オシリス・レッドの食堂に皆を集めた大徳寺は後ろに男装貴族の早乙女レイを控えさせていた。
「みなさん。落ち着いて聞いて欲しいのニャ。今日からオシリス・レッドに編入した子がいるのニャ。早乙女レイ君だニャ。」
その言葉に帽子をかぶった男装少女がお辞儀をする。本当にすごいな。性別知ってなきゃ『小柄な少年』としか思えないや。
「キレイな男の子なんだな。」
そりゃ、女の子だからね。
「編入先がオシリスレッドなんで落ち込んでるのかな?」
「イヤ。それはない。と思う。」
翔の呟きに即座にツッコミを入れたのだが聞いちゃくれなかった。十代は立ち上がって、「フレーフレーレイ!」と応援し始めた。
「………何をやってるんだ?」
「成績が悪くてオシリス・レッドに入れられたレイを応援しているんじゃん。」
十代の言葉にため息をついてしまった。
「………十代。それは、違うぞ。編入生はオシリス・レッドからだ。当然。成績次第でラー・イエローにもオベリスク・ブルーにも行けるぞ。」
間違いを指摘され、誤魔化し笑いをした。
「タハハ。にぎやかなのは大歓迎だせ。」
十代の発言にニマリと笑みを浮かべる大徳寺先生だ。
「イヤ~それは、よかったのニャ。空いた斎藤くんの部屋に人を入れたお陰で実は部屋が足りなくて困っていたところだったのニャ。」
大徳寺先生。早乙女を十代の部屋に入れる気なのか?
「あ~。大徳寺先生。俺の部屋が一人部屋だし。早乙女が良ければ同室でも、構わないですよ。」
「助かるのニャ。ではレイ君は、彼の部屋に寝泊まりしてください。ところで何で君はここにいるのにゃ?」
「ハハハ。細かいことは言いっこ無しですよ?」
そう言って、この場は解散となった。
「………。久しぶりだな。レイ。」
「うん♪久しぶりです♪斉藤さん。」
実は、早乙女、イヤ、レイとは入学試験を受けるために、ホテルに向かう途中で迷子になり、レイが案内してくれたことがきっかけで知り合いになった。
「で、どうして、レイがここに来たんだ?」
「実は、カイザー様と会いたくて、ここに来たんです。」
その答えにハアと、深くため息をついてからレイの頭に拳骨を振りおろした。
「痛~い!何するんですか!」
「…この程度で済ませて御の字だろ?まったく無茶をする。親御さんや友達が心配するとは考えなかったのか?」
俺の言葉に何も言えず、硬直してしまった。
「浴室がそこにあるから、使って構わない。女の子なんだし、身だしなみぐらい気を使っといた方が良いぞ?」
「…そうします。」
俺の言葉にレイは洗面台で髪を洗い始めた。
「それにしてもレイが女の子だなんて、驚いたよ。」 レッド寮のそばの崖下でデュエルをしょうとする二人を見て翔が呟いた。
「そうか?そんなにビックリする事か?」
「翔の言う通りなんだな。」
ヤレヤレ。隼人まで、何を言うのやら?
「あのなぁ。たかが性別がわかったごときで何かが変わるわけ無いだろう?」
「そ、それはそうよね。」
「フフフ。ボウヤも中々言うわね?」
明日香と雪乃がそう言っている間も下の方を注意し続ける。
崖の上で、覗き見している俺達に気づかず、話し続けている十代とレイ。
「…じゃあ、ホントにボクが勝ったら、みんなに黙ってくれるんだね?」
「ああ。デュエルすれば、聞く必要がないからな。」
その答えにレイは嘆息した。
「全く、一さんといい、君といい、オシリス・レッドは優しい人たちばかりなんだね?」
「?一がどうしたんだ?」
「一さん。最初からボクの事、女だと知ってたけど、黙ってくれたんだ。」
その言葉に皆の視線が俺に向かった。
「?どうした?」
「はじめちゃん!知ってたんスか!」
「一応な。入学前にちょっとあってね。」
そして、何かに気づいたように、問いかけてきた。
「あ、あのはじめちゃん。最初から女の子だと知ってて、レイを泊めてたの?」
ビキッ
翔の言葉に周囲の空気が-200℃位凍りついたような気がする。
「一。その話を詳しく教えて欲しいのよねぇ。」
「そうね。包み隠さず話した方が身のためよ。ボウヤ。」
な、なんだかわからないけど、明日香と雪乃が黒い瘴気を纏って詰め寄ってくる!
