスで止まっているって・・・・・・」
士織はお互いの携帯を見やる。士織の携帯には、琴里の位置を示すアイコンが、未だファミレスの前で止まっているのがわかる。一体どういうカラクリなのだろうか。
「はぁ~。なんで警報発令中に外にいたのかと思えば、それが原因だったのね。私をどれだけ阿保だと思っているのかしらこの馬鹿姉は」
「え、いやだって・・・・・・え、そもそもこれって・・・・・・」
「簡単よ。ここがファミレスの前だから」
「へ・・・・・・?」
「ちょうどいいわ。見せた方が早いでしょ。────1回フィルター切って」
瞬間、薄暗かった艦橋が一気に明るくなる。
そして目の前には、一面の青空が広がっていた。
「なに、これ・・・・・・」
「何って、外の景色がそのまま見えてるだけよ」
「外の景色って・・・・・・これは」
「ええ。ここは天宮市上空15000メートル。────位置的にはちょうど、待ち合わせのファミレスあたりかしら」
「・・・・・・ってことは」
「そう。この〈フラクシナス〉は空中艦なのよ」
まるでお気に入りの玩具を自慢する子供のように────否、手塩にかけた我が子を紹介する母親のように、琴里が説明した。
「さて、ここがどこだかわかったところだし、説明を続けるわよ。神無月」
「はっ」
琴里が指を2本立てると、神無月が代わりの飴を取り出し、手渡した。一体いくつ食べる気なのか・・・・・・。
「次はこれ。AST。精霊専門の部隊よ」
スクリーンが切り替わると、機械的なスーツを纏った一団が映される。
「精霊専門? ・・・・・・それって具体的に何をしてる部隊なの?」
士織が問うと、琴里はさも当然かのように眉を吊り上げ、告げる。
「簡単よ。精霊が出現したらその場に飛んでって処理するの」
「・・・・・・処理・・・・・・?」
「要はぶっ殺すってこと」
「・・・・・・!」
士織は心臓が引き絞られたかのような感覚に襲われた。
「殺・・・・・・す?」
「ええ」
事も無げに言う、琴里。
言っていることは理解できる。先ほど士織も、その驚異を目の当たりにしたのだから。殺すという答えにたどり着くのは必然だろう。
でも、いくらなんでも、殺すだなんて。
(────だってお前も、私を殺しに来たんだろう?)
少女の言葉が蘇る。
ようやくわかった。少女がなぜ、そんなことを言ったのか。
なぜ、あんなにも、泣きそうな顔をしていたのか。
「まあ、普通に考えれば死んでくれるのが1番でしょうね」
「っ・・・・・・な、なんで」
「なんで、ですって?」
士織が悲痛に顔を歪めると、琴里が興味深そうにこちらを覗く。
「何もおかしなことはないでしょう。あれは怪物なのよ? この世界に現れるだけで災厄を引き起こす、言わば猛毒よ?」
「だって、空間震は、精霊の意思とは関係ないって────」
「ええ。少なくとも現界時の爆発は、本人の意思とは関係ないものだというのが有力な見方よ。──まあ、そのあとのASTとのドンパチも空災被害に数えられるけどね」
「・・・・・・それは、ASTって人たちが攻撃するからでしょ?」
「まあ、そうかもね。──でもそれはあくまで推測。もしかしたら、好き好んで街を破壊し始めるかもしれない」
そんなことはとっくにわかっている。でも、そうであったとしても────
「そんなことない!」
思わず声を荒げる士織。
少なくとも、あの子は。
士織は心の底からそう、確信していた。
「あの子は、そんなこと絶対しない!」
再び、声をあげる士織。
「ふぅん。随分肩をもつじゃない? 数分しか接点のない、しかも殺されかけた相手だって言うのに。・・・・・・もしかして、同性なのに惚れたの?」
「///っ、そっ、そんなこと、ないわよ!」
「ええ~本当かしら? 顔が赤いわよ?」
「だからち・が・う! わ、私はただ、もっと他の方法があるんじゃないのかな・・・・・・って」
「方法、ね」
蚊の鳴くような声に、琴里はふぅと息を吐いた。
「じゃあ聞くけれど、他にどんな方法があると思うの?」
「それは・・・・・・」
言われて、押しとどまる。
これと言う方法は────浮かばない。
けれど、見てしまった。
あの今にも泣きそうで、苦しそうで、痛々しい、あの顔を。
忘れもしない、あのときの自分と同じ、あの顔を。
「でも────」
あのときの死の恐怖は、体の芯まで刻まれている。
思い出せば、身震いしてしまうほどに。
けれど士織には、あのときの少女をほったらかすことなど、できなかった。
「私は、あの子とちゃんと、話しがしたい。ううん、しなきゃいけない!」
士織の言葉に、琴里はニヤリと口を歪める。
その言葉を待ってた、と言わんばかりに。
「そう。────なら、手伝ってあげる」
「・・・・・・え?」
士織が口をぽかんと開けると同時、琴里が両手をバッと広げた。
令音を、神無月を、下段にいるクルーたちを、そしてこの空中環〈フラクシナス〉を示すように。
