早朝、気まぐれで歩いていたら、ボートに荷物を詰め込む万丈目を見つけた。
「…さらば、デュエルアカデミア。」
「…万丈目。出るのか?」
ボートに荷物を置いて感慨深げにつぶやく万丈目に声をかけた。
「ああ。斉藤はどうしてここに?」
「なに、気まぐれで散歩してたら、偶々お前を見つけただけさ。それより、万丈目。」
そう言ってから、以前アンティデュエルで受け取ったヘルバーナーと、4枚のカードを渡した。
「これは?」
「お守り代わりに預かってろ。」
俺の言葉に万丈目は笑みを浮かべてそのカードを受け取った。
「おい!! はじめ!! 起きろ!!」
万丈目を見送った後、寮に戻ってから授業を受けたのだが、眠くて転寝《うたたね》していたら十代に起こされた。ああ。睡眠時間が削られた。
「どった? 十代?」
「行くぞ!! 一!!」
十代は俺の手を取り、わけわからぬまま、俺とマナを連れて行った。
壁に空いてた穴を抜けて外に出たところで、
「お~い。十代。何があったのか、教えてくれないのか?」
俺の言葉に十代はハッと何かに気付いたようだ。
「悪い。実は、万丈目が行方不明だって聞いて万丈目をほっとけないから探しに行くんだ。」
「それなら、探しに行くだけむ…。」
「授業をサボってどこに行くのかしら?」
俺の発言を遮って明日香が声をかけてきた。そばに明日香親衛隊の枕田と浜口がいた。
「万丈目を探しに行くんだ!! ほっとけるわけないだろ!! 邪魔するなよ!」
「別にいいけど、私達も探しに行くわ。私もほっとけないわ。」
「いや、だから探しに行くだけむ…。」
「よーし!さっそく探しに行くぞ!!」
グスン。もういいもん。
「おーい!! 万丈目!!」
「出てくるッす!!」
辺りに十代と翔の叫び声が響いた。そして、
「万丈目君出てきなさい!!デュエルに負けたからって雲隠れするなんて男らしくないわよ!!!!」
明日香の容赦ない声が響き渡った。本当に容赦ないな?そう思っていたら、近くの茂みがガサガサと揺れ始めた。
「万丈目か?」
「それはな………。」
言い切る前に茂みからサルならぬSALが飛び出てきた。
「うわぁ!!!!」
「さ、さるぅ!!!!」
突然現れたサルにビックリして捕まえようとして結局枕田が人質にとられて逃走されてしまった。
「い、今のは一体?」
「さ、サルっすよね?」
「デュエルディスクをつけていたけど、もろにサルだな。」
そう言った時、同じ茂みからメインブラックと爺さんが飛び出てきた。ホントにどうなってるんだろ?もしかして、ど○◎もドア?
「おい!! サルは出てこなかったか?」
「あ、あっちへ行きました。」
その言葉に、男たちは顔を見合わせSALが行った方向に走り始めた。
「ちょっと待てよ。あのサルはいったいなんなんだよ?」
「あのサルは我々の研究の集大成。 Super Animal Larning、名付けてサルだ。」
「SALってまんまじゃん。」
サル、いやSALが行った方向に向かうと、崖にたどり着いた。
「よし! 麻酔銃でねらえ!」
「ウキッ!!」
「ダメです!! 女の子が人質にされてて手が出せません!!」
「それなら、」
そう言って、前に出る十代。十代のことだから『デュエルしろよ』が出るんだろうな。
「おいSAL! オレとデュエルしろ! オレが勝ったら、ジュンコは解放しろ!!俺に勝てたらお前は自由だ!」
十代らしいな。
「よろしいのですか?」
「かまわん。予想外の結果が出るかもしれん。」
○ ○ ○
『
『サルがしゃべった!!』
そりゃ、サルがしゃべったらびっくりするだろうな。
「SALには、デュエルに関することは機械がしゃべるようにしてある。」
『十代 の ターン です。』
「俺のターン! ドロー!融合発動! クレイマンとバーストレディーを融合!! ランパートガンナーを融合召喚!! フォレストマンを守備表示で召喚!一枚セットしてターンエンド!!」
