「…んう。」
頭を擽られる感触に意識が微かながら微睡みの中から引き寄せられる。…なんか目の前に柔らかな肌色の壁があるような?
「起きましたか?」
上から麗華の声が聞こえるがまだ頭の中が霞かかったみたいだ。
とりあえず、やることは目の前の壁に顔を押し付け柔らかで温かい堪能しながら甘い香りを肺一杯に吸い込む事だった。
「おっきな赤ちゃんみたいです♪」
笑いを含んだ声にやっと頭の中がクリアーになる。うん。まず最初に言うべき事は、
「うにゃぁぁ。」
恥ずかしさのあまり、ベッドの上で呻いてしまうのだった。
○ ○ ○
とまあ、朝というか、午前4時にこっぱずかしい事もあったけど、どうにか持ち直し明日香の所に向かう。セブンスターの1人こと、黒蠍盗掘団の首領ザルーグの提案で隠したカギの確認の為。そして、何よりも明日香の寝顔を拝見するため。
「やっぱり、鍵盗られたか。」
鏡台の上に置いてあった宝石箱がなくなってた。あの箱の中に7精門の鍵を入れてあったのだが、それごとなくなっている。
「お~い。明日香。起きろ。」
「ん~。」
俺の声に明日香の両目はうっすらと開かれる。
「はじめ?」
「ああ。こんな時間帯にすまん。
だけ…」
言いかける俺の頭を引き寄せながら明日香は俺の頭を自己主張の激しい双子のお山に押しつける。
「む、ムグ!」
唐突な事に思わず硬直してしまう。
「…好き…。」
そんな寝言を呟いた次の瞬間、
「何をしとるか!!」
準の叫びが木霊した。
○ ○ ○
原作通り鍵が盗まれ、皆が準の部屋に集まった時準が高らかに宣言した。
「犯人は必ずオレが暴いてみせる!
万丈目サンダーの名にかけて!」
「準よ。そこは、じっちゃんになりかけないと。」
「イヤイヤ、じっちゃんの名にかけておかないと。」
「…何の話よ?」
俺の指摘に翼が訂正して、呆れた表情の雪乃がツッコミを入れた。その雪乃の耳元で答える。
「準の声を当ててる人って、金田一一の声を当てていたんだ。
俺にとって印象的なのは、忍者なのにアメリカンチックな喋り方する常に顔を見せない人だな。」
「皆が集まる前に犯行現場を一回りして犯人の痕跡を探してきた。」
そんな俺達を総スルーした準の言葉に明日香は何かを思い出したらしい。
「そういえば、私の部屋につけ爪が落ちていたわ。」
明日香の言葉に顔を青ざめる保険医のミーネ。
「天上院君! 部屋はコマメに掃除する! つけ爪ならオレが捨てといた!」
「万丈目君。女の子の部屋の物を勝手に捨てるのはマズいよ?」
「そうだな。とりあえず、そのつけ爪なら回収した。」
俺の言葉にミーネが肩を落とす。
「そういえば、金庫の前に靴跡があったな。」
カイザーの言葉に慌てる罠はずしのクリフ。
「校内は土足厳禁! 神聖な校舎をなんだと思ってるんですか! 靴跡ならオレが拭きました!」
「そ、そうだな。すまん。」
妙なところで神経質だな。
「で、その靴跡の写真がこれ。比較しやすいように、俺の靴も一緒に写してある。
この靴跡の主は27センチの俺より大柄な人間だとわかる。」
と言いながら写真を置くとクリフはガックリと肩を落とす。
「オレ達の部屋に穴が空いてたぜ。」
十代の言葉にチックが慌てて穴あけドリルを隠す。
「借りた部屋に傷つけるな! 敷金が戻って来ないぞ! 穴ならオレが塞いだ!」
「そ、そうか。サンキューな。万丈目。」
「サンダー。」
「で、コレが十代の部屋の写真。」
と言いながら十代の部屋の写真を置く。
「しかし、それでは犯人の手がかりが無いわけだね?」
ザルーグの言葉に準は首を振り、
「犯人はお前とお前とお前とお前だ!」
準はそう言いながら黒蠍盗掘団、棘のミーネ、罠はずしのクリフ、逃げ足のチック、強力のゴーグを指差した。
「準の補足だが、まず、つけ爪はミーネの物だろう。デュエルアカデミア内ではデュエリストがつけ爪をしないことが暗黙の了解になってるんだ。ドローの邪魔だし。
次に足跡はクリフの物だろう。靴跡のパターンは警備員に支給される物と一致した。迂闊にも金庫の10キーを素手で触ったためクリフの指紋がバッチリ採取出来た。
次に十代の部屋に空いてた穴はチックの部屋につながってた。あの穴をあけるには長時間チックの部屋にいなければならず、部屋の主のチックが見てないのはおかしい。
脅されて何も言えないにしては、怯えているようには見えない。」
反論を許さず言い切ると、何故か準はガックリと肩を落とした。
「ここまでバレてるなら仕方ない。」
「マグレさん。まさかあなたが…。」
明日香の呟きにザルーグはコクリと頷いた。
『そう! 我々黒蠍盗掘団!!』
本性を表した黒蠍達は一斉にポーズを決める。
「皆下がっていろ。ここは万丈目サンダーの出番だ。」
準はそう言いながらデュエルディスクを構える。
○ ○ ○
『
『対戦相手のターンです。』
「私のターン! 首領ザルーグを攻撃表示で召喚!