「い、イヤ、だってさ、誰かの部屋に泊めさせるわけには行かないだろ?レイが入浴中に誰かが戻って来たら、イヤでもバレるし。」
俺の言葉に、二人は不満ながらも一応納得はしたらしい。話し合っているうちに、デュエルは進み、そして、
「フレイム・ウィングマンで十代さんにダイレクトアタック!」
「うわあぁぁっ!!!!」
なんと、レイが十代に勝ってしまったのだ。最初の展開はほとんど変わらないのだが、フレイム・ウィングマンの攻撃に対して、レインボーライフでライフを回復して、フレイム・ウィングマンに乙女カウンターを乗せる。そして、キューピットキスを装備した恋する乙女が攻撃することで、コントロールを奪われ、そして、敗北するに至った。
「強いな。お前。」
倒れた姿勢のまま、十代が言うと、レイは楽しそうに笑う。
「楽しかったよ。十代さん。」
片手を差し出すレイの手をギュッと握り返す十代。
「十代さん。ボクは………。」
「おっと。そのセリフは本人に言ったらどうだ?」
そう言って、視線をずらした先に丸藤先輩が立っていた。
「カイザー様………ボクは………。」
「すまない。その好意は嬉しく思う。だが、今の俺にはデュエルが全て何だ!こんな自分が他人を幸せにすることなどできない。」
クールだな。カイザーは。
「い、いいえ。そこまで真剣に考えてくださって、ありがとうございます。」
カイザーの謝罪にレイは頭を左右に振った。
「………で、レイはどうする?帰って、受け直すのか?」
「お、おい!一!性別を偽ったぐらいでそれはないだろ!」
事情も知らない十代がわって入った。
「それだけじゃないんだ。彼女が偽ったのは。」
その言葉が理解出来なかったのか、首をかしげている。
「レイは小学生なんだ。」
『何だって!!!!』
真実を教えた皆の叫びが見事にハモった。カイザーさえ叫ばなかったものの、驚きを隠せなかった模様。
「という事はオレは小学生に負けたのか!」
「ゴメンネ。」
片目を閉じてウィンクするレイに肩を落として笑う十代。
「ハ、ハハハ。だからデュエルは楽しいんだ。」
…笑いが乾いた笑いになっているぞ。
「で、レイはどうする?」
「帰ってから受け直します!翔さんや十代さんとお友達になれたのにさようならなんてしたくないです!」
その言葉に柔らかく笑みを浮かべ、レイの頭を柔らかく撫でた。
「よし。久しぶりだし、俺とデュエルしないか?」
「うん!一さんとデュエルするのも、久しぶりだからワクワクするよ!」
「「
『対戦相手 の ターンです。』
「ボクのターン!ドロー!ライフコスト2000支払い、終焉のカウントダウンを発動!恋する乙女を召喚!3枚セットしてターンエンド!」
レイ ライフ 2000 手札1枚 終焉のカウントダウン01
マジックトラップ 伏せ3枚
モンスター 恋する乙女
「俺のターン!ドロー!」
しかし、終焉のカウントダウンか。ずいぶん思いきったマネをするな。恋する乙女と相性最悪だし。ただ、アレを使ったから、こちらも急いでレイのライフを0にしなきゃこっちが負ける。
「
ファイアリィ・ガールが持つ真紅の槍が恋する乙女を攻撃する瞬間、
「トラップ発動!レインボーライフ!」
やっぱりダメージをライフ回復に変えてきたか。このカードの効果でファイアリィ・ガールの攻撃力分1300ポイントライフが回復する。
「一先輩のモンスターはもう攻撃出来ないですよね?」
「そうだな。」
「バトルフェイズ終了時にトラップ発動!女神の加護!ライフを3000回復するよ!」
「カードを2枚セットしてターンエンド!」
「その瞬間に速攻マジックカード非常食!発動!女神の加護を墓地に送って1000回復!そして、女神の加護、レインボーライフの効果で、更に3000回復するよ!」
レイ ライフ 9900 手札0枚 終焉のカウントダウン02
マジックトラップ
モンスター 恋する乙女ATK
モンスター ファイアリィ・ガールATK
マジックトラップ 伏せ2枚
一 ライフ 手札3
「ボクのターン!ドロー!強欲な壺を発動!そして、キューピットキスを発動!恋する乙女で、ファイリィ・ガールを攻撃!一途な想い!」
…ファイアリィガールに一途な想いという事はレズか?