十代 ライフ4000手札1
伏せカード1枚
ランパートガンナーDEF2500 フォレストマンDEF2000
「私のターンドロー!バーサークゴリラを召喚!!」
「攻撃力2000のモンスターをデメリットなしで!!」
「大丈夫だ!! 守備表示にしたら自壊効果が発動する上に攻撃表示で攻撃できるなら必ず攻撃しなければならないんだ。」
一番守備力の低いフォレストマンに攻撃したところでノーダメージなんだけどね。
「バトル! バーサークゴリラでフォレストマンを攻撃! バーサークウッキー!」
バーサークゴリラはいきり立ってフォレストマンに殴りつけるが互いにノーダメージだ。
「2枚セットしてターンエンド!」
十代 ライフ4000手札1
伏せカード1枚
ランパートガンナーDEF2500 フォレストマンDEF2000
バーサークゴリラATK2000
伏せカード2枚
SAL ライフ4000手札3枚
「俺のターンドロー! スタンバイフェイズ時にフォレストマンの効果発動! デッキ、墓地から融合1枚を手札に加える!この効果で2枚目の融合をデッキから手札に加える!」
フォレストマンはデッキから融合のカードを抜き取り十代に渡す。
「さらに<r融合回収:フュージョン・リカバリー>を発動!! 融合とバーストレディを手札に加える! さらに手札から融合を発動!手札のフェザーマンとバーストレディーを融合! 融合召喚!フレイムウィングマン」
おいおい。何で、融合を回収して正規素材で融合できるんだよ?
「フレイムウィングマンでバーサークゴリラを攻撃!! フレイムシュート!」
フレイムウィングマンは炎をまとった攻撃で、バーサークゴリラを破壊しようとする。しかし、
「ウッキー! リバースカードオープン! 攻撃の無力化! 攻撃を無効にしてバトルフェイズをスキップする!」
フレイムウィングマンの攻撃を時空の渦にのみこませた。…しかし、なぜおまえは火属性を連想させる攻撃なんだ? 風属性なのに。
「ターンエンド!」
十代 ライフ4000手札1
伏せカード1枚
ランパートガンナーDEF2500 フォレストマンDEF2000 フレイムウィングマンATK2100
バーサークゴリラATK2000
伏せ1枚
SAL ライフ4000手札3枚
「私のターン! ドロー! バーサークゴリラを生贄に百獣王ベヒーモスを召喚!」
「☆7のモンスターを生贄一体で!!」
「だけど、ベヒーモスは生贄一体で召喚した場合、元々の攻撃力を2000にするんだ。」
翔の驚きに十代が説明した。
「ベヒーモスの効果でバーサークゴリラを手札に加える! 二重召喚を発動して、もう一回バーサークゴリラを召喚!さらに手札から野生解放を発動! ベヒーモスの攻撃力を守備力分1500アップする!」
「攻撃力が、フレイムウィングマンを上回ったわ!」
「それだけじゃない。野生解放のようなリスキーカードを使ってくる以上、あいつの伏せカードは亜空間物質転送装置といった、デメリットを回避するカードの可能性が高い、一番ありそうなのは、キャトルミューティレーションだ。」
「え? それはどういう意味っすか?」
翔がそう問いかけた時だ。
「バトル! ベヒーモスでフレイムウィングマンを攻撃!!」
ベヒーモスの命がけの突進にフレイムウィングマンは対抗するが、破壊され、大きくライフを削られてしまった。(十代ライフ4000-3500+2100=2600)
「!! フレイムウィングマンが!!」
「さらにキャトルミューティレーションを発動!! フィールド上の獣族モンスターを手札に戻し、同レベルの獣族モンスターを召喚!!ベヒーモスを回収して召喚!! モンスターが特殊召喚されたことにより、ベヒーモスは再び攻撃できる! ベヒーモスでランパートガンナ―を攻撃!!」
「ランパートガンナ―が破壊された瞬間、トラップ発動!ヒーローシグナル!」
?何を呼ぶ気だ?
