全裸の幼なじみを脱衣所に残し、俺は「途中から一緒に入浴する」と告げて風呂場を後にする。「何かわかんないことがあったら千夏に聞いてくれ」とも言い残しといたから安心だと思ったんだが……。
「……って、ちょっと待ってトモヤ!」
「……ん? まだなんかあったか?」
「……なんかあったか? じゃないわよっ! 手に持ってるのはなに! 出しなさい! ほら、はやく!」
「なにって……別に、お前の脱いだ服と……他には何もないぞ?」
「それよそれ! なんでしれっと私の脱いだ服全部もってっちゃうの!」
顔を真っ赤にして全裸で止めに来るマツリの動きを乳をつかんで止めると、俺は脱衣所の入り口に立ったままどうしたものかと上手い言い訳を考える。「洗っておくから」みたいな回答が一番怪しまれないだろう。長らく柔らかいものに癒されながら考えてたおかげで発想も柔軟になったらしく思いついたそんな言い訳をとりあえず口にしてみる。
「さっきマツリ、おもらししちゃったからさ……」
「洗っておくなんて言わないわよね? 洗濯機はここにあるもの」
出鼻をくじかれた。やはりここは幼なじみ、お互いのことは熟知している。小手先の浅はかな考えなんてお見通しだったようだ。さて、退路を断たれたわけだが……ここでどんな言い訳をするか、試されているような気がする。幼なじみの完璧な指摘にちょっとだけ震えたが、きっとこれは武者震いだと思うことにする。俺はこんな切迫した状況を、楽しんでるんだ。だから俺は咄嗟の判断でこの事態の収拾がつくような、納得出来る言い訳を……。
「えっと、さっきマツリがおもらししちゃったから……」
「……言っとくけど、なにを言ったところで嘘だってわかってるんだからね」
「……おもらししちゃったから、そのおしっこがいっぱいかかった服を保管しておきたいです」
……言い訳なんて無理でしたはい。
とりあえず、なんか正当な理由っぽく自分が出来る最大級の真顔で言ってみたが通じなかったようで。
「そんな真顔で言われても嫌に決まってるでしょっ!」
「ちぇ〜、じゃああとで途中からまた来るからな」
「うん……って、だから服を持っていくなぁっ!」
しれっと流れで持っていけるかと思ったが、やっぱり無理だった。どうにかして部屋に保管できないだろうか、普段あまり使わない頭をフルに回転させて考える。
「……あんたなに頭振ってるの……? 頭おかしくなっちゃったの……?」
「……頭をフル回転させてるんだ」
無言でポカポカと殴ってくるマツリ。
昔からたまにやってくるのだが、このときの動きがなんともいえずかわいらしい。
全裸でやられると余計に迫力がなくて、よりかわいさが際立つ。
と、微笑んでいると、マツリは馬鹿にされたと勘違いしたのか頭に血を昇らせて言い放つ。
「わかったわよ! もういいわ、今すぐ一緒にお風呂に入りなさいっ」
「……え」
マツリが、はやく俺と一緒にお風呂に入りたいと言ってきた。俺が、じゃなくて、あのマツリが……。
「お前、まさか俺のこと……」
「ち、違うわよっ! 私たちがお風呂入ってる隙にトモヤがなにかするかもしれないから、目の届く範囲にいてもらうだけなんだからっ」
「わかったわかった。……否定するほど真実味が増すって覚えといたほうがいいぞ」
「なっ……!」
マツリが真っ赤になる「ボンッ」という爆発音を聞くと、俺は来ていたシャツを勢いよく取り去った!