『ファイアリィガール様ぁ~♪』
『フゥ。』
恋する乙女がファイアリィガールに熱い抱擁をして、ファイアリィガールも嫌々ながらも抱きしめ、キスをした。
「ダメージを受けた事で、キューピッドキスの効果!乙女カウンターが乗っているファイアリィガールのコントロールを得るよ!」
「ファイアリィガールで、ダイレクトアタック!バーンスラッシュ!」
「リバース起動!くず鉄のかかし!攻撃を一度無効にして、このカードをセットする!」
ファイアリィガールの真紅の槍をくず鉄で出来たかかしが受け流した。
「…妙ね。」
俺が発動したカードを見て、雪乃が首を傾げた。
「え?何がッスか?」
「攻撃を無効に出来るカードがあるなら、なんでボウヤは恋する乙女の攻撃を見逃したのよ?」
「え?それは、どういう?」
「翔。キューピットキスの効果を使うには、恋する乙女が攻撃をして、ダメージを受ける必要があるんだ。」
「あ。そうか。恋する乙女の攻撃を無効にすれば、ファイアリィガールを奪われずにすんだッスよ!」
十代の言葉に今更ながら翔が気づいたらしい。
「ボクはターンエンド!」
レイ ライフ 9000 手札1枚 終焉のカウントダウン03
マジックトラップ
モンスター 恋する乙女 ファイアリィガール
モンスター
マジックトラップ 伏せ2枚(一枚はくず鉄のかかし)
一 ライフ4000 手札3
「俺のターン!ドロー!手札から
ストーマーが突風を発生させ、ファイアリィガールを倒した。(レイライフ9000-2000+1300=8700)
「まだだ!ストーマーの効果は1つのバトルフェイズに2体のモンスターに攻撃をする事が出来る!ストームハリケーン2(ツヴァイ)!」
ストーマーが放つ暴風が恋する乙女を直撃して、ライフを削った。(レイライフ8300-2000+400=7700)
「キャアアア!で、でも、恋する乙女を攻撃した事で、ストーマーに乙女カウンターが乗るよ!」
『ストーマー様ァ。』
『か、可憐過ぎる。』
………お前は炎神黒色か?
「構わない。俺はターンエンドする。」
レイ ライフ 7700 手札0枚 終焉のカウントダウン04
マジックトラップ キューピットキス
モンスター 恋する乙女ATK
モンスター ストーマーATK
マジックトラップ 伏せ2枚
一 ライフ 手札2
「ボクのターン!ドロー!ボクは手札からサイクロンを発動!セットされているくず鉄のかかしを破壊する!」
セット状態くず鉄のかかしは急に発生した突風で破壊された。
「恋する乙女でストーマーに攻撃!一途な想い!」
『ストーマー様ァ~♪』
『おぉ。愛しの君よ。』
………恋する乙女はファイアリィガールにしたように抱き締めて、ストーマーは嬉しそうに抱き返して、キスをした。(レイライフ7700-2000+400=6100)
「キューピットキスの効果でストーマーのコントロールを得るよ!」
『ストーマー様は私の味方ですよね?』
『う、うぅ。』
あ、ストーマーが迷っている。
『味方ですよね?(ウルウル)』
『も、もちろんだとも。俺はか弱き者の味方だ!』
それで、アッサリとコロッといくんかい。…まぁカード効果だからしょうがないけど。
「ストーマーでダイレクトアタック!」
「リバース起動!」
『すまない。やはり俺は彼を裏切れぬ。』
そう言って、こちら側に戻るストーマー。
『な、何故ですか!ストーマー様ァ!』
『すまない。俺はストーマーではない。』
「速攻マジックカード退化の魔薬を起動!ストーマーを融合デッキに戻して生け贄になったウィンドマンを特殊召喚!」
「ボクは1枚セットしてターンエンド!」
レイ ライフ 6100 手札0枚 終焉のカウントダウン05
マジックトラップ キューピットキス
モンスター 恋する乙女
モンスター ウィンドマン
マジックトラップ
一 ライフ 手札2
「俺のターン!ドロー!」
ドローしたカードを見て勝ちを確信した。
「手札から二重進化―ダブル・エヴォリューションを起動!ウィンドマンを生け贄に
『ハァッ!』
俺の場に弓矢を構えた、戦士が誕生する。
「さらに手札からマジックカード進化の魔薬を起動!スナイパーを生け贄に捧げそれと、同属性同種族モンスターを召喚!…人々の運命を見定めし12の宮の1つ 人馬宮を守護する闇のHEROよ。闇夜さえも射抜く星星の矢にて我等が前の邪悪を射抜け!