「E・HERO エアーマンを召喚!」
十代の言葉にエアーマンが、守備表示で召喚される。だけど、
「何やってるんだ?」
「え? どういうことっすか?」
「翔君。バーサークゴリラは、攻撃表示の時は必ず攻撃しなきゃならないんだよ?さっきまで、フォレストマンしかいなかったから、攻撃しても破壊されず、ノーダメージなんだけど、エアーマンが召喚されたら、破壊されるんだよ?」
「バーサークゴリラでエアーマンを攻撃!!」
その宣言にいきり立った、バーサークゴリラがエアーマンを殴りつけて破壊した。
「く。でも、エアーマンの効果発動!オーシャンを手札に加える!」
「ターンエンド!」
十代 ライフ4000手札2
フォレストマンDEF2000
百獣王ベヒーモスATK バーサークゴリラATK2000
SAL ライフ4000手札3枚
「あのSALなかなかやるね。」
「当然じゃ。お主らは聞いたことはおらぬか? 人間より動物のほうが精霊を見る能力が高いということを。それで、様々な研究を施したのが、あのSALだ。」
俺と爺さんとで、そんな話をしていた時、十代は奇跡のドローしていた。
「俺のターン! ドロー!スタンバイフェイズ時にフォレストマンの効果で3枚目の融合を手札に加える! 手札から魔法カード貪欲な壺を発動! 墓地から5枚のモンスターをデッキに加えて、2枚ドロー! 1、ランパードガンナ―、2、フレイムウィングマン、3、フェザーマン、4、バーストレディ、5、クレイマンをデッキに戻す!さらに強欲な壺を発動!デッキから2枚ドロー!」
………つっつこまないぞ! 貪欲な壺も含めて3枚だった手札が、5枚になってるなんてどんなドローだなんて突っ込まないぞ!!
「よし! これなら勝てる!!」
十代が会心の笑みを浮かべた時、
「十代君!! アソコ見て!!」
マナが指さす方にはサルの群れがいた。恐らくはSALの仲間だった子達だろう。
「あのサル君、仲間たちのもとに帰りたがってるよ。」
「だよね。いきなりつかまって、46時中訳のわからない実験に付き合わされてうんざりしているだろうし。」
その言葉に翔君はなにかに気付いたようだ。
「じゃあ、このデュエルで兄貴が勝っちゃったら、あのサルは、」
「………お前の気持ちは分かった。だけど、デュエルは真剣勝負だ! 手札から戦士の生還を発動! エアーマンを手札に加えて召喚! 効果でバブルマンを手札に加える!」
あ。勝ったな。
「? 何考えてるのかしら? バブルマンにはドロー効果があるけど、それを使うには、フィールドががら空きじゃなきゃいけないのに。」
「バブルマンじゃなくても、水属性であることが必要なんだ。」
「手札から融合を発動! エアーマンとバブルマンを融合! アブソルートZEROを融合召喚!」
十代のエアーマンとバブルマンが合わさり、極寒の力をやどりしHEROを召喚する。
「この前と融合素材が違う!!」
「アブソルートZEROはHEROと水属性という素材であることが必要なんだ。」
そして、オーシャンが手札にあるのに、エアーマンの効果を起動してまでわざわざバブルマンを手札に加えたということは、正規融合が狙いだなきっと。
「さらに融合を発動! フィールド上のフォレストマンとオーシャンを融合! E・HERO ジ・アースを融合召喚!」
デュエルディスクでジ・アースとアブソルートZEROの攻撃力を確認したらしい明日香は、小さく首をかしげていた。
「両方とも攻撃力2500。これじゃ、バーサークゴリラを倒せてもベヒーモスを倒せないわ。」
「確かにバトルじゃ無理だな。」
「ジ・アースの効果発動! フィールド上のモンスターを生贄に捧げることで、そのモンスターの攻撃力分アップする。」
アブソルートZEROは自分の力をジアースに加え自分は墓地に行った。
「さらにアブソルートZEROの効果発動! フィールドからこのカードが離れた時、相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する! 砕け散れ!Freezing Coffin!!」
その言葉にベヒーモス、バーサークゴリラが氷の棺に閉じ込められ、ガラスのように砕け散った。
「ジ・アースのダイレクトアタック!