「私たちが、それを手伝ってあげるって言ったのよ。〈ラタトスク機関〉の総力を以て、士織をサポートしてあげるって」
「・・・・・・サポート?・・・・・・私の?」
「ええ、そうよ」
琴里が優雅に指を絡ませる。
「いい? 精霊の対処方法は大きく分けて2つあるの」
「2つ・・・・・・?」
士織の問いに、琴里が頷くと、人差し指を立てた。
「1つは、ASTのやり方。武力を以てこれを殲滅する方法」
次いで、中指を立てる。
「もう1つは・・・・・・精霊と対話する方法。私たち〈ラタトスク〉は、対話によって精霊を殺さず、空間震を解決するために結成された組織よ」
士織は眉をひそめて考える。一体その組織は何なのか、なぜ琴里がそんなところに所属してるのか、気になることは山ほどある。だが今は、最も気にしなければならないことを口にする。
「・・・・・・なんでその組織が、私をサポートすることになってるの?」
「て言うか、そもそも前提が逆なのよ。〈ラタトスク〉はね、士織のために作られた組織なのよ」
琴里がビシッと指を指す。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇッ!?」
士織は今までで1番盛大に表情を崩すと、素っ頓狂な声を上げた。
「な、ど、どうして? 意味がわからないんだけど・・・・・・。私のため?」
「ええ。────士織を精霊との交渉役に据えて、精霊問題を解決しようって組織と言う方が正しいのかもしれないけれど。なんにせよ、士織がいなかったら始まらない組織なのよ」
「ま、待ってよ。どういうこと? この人たちが全員、そんなことのために集められたの? それにどうして私なの!?」
士織が混乱しながら問うと、琴里はキャンディを口で転がしながら唸った。
「まぁ、士織は特別なのよ」
「答えになってないよ!」
「ま、理由はそのうちわかるわ。いいじゃない。私たちが全人員、全技術を以て士織の行動を後押ししてあげるって言ってるよ? それとも何。 また1人で何の手立てもなく精霊とASTの間に割って入るつもりなの? 死ぬわよ。今度こそ」
琴里の若干怒気を孕んだ口調に、思わず息を呑む。
確かに、士織には理想と希望を叶えるだけの力はない。
ごく一般的で、非力な、1人の人間に過ぎない。
「・・・・・・その、対話って言うのは、具体的に何をするの?」
言うと、琴里は小さく笑みを浮かべる。
「それはね」
ゴクリッと、喉が鳴る。
「精霊に──恋をさせるの」
琴里はふふん、と得意げに、そう言った。
「・・・・・・はい?」
士織の頬を、嫌な汗が伝う。
「恋?」
「そう、精霊と仲良くお話してイチャイチャしてラブラブしてメロメロにさせるのよ」
士織は頭を抱えたくなる衝動を必死に堪える。
「私、女なんだけど・・・・・・」
「何か問題? 今どき同性愛なんて、そんなに珍しいことでもないのよ」
「いや、私ノーマルなんだけど・・・・・・」
それ以前に、士織は恋すらしたことがない。相手が女の子なら尚更だ。
だが、ここで文句を言ったところで話は先に進まないだろう。
「・・・・・・まぁともかく、それで何で空間震が解決するの?」
琴里は「んー」と考える仕草を見せたあと、
「武力以外で空間震を解決しようとしたら、精霊を説得しなきゃならないでしょ?」
「そうだね」
「そのためにはまず、精霊にこの世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなに素晴らしいモノなんだー、ってわかれば、精霊だってむやみやたらに暴れたりしないでしょうし」
「まぁ、一理ある、のかな?」
「で、よく言うじゃない。恋をすると世界が美しく見えるって。──そういうわけだから、デートして、精霊をデレさせるのよ!」
「・・・・・・」
士織は考える。
もっと有効的な方法を、もっと穏便な方法を、もっと精神的に苦痛のない方法を。
だが、どれだけ頭を捻っても、これより良い案は思い付かなかった。
それに、
(・・・・・・消えろ、消えろ。一切、合切・・・・・・消えてしまえ・・・・・・っ!)
あの少女を救えるのなら、この際何だって構わなかった。
「・・・・・・わかった。私にできることなら」
「あら、案外
「考えてもいい案は浮かばなかったからね。妥協よ、ダ・キョ・ウ」
「ふ~ん、まあよろしい。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも1週間後。それまで、士織には訓練をしてもらうわ」
「え?・・・・・・訓練・・・・・・?」
士織は着実に、地獄へと近づいていた。
作者は評価や感想を貰うとモチベーションが急上昇します。
なので、皆様から多くの感想、評価を貰えば、作者はきっと、早く続きを書くでしょう。
なので、感想、評価を下さい!切実に!