(|D・HERO
(
「そして、手札からマジックカードチェンジングウィングをSagittariusに装備!」
このカードを装備したSagittariusの翼に魔力が宿る。
「チェンジングウィングの効果でこのカードに魔力カウンターが3つのり、その1つを取り除く事でフィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する!Sagittariusを守備表示から攻撃表示に変更!そして、Sagittariusのモンスター効果起動!」
その言葉にSagittariusは弓を引き絞り構える。
「Sagittariusは表示形式を変更する事で、相手フィールド上のマジックトラップかモンスターどちらかを全て破壊する!」
「サンダーボルトか、ハーピィの羽箒の効果を使えるのかよ!」
「なんて効果なの!」
Sagittariusの効果を聞いた外野が、驚いて騒然となった。
「ただし、効果を起動するたびに攻撃力が1000ダウンするけどな。俺が選択するのはモンスターゾーン!
(
Sagittariusが放った矢は流星雨となり、恋する乙女を襲った。
『キャアア!!!!!!』
悲鳴を上げながら、恋する乙女は破壊された。
「Sagittariusでダイレクトアタック!
Sagittariusが弓を引き絞りはなった矢がレイを襲った。
「コレで終わり!Ariesのダイレクトアタック!
Ariesが放った弾丸がレイのライフを0にした。
「負けちゃいました。」
デュエルが終わり、特に気落ちした表情も見せず、レイが言った。
「んじゃ、帰るか?レイ。」
ビギッ!!
俺の言葉に明日香と雪乃が黒いオーラを纏っていた。
「はぁ~じぃ~めぇ~。小学生相手に何やってるのよ?」
「一。まさかあなたがロリコンだとは思わなかったわ。」
「ちょ!ちょっと、待った!ロリコンってなんの事!」
「一がレイを自分の部屋に連れ込んで良いことをしようとしているからよ?」
「なんの話かは見えないけどさ、一応レイは俺と同室だぞ。」
「じゃあ、今からレイは私と同室ね?異論は?」
「い、いえ。無いです。マム。」
黒いオーラをいっそう強くしながら詰め寄る雪乃に頷く事しか出来なかった。
「じゃあ、レイ。次に来る時はちゃんと両親を説得するんだぞ?」
「わかってますって。」
俺の言葉に苦笑して頷くレイ。まぁ、ご両親にこっぴどく怒られたら反省もするか。
「………淋しくなるッスね。レイちゃんがいなくなって。」
「コラコラ。別に今生の別れという訳じゃないんだ。今は戻ってくるのを信じて待とう。」
「そうッスよね?」
俺の言葉に翔は笑みを浮かべる。
「十代さん。ちょっと、しゃがんでもらっても良いですか?」
「?こうか?」
十代の問いの答えは
CHU
と唇に触れるキスだった。
「今のボクのファーストキスですからね。待っててくださいね?十代様?」
そう言って、レイは船に乗る。
「いい?!」
あ。十代。驚きのあまり硬直してるよ。
「お。十代。奥さんの目の前で浮気とはものすごい根性しているな?なぁ?枕田?」
メラメラと
「えぇ。最高に面白いわ。あとでどういう事か教えてもらうからね?」
その言葉が合図にして船が出発した。