「大変だよ! はじめちゃん!」
自室でふと思いついた機能をデュエルディスク追加しようとカスタムしている所で翔が駆け込んできた。
「? どうした? 翔。」
「はじめちゃん!は、隼人君が!隼人君が退学させられちゃうかも知れないんだ!」
「? 何! 翔! 話を詳しく聞かせろ!」
そんなイベント合ったか?
「そ、それが、隼人君のお父さんが来て隼人君を退学にするんだって!」
………あぁ。そう言えばそんな一件があったな?
「で、翔。隼人は何て?」
「そ、それが、隼人君。荷造りを始めちゃって。」
「十代はこの事を?」
「ううん。まだ、知らないと思うよ。」
俺はカスタムに使った道具を片付けると立ち上がる。
「翔は十代にこの事を教えてきてくれ。その間に隼人と話をしてくる。」
「わかったッス!」
「あぁ。事情が変わった時のためPDAを携帯しておけ。」
慌てて駆け出す翔を見送ってから、隣の部屋に向かった。
「………。隼人。」
自室で、荷造りをしている隼人に声をかけた。
「一か?どうしたんだな?」
チラリとこちらを見ようともせずに荷造りをし続けた。
「隼人。デュエルアカデミアを辞めるのか?」
「………ああ。そうなんだな。」
「本気か? 未練とか無いのか?」
そう問うと、隼人はこちらを振り向いた。
「………辞めたくないんだな。十代や、翔、一のデュエルを見てきて、デュエリストとして、頑張りたいと思い始めた所なんだな。」
隼人の言葉に手をギュッと握った。
「なら話は早い。今すぐ、校長と隼人の親父さんに直談判するぞ。」
○ ○ ○
「失礼します!」
「お、お邪魔するんだな。」
隼人の手を引いて、校長室にはいると、優しそうなハゲ、校長先生とたくましそうなクマっぽい人がいた。
「隼人君と一君ですか。どうしたんですか?」
「校長。隼人君のお父さん。隼人の退学は諦めて貰えませんか?」
「フム。一君。友達思いなのは結構ですが、隼人君のご家庭に口を挟むべきではないのではないでしょうか?」
「隼人君がデュエルアカデミアを止めたかったのでしたら仕方ないですが、本人はアカデミアを続けたいんです。お願いします!」
「ほう?」
俺の言葉に隼人のお父さんは、鋭く、隼人を見た。
「隼人。おいどんとデュエルをするでごわす。隼人が勝ったら、この学園に残ってよいでごわす。しかし、おいどんが勝ったら、この学園を止めるでごわす。」
隼人のお父さんと話をつけた所で、十代達と合流した。
「一! 話はどうなった?」
「十代。隼人と隼人のお父さんがデュエルして、隼人が勝ったら、デュエルアカデミアにいて良いってさ。」
「よし! ならいますぐデッキ調整だ! 帰るぞ! 隼人! 一!」
十代はそう叫ぶと、一目散に走って行った。
○ ○ ○
「コアラばっかりだな?」
なぜか、俺の机を陣取り、隼人のカードを並べて見てもらした感想がそれだった。
「ウ~ン。決定打に欠けるんだよなぁ。」
つぶやきながら隼人のデッキを凝視すること数秒。翔が何かに気付いたかのように、自室に戻り数十秒後、デスカンガルーを持ってきた。
「隼人君。これをあげるよ。」
「え?いいんだな?」
「ウン。これがあると、オーストラリアデッキになるじゃない。」
「オシ! ちょっと待ってろ。」
十代も自室に戻って少しするとカードを持って戻ってきた。
「これを上げる。オレは使わないし。」
そういって渡したカードはマスターオブOGだ。………フム。なら、俺も何か出すべきかな?
