「斉藤君。私の言いたいことはわかりますか?」
「はい。」
俺のその言葉に校長先生は満足そうに頷いた。
「それでしたら、1週間の謹慎処分。ジャッジメントの仕事も休養してください。」
その言葉に俺は頭を下げて退室した。
やっちゃったな。俺は自室のベットの上に寝そべりながらそう思った。はっきり言って、俺は帽子に関しては沸点が限りなく低い。ホントにマナ達には感謝だな。それと、鮫島校長先生にもだな。クロノスがカンカンで退学にすべきだとわめいていたらしい。それをなだめてくれたんだからほんとに感謝だ。
次の日の夕方ごろになり、扉をノックする音が聞こえた。
「斉藤君? 原です。今日の授業内容のノートを持ってきました。」
「サンキューな原。開いてるから入ってくれ。」
その言葉に扉が開かれ、原が入ってきた。
「わざわざすまないな。ゆっくりしていけ。」
湯呑に茶を注いで、原に差し出して、授業内容を書きまとめたノートを受け取った。几帳面な性格らしくきっちりわかりやすくまとめてある。
「斉藤君。その帽子には何があるんですか?」
ピタッ。
その一言に硬直してしまった。
「原。何でそんなことを聞くんだ?」
「私はその場にいたわけではありませんから、わかりませんが翔君や浜口さんの話では、相手をなぐり殺してそうな勢いだそうでした。」
実際、相手の顔を殴打しまくって血まみれになってたしな。幸い失明とかはなかったけど、鼻骨骨折してたみたいだし。
「斉藤君が何も理由なくそんなことをしそうに見えないから聞きたいんです。」
その言葉に難しい顔をして黙考する。
「………わかった。原には、ノート《恩》があるし。この帽子にはな、『大切な人との思い出』が詰まっているんだ。」
その答えに原は何故か不安そうに問いかけた。
「そ、その人ってもしかして、」
SIDE 翔
「はあ。」
僕は重いため息をついていた。そのまま、空き席を眺めていた。
「どうなさられたのですか?翔さん?」
不安気に僕を見つめてくる浜口さん。
「………うん。僕は無力なんだなと思っちゃってさ。」
実際、昨日は無理矢理カードを奪われそうだったし、はじめちゃんの暴走も止めることができなかった。
「そうでもないですわ。翔君のおかげで私はカードを奪われずに済みましたし、ケガもせずに済みました。ありがとうございます。」
「でも、それは僕が身代わりになった結果だよ。」
「確かにそうです。デュエルの腕や体は弱いかもしれません。でも、その心は決して弱くはありません。自分がけがするのに勇気を踏み出して私を庇ってくださいました翔君は強いです。それでも、納得できないのなら、私が支えますから、翔君は私を支えてください。」
浜口さんは潤んだ様な熱っぽい目で僕をじっと見つめてくる。そして、次の瞬間クロノス先生も含めてみんなが砂糖まみれで倒れていることに気付いた。
SIDE 雪乃
私は一と委員長の話を聞いて胸が張り裂けそうな想いだった。
「俺にはその人との思い出があるから、この帽子を手離せない。」
一が帽子を手離すまでは、誰も勝てないだろうな。そうは思っても、あきらめる気はかけらもなかった。
「我ながら、難儀な恋をしているわね。」
その言葉は誰もいない廊下に響くのみだった。
SIDE 一
「昇格試験前に呼び出して申し訳ありません。」
「いえ。それは構いませんけど、呼び出しはなんでしょうか?」
わざわざ頭を下げて謝罪する校長先生にこちらはそれを否定してから問いかける。
「サイバー流のカードの筈のキメラテックオーバードラゴン。それを何故あなた方が持ってるのでしょうか?」
やっぱきたか。サイバー流のカードだからいずれ来るだろう問いだから、幾分余裕を持って答えた。
「サイバー流のカードとはいえ、作るのは、インダストイリュージョン社。で、俺の保護者がそこのペガサス会長です。その関係で特別に2枚作ってもらい1枚をマナに渡しました。………問題だったでしょうか?」
俺のその問いに校長先生は首を振って否定した。
「いえ。確かに、キメラテックオーバードラゴンはサイバー流の禁じ手ですが、サイバー流ではないあなた達にそれを封印する理由はありません。試験を頑張ってください。」
その言葉に頭を下げて退室した。