「さて、昼だし飯を………。ありゃ?」
昼飯を食おうと鞄の中を漁って弁当を忘れた事に気づいた。
「あ、枕田、浜口も十代達を連れて先に食っててくれ。」
「って、アンタはどうするのよ?」
「うっかり忘れてきたみたいだ。購買に行ってドローパンでも買ってくる。」
「却下です!」
話を聞いていたのか、麗華が割り込んできた。
「一君!不健康すぎます!きちんと栄養バランスを考えた食事を取らないといつか倒れます!」
「たかが一食………。」
「されど一食です!そういう甘えがいけないんです!」
俺の言葉を問答無用で切り捨てる。
「で、ですから、」
麗華はそこまで言って言葉を切ると、緊張した面もちで再び口を開いた。
「わ、私のご飯分けますからお昼ご一緒しませんか?」
「え?良いのか?ありがとな。」
「アラ?なら、私からも少し分けてあげるわ。」
話を聞いていたのか、雪乃が割り込んできた。すぐ後ろにマナと明日香もいる。二人とも弁当箱を片手にこちらを伺っている。
「麗華のお弁当を食べるのなら、婚約者の私のも分けるわ。」
―いつまでそれで人をからかう気なんだ?―
俺がそう問いかけるよりも早く。
『なっにぃー!!!!』
と男達の叫びが木霊した。
「ふ、藤原さん。そ、それ嘘ですよね?」
「本当よ。」
名も知らぬ男が恐る恐る、問いかけるが、雪乃は蕩けるような笑みでデマを流した。
「お〜い。雪乃。何デマ流してるんだ?」
ギンッ!!
次の瞬間、男達からこちらを睨み付けてきた。
「雪乃だと?俺でさえ許可もらった覚えがないのに!」
「アラ?何がデマなのかしら?あ・な・た?」
その言葉に周囲の殺気が強くなった。
「雪乃が婚約者になったの所だよ?だって、」
ナイス!マナ!フォローに入ってくれたマナが天使に見える。
「「婚約しているのは私となのよ?」」
じゃない!今じゃマナと明日香の背中に悪魔の翼が生えているように見える!
次の瞬間、男達は赤フードを着ていた。
『我々は清らかな乙女を守護するRRR団!血の盟約に背いた斎藤一を制裁する!』
その言葉を聞いた瞬間、逃げ出していた。
『逃がすな!追え!』
『おぉ!』
須藤の命令に唱和して追跡するRRR団。畜生!理不尽だ!俺が一体何をしたと!
「不幸っだーーー!!!!」
俺の魂の叫びがデュエルアカデミアに木霊した。
SIDE ???
俺はドロー修行の為に山籠りしているのだがその修行中に倒れている人を見つけた。女のように端整な顔でかぶっている帽子も女物のようだが、ラー・イエローの制服を着ている事から恐らくは男だろう。
「君………。だいじょ」
グゥゥッ!!
彼の腹から鳴る音に彼が空腹だと気づいた。
SIDE 一
「プハァ!美味しかったよ。ありがとう。大山。」
目の前の料理を平らげ、改めて、俺に昼飯をふるまってくれた大山という男に礼を言った。聞いた話によると、この人はデュエルアカデミアの生徒らしいがドローが思うようにいかず、ドロー修行の為に山籠りしていたらしい。そして、修行の一貫として、大量のドローパンの山の中から、黄金の卵パンという1日に一個しかないそのパンを引き当てるということをやっていたらしい。
「で、君は何故あそこで?」
「知り合いの娘が俺とその娘を含む4人と婚約しているというデマを使って俺をからかっていたんだが、それを聞いた連中が真に受けて、理不尽に制裁しようとしたんだ。で、逃げている途中で食いっぱぐれてガス欠で倒れたんだ。」
「………うん。まず君の場合はその鈍感なとこから治そうか?」
頭が痛いかのように軽くおでこを揉みほぐした大山は意味不明な忠告した。というか、俺は別に鈍感じゃないんだけど?
「まぁいい。この山籠りの結果を見ていってくれ!」
『決闘《デュエル!》』
『対戦相手 の ターン です。』
「先攻は大山からだ!」
「俺のターン!ドロー!ドローラーを召喚!効果により!手札をすべてデッキに戻して攻撃力を2500にする!ターンエンド!」
大山ライフ4000 手札0
ドローラーATK2500
「俺のターン!ドロー!手札から凡骨の意地を起動!サファイアドラゴンを攻撃表示で召喚!カードを1枚セットしてターンエンド!」
大山ライフ4000 手札0
ドローラーATK2500
サファイアドラゴンATK1900
凡骨の意地 伏せ1枚
斎藤一ライフ4000 手札3枚
「俺のターン!」
そう言って、大山はデッキの一番上のカードに指を引っ掻けるようなポーズで目を閉じる。
「………!!バーサークゴリラを召喚!バーサークゴリラで攻撃!」
バーサークゴリラはいきり立ってサファイアドラゴンに襲いかかるが、その直前に雷がサファイアドラゴンに直撃した。
「リバース起動!ジャスティスブレイク!効果により攻撃表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する!」
サファイアドラゴンの雷を纏ったブレスを直撃してバーサークゴリラとドローラーを破壊された。
「な!ターンエンド!」
大山ライフ4000 手札0
サファイアドラゴンATK1900
凡骨の意地
斎藤一ライフ4000 手札3枚
「俺のターン!ドロー!」
真紅眼の黒竜!これで残りは後、3枚!しかもこのカードは、
「凡骨の意地の効果起動!ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターの場合、そのカードを見せる事でもう1枚ドロー出来る!俺のドローしたカードはこいつだ!真紅眼の黒竜!通常モンスターにより1枚ドロー!」
ダイヤモンドドラゴン!これも通常モンスターだ!残り2枚!
「ダイヤモンドドラゴンも通常モンスターにより、追加ドロー!エメラルドドラゴン!追加ドロー!」
ッ!!コイツは!
「手札から融合を起動!フィールドのサファイアドラゴン、真紅眼の黒竜2体と、ダイヤモンドドラゴン、エメラルドドラゴンを融合!
俺の場に5本の首をもったドラゴンが姿を現した。
「な!何!」
「F・G・Dのダイレクトアタック!」
F・G・Dは5本のブレスを大山に浴びせた。
「ぐはぁ!お、俺が負けた?」
「大山。アンタのドローの修行は大したものだと思う。だけどさ致命的に足りないものがある。それは戦略だ。」
俺の言葉を大山は静かに聞いていた。
「最初にドローラーを召喚して手札を0にしたよな?運任せとは聞こえは良いかも知れないが、ただの無謀だ。手札が減るのはそれだけ取れる戦略が減るだけだ。」
「………なら、どうすれば良いのだ?どうすれば強くなれるのだ?」
「デュエルにあがけば、紳士にデュエルに挑めば、それだけ、自分の可能性が見えてくる。あ、後、ドローパンさ、今度からちゃんと営業中に買いに行けよ?代金を置いて行ったとしてもただの窃盗だからな?」
俺はそう言って、山を降りていった。?はて?なんか忘れているような?ラー・イエロー寮に戻った時、
ガシッ
両肩を捕まえられる感触と、
「ハァ〜イ♪」
の太い声で嬉しそうに笑う須藤の顔に何故あそこにいたのかを思い出した。強引にその手を振りほどいて全力で駆け出した。
「不幸っだーーー!!!!」
本日2度目となる俺の叫びが夕焼けの空に木霊した。