「ちょっと、待ってろ。」
俺はそう言って、カードを収納している。箱からカードを漁り始めた。………えっと、あのカードはどこにいったかなっと?カードを漁ること数分で目当てのカードを数枚見つけたので隼人に渡した。それらのカードでデッキを調整、調整したデッキのテストデュエルをしているうちに夜も更けていく。
そして、翌日。俺達は畳にあぐらをかいて座り、互いを見合う二人を見ていた。
「僭越ながら、私大徳寺が審判をつけさせてもらうニャ。その前に、隼人君。負けたら実家に帰り、お父さんの家業をつぐ。それで、よろしいかニャ?」
「構わないんだな?」
「では熊蔵さん。息子さんが勝ったら、アカデミアに残る事を了承してもよろしいでしょうかニャ?」
「男に二言は無いでごわす。」
二人の返答に満足したかのように一つ頷いた。
「よろしい。互いに悔いの無いデュエルをして下さいニャ。」
○ ○ ○
「「
二人のデュエルディスクが起動した時、隼人のデュエルディスクから音声が流れた。
『ハジメ ノ ターン デス。』
「はじめちゃん。アレ何?」
「昨日ふと、思い付きで追加した機能だ。」
ランダムにどちらが先攻なのか決めるものだ。
「俺のターン! ドロー! モンスターをセット! カードをセットしてターンエンドなんだな!」
伏せ一枚にセットモンスター一体か。なかなか堅実な手だな。
隼人 ライフ4000 手札4枚
場 伏せ
モンスターセット
熊蔵 ライフ4000 手札5枚
「おいどんのターン! ドロー!大方、モンスターで攻撃したところをそのリバース効果でおいどんにダメージを与えるつもりだろうが詰めが甘いでごわす!酔いどれタイガーを攻撃表示で召喚! 酔いどれタイガーに攻撃したモンスターの効果を封じる効果を持っているでごわす!」
「でも、そのモンスターの攻撃力1800! 戦闘じゃ倒せないんだな!」
「更に一角獣のホーンを酔いどれタイガーに装備! 酔いどれタイガーでセットモンスターに攻撃! 酔いどれパンチ!」
酔っ払った虎が、セットモンスターに襲いかかる瞬間、
「その瞬間を待ってたんだな! リバースカードオープン! 禁じられた聖杯! この効果はモンスター一体の攻撃力を1ターンのみ400アップする!」
聖杯に汲まれた水を注がれたせいか目がシャッキリする虎。こうなりゃタダの虎である。
「ナイス! 隼人!」
「え、え? どういう事? はじめちゃん。」
「そうだぜ。デスコアラは酔いどれタイガーに倒されるだろ?」
「イヤ、禁じられた聖杯には攻撃力のアップ以外にモンスター効果を封じる効果を持っている。」
その言葉に二人は何かに気づいたように小さく声をあげた。
「それじゃ。」
「あぁ。デスコアラの効果は有効。熊蔵さんの手札は4枚。よって1600ポイントのダメージを受ける。」
その解説に合わせたように破壊されたデスコアラは瀕死ながらもダメージを熊蔵さんに与えた。
「ぐはぁぁっ! は。隼人! まさか、おいどんが、酔いどれタイガーで破壊する事を読んで?」
「そうなんだな! 父ちゃんが一歩先をいくなら俺はさらにその先をいくんだな!」
隼人のその言葉に熊蔵さんは笑みを浮かべる。
「隼人…。子供だと思ってたらいつの間にか、大きくなりおって。だが、手加減はせぬ! 全力でおいどんを踏み越えていけ! ターンエンド!」
隼人 ライフ4000 手札4枚
場 一角獣のホーン
モンスター 酔いどれタイガー
熊蔵 ライフ1600 手札4枚
「もちろんなんだな! 俺のターン! ドロー! レスキューキャットを召喚! レスキューキャットを生け贄にオトボケオボッサムとコアラッコを召喚!」
あ、こりゃ、勝ったな。
「さらにオトボケオボッサムの効果! 自身を破壊するんだな! 擬態死!」
擬態死って、まんまじゃん。しかもコロッと転がるだけだし。
「ああ! 何やってるッスか! 隼人君。自分のモンスターを破壊しちゃうなんて。」
「イヤ。これで良いのさ。」
狙いに気づいたのか十代は、翔の声を否定した。
「獣族モンスターが破壊される事で発動できライフコスト1000支払う事で特殊召喚出来るモンスターがいる。」
「その通りなんだな! 俺はグリーンバブーンを特殊召喚! 手札から融合発動! デスカンガルーとビッグコアラを融合! マスターオブOGを融合召喚!」
って、コアラッコとバブーンで勝てるぞ?
「コアラッコの効果で酔いどれタイガーの攻撃力を0にするんだな!」
「な、何!」
「グリーン・バブーン、マスターオブOGで攻撃!」
2体のモンスターの攻撃で熊蔵さんのライフは0になった。
「更に手札からマジックカード、融合解除!マスターオブOGを融合デッキに戻して、ビッグコアラとデスカンガルーを召喚!2体でダイレクトアタックするんだな!」
「も、もうライフは0でごわす! ぬおおっ!!!!!!!!」
○ ○ ○
「そこまで!勝者、前田隼人君!」
倒れ付した自身の父親を不安そうに見つめる隼人。
「父ちゃん。これが俺の答えなんだな。確かに、自分一人じゃここまで来れなかった。だけど、今は違うんだな。カードを分けてくれたり遅くまでテストデュエルをしてくれた見んなと一緒に成長したい。これが俺の答えなんだな!」
隼人がそう言うと、熊蔵さんは笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。
「隼人。ここまで出来るなら、何も言わぬ。己と言うものを貫き通して来い。」
「父ちゃん。」
「ただ………。最後のアレはやめて…欲し…かった…。」
そういった熊蔵さんは背後に倒れてしまった。