ぼっち。
「ねーねっ、お昼ご飯一緒に食べよっ!」
マツリが、俺をご飯に誘ってきた。
彼女は俺の幼なじみで、学校でも有名な美少女。
でも俺以外には極端に社交性がなくて、仲のいい人はいない。
だから彼女が俺を誘ってくるのは珍しい話じゃないし、俺は彼女とお昼を一緒に食べたいんだけど……。
「ごめん、申し訳ないけど……」
「えっ……。どうして……?」
食べたいんだけど、俺は彼女からの誘いを断らなくちゃならないんだ。
なぜならこの机は、昼休みが始まって俺が一歩でもここを動こうものならすぐに占領される!
なんで陽キャってやつは人の席を無断で占領するんだろう。
持ち主に一言あってもいいんじゃないだろうか。
それに、全く悪びれることもない。
「あー、そっかぁ。トモヤっていつもお昼休みになるといなくなっちゃうもんね」
「お、おう。察してくれ」
マツリとは小学生のときからの長い付き合い。
さすがに俺の現状を理解してくれているようだ。
そして彼女は自分の席へと帰っていったが……え?
なぜか彼女が自分の机からこっちに向けて手招きしている。
……来いってことか?
机が占領されることを覚悟で彼女の机まで移動する。
「えーっと、なんだ?」
「えへへ、名案を思いついちゃいましたっ」
なんだかすごく嬉しそうに笑う。
長い付き合いなのにドキッとしてしまったことは内緒だ。
……でも、名案って……なんのことだ?
「あのねっ、トモヤの席が使えないのなら私の席を使えばいいと思うの!」
「……あ」
彼女は、自分なりに俺とお昼を一緒に食べる方法を考えてくれたらしい。
でもそれだと……。
俺はその提案の欠点に気がついて指摘する。
「それだと、椅子が一つしかないじゃないか」
「…………あっ」
詰めが甘い。
この幼なじみ、昔からこういうところがあるのだ。
小学生のときに風景画の課題があったときも、賞の候補になってもおかしくない出来だったのに最後の最後で塗りに飽きて適当に塗り、評価は人並みだった。
そういうところは昔から変わっていないらしい。
「えーっと、えーっとぉ」
ただ、目の前の彼女を見ると、それでも頭を抱えてなにかを考え込んでいる。
成長して諦めなくなったのか、それとも俺とそんなにお昼ご飯を一緒に食べたいのか。
どちらにせよなんだか嬉しい。
やがて彼女はピンっ! と音が鳴った錯覚に陥るほどに勢いよく背筋を伸ばすと、今度こそとばかりに新しい案を口にした。
「椅子が使えないなら、二人で一つの椅子を使えばいいじゃないっ」