その言葉にジ・アースはSALのライフを削りきった。
○ ○ ○
「さあ、SAL! 俺の勝ちだ! ジュンコを解放しろ!」
「うきぃ………。」
SALはジュンコを抱え上げ、俺達の前まで連れてきた。
「大丈夫か?ジュンコ?」
「…う、うん………。」
十代が安心させるために笑顔を見せて問いかけると、かすかに頬を紅くさせて小さくつぶやいた。しかも、十代を抱きしめて離れようとしない。おお?これは、十代に春が来たな。
「いまだ! SALを捕まえろ!!」
爺さんの言葉にメインブラック達が捕まえようとする。…全く空気読まない馬鹿もんたちだ。
「はーいストップ。」
「ぐほっ!!」
メインブラックの一人に鳩尾をついて、気絶させ、さらにもう一人の顎をかすめて脳を揺らす。それだけで、脳震盪を起こして立てなくなる。
「十代はデュエルに勝てばジュンコを解放しろとは言ったが、SALに捕まれと言ってないよ?」
「な、何?」
「SALはこのまま仲間たちのもとに帰す。それが、あのSALのためだ。」
十代の言葉に俺は指をグッと立てた。
「………ふん。このまま捕まえろ。仲間達も捕まえて研究素材にするのじゃ。」
メインブラック達はネットを投げつける。それによってサルたちは捕まるが、オレがその男の鳩尾をついて気絶させる。
「だから、待てって。事がばれて大騒ぎになったら、困るのは爺さんたちだ。」
「何故じゃ?」
当たり前のことなのに何をほざくんだろう。
「サルにこんな実験をしていたんだ。動物虐待で訴えられるぞ。ちなみに俺はこのことをばらさない気はないぞ。で、実験そのものをやめるか、動物虐待で捕まるのどっちがいい?」
その言葉に、爺さんはメインブラック達に軽く目配せして機械を外させた。
「よし、思わぬ時間は食ったが、万丈目を探しに行くぞ!!」
「だから、探す意………。」
「その必要がないのニャ。」
………頼むから最後まで言わせてくれ。大徳寺先生。
「実は、早朝万丈目君が島を出るところを目撃してしまったのニャ。しかし、見送ってた一君もそこにいるのはなんでなのニャ?」
「…え?な、なんで言わねえんだよ?」
「さっきから言おうとするたびにわりこんでくる奴のせいでいえなかったんだよ。」
SIDE 十代
「………じゃ、帰るか。」
一の答えに軽く脱力して帰り道の途中、
「キャ!」
木の根っこに躓いたジュンコが転んだ。
「大丈夫か?」
「う、うん。大丈…痛っ!!」
答えて立ち上がろうとしたとき、ジュンコは足首を痛がり、オレのほうに転びそうになる。そのせいで、腕に胸がふれる。
「ああ。ちょっと見てみるから、足首を見せてくれ。」
一はそう言ってから、ジュンコの足首を診察した。
「捻挫だな。俺達は鮎川先生に知らせてくるから、十代はジュンコを保健室まで連れて行ってくれ。くれぐれも足首に負担かけるなよ?」
一たちはそう言ってから、オレとジュンコを残して、後者の方へ走り去った。しかも、ごゆっくりと片手を振りながら。
「…じゃ、いくか。」
そう言ってから俺はジュンコを背中におんぶして保健室に向かう。
「…う、うん。そ、そのゴメン。」
「気にすんな。困ったときはお互い様だ。」
そう返すが、口数は少なくなる。気まずい。何か言葉を考えないと、だけど、ジュンコのいい香りと背中に感じる柔らかい感触でそれどころじゃない。結局言う言葉もないまま保健室についた時、鮎川先生が「青春ね。」とつぶやいて、手当てしてくれたのが耳に残った。