せっかくなので私が出よう。」
そう言いながら自ら前に出るザルーグ。
「さらにカードを2枚セットしてターンエンド!」
準ライフ4000 手札5枚
伏せカード0枚
伏せモンスター0枚
首領ザルーグATK1400
伏せモンスター0枚
伏せカード2枚
ザルーグ手札3枚ライフ4000
「オレのターン! ドロー!
オレはおじゃま・ブルーを守備表示で召喚!
カードを2枚伏せてターンエンド!」
準ライフ4000 手札3枚
伏せカード2枚
伏せモンスター0枚 おじゃま・ブルーDEF1000
首領ザルーグATK1400
伏せモンスター0枚
伏せカード2枚
ザルーグ手札3枚ライフ4000
「私のターン! ドロー! 私は無謀な欲張りを発動! カードを2枚ドロー! 手札から黒蠍団招集をは…
「リバースカードオープン! おじゃまトリオ! 貴様のフィールドに3体のおじゃまトリオトークンを特殊召喚!」
な、何!」
準の宣言と共に翻ったカードから3体のトークンがザルーグのフィールドに現れる。
「罠はずしのクリフを特殊召喚! バトルだ!
まず、私から攻撃!」
ザルーグの銃撃に耐えきれずおじゃま・ブルーは倒れる。
「さらに罠はずしのクリフでダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン! リビングデッドの呼び声!
墓地にあるおじゃま・ブルーを攻撃表示で召喚! さらに戦闘で破壊されたおじゃま・ブルーの効果によりおじゃま・レッドとおじゃマッスルを手札に加える!」
準の宣言により、おじゃま・ブルーがフィールドに現れる。
「だが、そのモンスターの攻撃力は0! 構うことはない!」
ザルーグの言葉にクリフがおじゃま・ブルーに切りかかる。(万丈目ライフ4000-1200=2800)
「私が戦闘ダメージを与えた事によりデッキから2枚のカードを墓地に送ってもらう!」
クリフはそう言いながらナイフを投げつけ、準のデッキを2枚墓地に送る。
「運がなかったな! 墓地に送ったカードはおジャマジック!
効果によりおじゃま・イエロー、おじゃま・ブラック、おじゃま・グリーンを2枚ずつ手札に加える!
さらにおじゃま・ブルーの効果によりおじゃまデルタハリケーンとおじゃま・カントリーを手札に加える!」
「私はこれでターンエンド!」準ライフ2800 手札13枚
伏せカード0枚
伏せモンスター0枚 0
首領ザルーグATK1400 罠はずしのクリフATK1200 おじゃまトリオトークンDEF1000
伏せモンスター0枚
伏せカード1枚
ザルーグ手札3枚ライフ4000
「オレのターン! ドロー! 手札から融合発動!
おじゃま・イエロー、おじゃま・グリーン、おじゃま・ブラックをおじゃま究極合体!」
『おいでませ!!』
準の言葉に合いの手を入れるおじゃま達。
「融合召喚! おじゃま・キング! さらにおじゃま・カントリーを発動! おじゃまがいる限り攻撃力、守備力は入れ替わる!
そして、おジャマッスルを発動! フィールドにいるおじゃま・キング以外のおじゃまと名の付くカードを全て破壊して破壊したカード1枚につき攻撃力を1000ポイントアップする!」
おじゃま・キングが次々におじゃま達を喰い、肉体を膨張させる。
(おじゃま・キングATK0→3000+3000=6000)
(ザルーグライフ4000-300×3=3100)
「おじゃま・レッドを攻撃表示で召喚! 効果によりおじゃま・イエロー、おじゃま・ブラック、おじゃま・グリーンを特殊召喚!
そして、手札からおじゃまデルタハリケーンを発動!
貴様のフィールドのカードを全て破壊!」
『行くぞ!』
『オイラ達の力だ!』
『必殺!』
『おじゃまデルタハリケーン!』
おじゃま達の突風がフィールドを荒れ狂いザルーグとクリフと伏せカードをフィールドの外に弾き飛ばした。
「コレで終わりだおじゃま達のダイレクトアタック!」
準の宣言によりおじゃま達はザルーグに襲いかかった。(ザルーグライフ3100-1000-1000-1000-6000=-6900)
○ ○ ○
「さて、帰るか。」
マナと翼を連れて帰ろうとする直前、
「待て。
「じゃあ聞くが、お前はあの後、どんな推理を語るつもりだった?」
「鍵と一緒に3枚のおじゃま達を。そして、俺の部屋には大勢の目撃者がいた事を語るつもりだった。」
迷いなく答える準の言葉に眉間をもみほぐした。
「一部の存在しか見聞き出来ない存在の目撃証言なんて証言に使えないだろ?
それに、3人とも逃げきれないほど動揺してたからな。」
「万丈目の坊やは迷探偵みたいね。」
からかいを含んだ雪乃の声に準は拗ねてそっぽを向かれてしまった。